60歳からの病院や医者との正しい付き合い方。「医者から処方された薬だから」と信じるのは体調悪化の危険にも。突然死を避けたいなら「心臓ドック」が必要
60代以降になれば少しずつ体には何かしらの異変が出てきて、健康診断で異常値が出ることも増えてくる。それらをいちいち気にしてビクビク生活を送っていては、ストレスだけが膨らんで体調を悪くしてしまう可能性があるというが…60代以降の正しい健康チェックのメソッドというのは存在するのだろうか。『60歳からはやりたい放題[実践編] 』(扶桑社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『60歳からはやりたい放題[実践編]』#2
年を取ってからは、多少血圧が高いほうが健康?
健康診断の正常値にこだわり過ぎ、逆効果になる代表例と言えば「血圧」でしょう。
血圧は、140/90mmHgが一般的な上限値とされています。世の中では高血圧は良くないとされているので、仮に141mmHgという基準値から少しだけ高い血圧が測定された場合、多くの人は少しでも数値を下げようと一生懸命になります。
でも、血圧が高いと本当に健康や寿命に害を及ぼすのかというと、現代の医学では未知の部分も多いのです。むしろ、年を取ってからは、多少血圧が高いほうが健康であるとも私は思っています。
まず、年を取ると若い頃よりも血管内部が細くなるので、血流が悪くなります。その細い道になんとか血液を通すには、血圧が高いほうが都合が良く、全身の血流が良くなります。
私自身、薬を飲まないと200mmHgを超える高血圧の持ち主ですが、正常値に近い140mmHgまで血圧を下げると頭がうまく回らず、調子が悪いのです。
そこで、正常値よりもやや高めの血圧160〜170mmHgを維持するように服薬していますが、毎日、朝から晩まで仕事ができるほどに元気です。
もし血圧を下げる薬を飲まれている方の中で「この薬を飲むと頭がぼんやりする」「この薬を飲むと調子が悪い」などという徴候があるならば、自己判断でその薬は飲まないと決めてもいいのではないでしょうか。

医者の判断よりも、自身の経験則のほうが勝っている場合もある
多くの人が異常値を正常値に戻すべく薬に頼ろうとするのは、「人間は健康でなければならない」という考えに固執してしまうという背景があるのでしょう。
でも、健康でなければいけないというストレスにさいなまれ、食べたいものを食べず、やりたいことに挑戦できないほうが、意欲も衰えるし、活動も減り、身体機能も衰えてしまいます。そもそも健康というのは、基準値が正常ということではありません。
高齢になったら、自分自身の不自由と一緒に生きていくのは当然のこと。
もし、いまのあなたの体がどこにも不調がないのなら、健康診断の数値に過敏になる必要はないのです。
繰り返しになりますが、体には個人差があります。
60代まで自分の体と上手に付き合って生きてきた人ならば、どうしたら調子が良くなるかは、医者よりよく分かっていると言ってもいいくらいです。医者の判断よりも、ご自身の経験則のほうが勝っている場合もあるのです。
「いまからケアしておかないと将来が心配だ」という方もいるかもしれません。ですが、医学は目覚ましいスピードで進化しています。
10年、20年後には、医学がいまよりもっと進歩していて、iPS細胞を用いて動脈硬化が治ったり、腎臓などの内臓が代替可能になる可能性も十分にあります。
そう考えると、将来を気にし過ぎていまをストレスフルに過ごすよりは、未来の医学に期待して、食べたいものを食べ、やりたいことをする人生を選ぶことも、一つの選択ではないでしょうか。
「心臓ドック」で突然死を避ける
ただ、ここまで健康診断を否定してきた私も、「心臓ドック」だけは定期的に検査へ行っても良いのではないかと思っています。
その理由は、「突然死」が怖いからです(残念ながら寿命が延びるエビデンスはないそうです)。
「ピンピンコロリ」と言われる突然死は、本人が痛みを感じづらいために理想的な死に方だという人もいますが、私にとって、突然死は絶対に避けたい死に方の一つです。
突然死が嫌なのは、死ぬ前に身の回りを整理できないからこそ。私は人に任せるのが苦手な性分なので、どうせ死ぬなら、自分がいま任されている仕事の算段をつけてから死にたい。
また、「死ぬ」と分かっているのなら、秘蔵のワインを飲んだり、食べたいものを思い切り食べたり、会いたい人に会っておいたりと、やれることはやっておきたい。だから、死に至るまでの準備期間がない突然死は、できるだけ防ぎたいのです。

