「リタイアしたらランチは外食をすべき」「コレステロールは高くていい」東大卒の医師がたどり着いた健康長寿の真実…“食べたい物を好きなだけ食べればいい”
高齢者になると体にいいと信じて“粗食”を実践している人も多いようだが、実はそれによる栄養が不足している人もかなりいるという。高齢医療の専門家・和田秀樹さんが語る、本当に健康で楽しく生きるコツとは。『幸齢者』(プレジデント社)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『幸齢者』#1
リタイアしたらランチは積極的に外食を
いまの高齢者が現役時代、ほとんどの人はランチを職場周辺の店でとっていたことでしょう。とくに男性はそうだと思います。
事務職でも営業職でも、昼休みが近づくと「今日は何を食べようか」と考えます。40年かそれ以上の年月、たいていの人は「お昼に何を食べるか」という問題に毎日、向き合ってきたのです。
ところが仕事をリタイアすると、ランチは自宅で食べるようになります。「外食は出かけなくちゃいけないからおっくうだ」「仕事をしていないのにランチにお金をかけたくない」「お昼はありあわせのもので十分」といったさまざまな理由からですが、私はむしろ、リタイアしたらランチは積極的に外食をしたほうがいいと思っています。
なぜなら、外に出る習慣が身につくからです。

ランチを外食にするだけで、日常生活の行動半径はずいぶん広がる
「さあ、今日は何を食べるかな」と考えながらとにかく家を出れば、歩いているうちにいろいろな店が目につきます。
「この店のラーメンもしばらく食べていないな」「ここの豚カツは意外とおいしいんだよ」「たまにはパスタもいいな」などと考えながら商店街を歩くのは楽しいものです。運動としてもちょうどいいし、歩けばお腹も空きますから、ランチもよりおいしくいただけます。
また日中、街中を歩いてみると、じつにいろいろな発見があります。夜はネオン街になるような一画も、昼に歩いてみるとけっこう面白いものです。怪しげな酒場が並んでいる通りの中に、「こんな店があったのか」と驚くことがよくあります。
ランチを外食にするだけで、日常生活の行動半径はずいぶん広がります。
街歩きのついでに書店で読みたい雑誌を買ったり、おいしいコーヒー店を探してみたりするのもいいでしょう。
ささやかな自由まで手放してはいけない
いずれにしても生活の風通しがよくなります。その日の気分で食べたいものを食べるという、ささやかな自由まで手放してはいけないような気がします。
また、習慣的に外で食べるようになると、食べたい料理の幅が広がるというメリットもあります。
老夫婦の会話として、晩ごはんの献立に困った妻が「何か食べたいものはある?」と夫に聞いても、「うーん、とくにない」「何でもいいよ」といった答えしか返ってこないことがよくあります。これは、夫が遠慮して意見を伝えないわけではなく、実際に食べたいものが何も思い浮かばないのです。
いつも妻の作る料理や冷蔵庫の中のありあわせのものだけ食べていると、食べることが完全に受け身になってしまいます。あるもの、出されたものを食べるだけになってしまうと、「何か食べたいものは?」と急に聞かれても返事ができないのです。

ランチを外食にすることで脳が活性化される
食べることは80代になっても、90代になっても、100歳を越えても、生きている限り続く楽しみではないでしょうか。
「あれが食べたいな」「これが食べたいな」と料理を思い浮かべてお腹がグーッと空いてくるというのは元気な証拠です。
ランチ外食で、とくにメニューを決めていなくても、街を歩いていろいろな店の看板を見ているうちに「ハヤシライスはずいぶん長いこと食ってないな」と急に気がつくことがあります。「そうだ、餃子が好きだったんだ!」と突然思い出したりもします。
つまり、ランチ外食をすることで「食べたい」という気持ちが刺激されます。当然、脳も活性化します。しばらく食べていなかった料理や根っから好きだった料理を思い出し、食生活が豊かになってくるのです。
食べたい料理がいくつも頭に浮かんでくるというのは、それだけでも幸せなこと。気分も明るくなってきます。
ランチを外で食べると決めるだけで、解き放たれるものがたくさんあるのです。そのためにお金を使うことは、決して無駄ではないと思います。
グルメは一人でも楽しめる
テレビやネット配信で人気のドラマ「孤独のグルメ」は、主人公の中年男性が仕事で訪れた街のあちこちの店でランチを食べるだけのお話です。
とくに珍しい料理や高級な料理が登場するわけではありません。松重豊さん演じる自営業の井之頭五郎が、仕事で行った先で腹を減らしてお店を探し、入ったところでメニューを見て料理を注文、それを黙々と食べる……というストーリー展開です。
五郎は実に満足そうで幸せそうです。食欲も旺盛で、とてもおいしそうに毎回、完食します。
こういう番組を見てつくづく思うのは、たとえ一人になっても「食べる楽しみ」は残るのだな、ということです。

一人でおいしく食事をする楽しみ方を身につけて
若いころは、一人でレストランに入るのは気が引けます。どんな店であっても、入りたい店や食べたい料理が見つかると、「今度、誰かと一緒に」とつい考えてしまいます。ところが高齢になってくると、「おいしそうだな」「そういえばお腹が空いたな」と思っただけで、通りすがりの店にふらりと入れるようになります。
誰かと一緒でも、仲の良いグループのメンバーと一緒でも、食べるのは自分です。味に満足し、「おいしい」と嬉しくなるのも自分です。それなら一人で食べても同じでしょう。
このようなことを記すのも、どんなに仲の良い夫婦でもいつかは一人になるからです。いつか来るそのときに備え、一人でおいしく食事をする楽しみ方を身につけておきたいものです。
長い高齢期を孤独感に捕まることなく
いまは夫婦で、あるいは友人と一緒に、ランチ外食を楽しむ。ランチを外で食べる習慣がつき、それが楽しみになってくると、そこから先、どんなに高齢になっても、あるいは一人になってしまっても、ランチ外出が一日の中の「楽しみな時間」として残り続けることになると思います。
将来、一人になったときのことを想像してみてください。料理好きの人なら、御馳走を作っても、「張り合いがない」と感じるかもしれません。そうなれば簡単なもの、ありあわせの材料で作るだけの料理になってしまいます。まして日ごろから料理をしない人なら、なおさらそうでしょう。
でも、ランチを外で食べる習慣が残っている限り、一人ごはんの楽しみも残り続けます。タンパク質やビタミンなどの栄養不足になる心配も薄れます。
ランチを外で食べる、一人で食べるということが楽しみになれば