写真はイメージです
突然死の死因として代表的なものは、心臓をとりまく血管が詰まる「心筋梗塞」です。つまり、心臓の血管に支障をきたすと、突然死の可能性が高まってしまうということ。
医学が進み、がんをはじめとするさまざまな病気の治療法が生まれていますが、突然、血管が詰まって死に至るレベルのものであれば、当然ながら治療する暇もありません。
逆に言えば、心臓の血管の状態をきちんとチェックさえしていれば、いきなり病気で死ぬ事態をかなり避けることができるのです。
その上で防止策となるのが、心臓ドックです。
まず、心臓ドックはCTを使って、心臓の周囲にある冠動脈が詰まりそうな箇所がないかを確認できるので、もしも冠動脈の血管に狭窄が見つかれば、血管を広げることは、手術は受けられなくてもカテーテル治療でできます。
また、脳ドックでは、MRIを使っていろんな角度から脳の画像を見ることで、脳動脈瘤を見つけることができます。
脳動脈瘤は、くも膜下出血を起こし、突然死に至るリスク要因ですが、脳ドックの段階で脳動脈瘤を見つけられれば、カテーテルを使って血管が破れないように対策することがある程度できます。ただし、これはうまい病院を探さないとリスクが大きいのも確かです。
「突然死したくない」と言う人は、数年に一度は心臓ドックへ足を運んでほしいと思います。
良い医者かどうかは薬の相談で判断
60代になったら、意識していただきたいのが「病院や医者との付き合い方」です。
病院探しや医者探しの参考にと、近年、メディアが発信する「良い病院ランキング」や「良い医者ランキング」が注目されています。
これらの情報を頼りに探してみるのも良いのですが、人気の医者は順番待ちになるし、現実的に通えるエリアなのかを検証する必要もあります。中には、医療業界で力の強い病院や医者に高評価が入る傾向があるため、メディアの情報をうのみにするのも考えものです。
では、どうしたら自分に親身になってくれる、良い医者を見つけることができるのか。
最も簡単な見分け方としては、「その医者が薬の相談に対して丁寧に対応してくれるかどうか」だと私は思います。

薬の相談を聞き入れない医者は、駄目な医者
60代になると、肝臓や腎臓の機能が衰えるため、薬の代謝に時間がかかるようになり、若者世代と同じ量の薬を処方されると、薬の成分が体に残りやすくなってしまいます。ゆえに、薬を飲んで不調を感じる機会も多くなってきます。
それに対して、「医者から処方された薬だから」と素直に全部飲み続けると、知らず知らずのうちに体が薬漬けになって、体調をさらに悪化させる危険性もあります。そんな恐ろしい事態を招かないためにも、大切なのは、薬を飲んで不調を感じたら、まずは医師に相談することです。
「この薬を飲むと頭がぼーっとしてしまう」
「薬を飲んだ後は、体調が何となく悪いような気がする」
など、気になったことは速やかに伝えましょう。
そのとき、駄目な医者は「数値は正常だから大丈夫です」「どうしても副作用は起こるものなので飲み続けてください」などと取り合いません。一方で、きちんと患者と向き合う良い医者であれば、「別の薬を試してみましょう」「もう少し量を減らしてみましょうか」などと、別の方法を検討してくれます。
私のこのような医療に対する考え方への批判が、医者向けのサイトに載ったことがあります。それに対する反応を見ると、97%の医者はその批判に賛成していたので、そういう医者を探すのは至難のことかもしれませんが、みなさまには、ぜひ後者の「何でも相談できる良い医者」に出会ってほしいと思います。
文/和田秀樹 写真/shutterstock
『60歳からはやりたい放題[実践編] 』(扶桑社新書)
和田 秀樹 (著)

2023/9/1
¥968
208ページ
978-4594095567
ベストセラー『60歳からはやりたい放題』の進化版!
前向きで毎日が楽しくなる60の具体策
これさえやれば大満足人生!
・肉を食え!
・健康診断を受けるな!
・遺産を遺すな!
・若作りをしよう!
60歳以降の不安が解消!
残りの人生を幸せに生きるには?
【目次】
第1章 我慢しない食事こそ、健康の源
第2章 医者や健康診断に騙されるな
第3章 若作りで老化を食い止めよう
第4章 好きな趣味に没頭して前頭葉を刺激すべき
第5章 やりたい仕事を気楽に楽しむ
第6章 お金を使いまくって幸せに
第7章 他人を気にせず自分の人生を生きる!
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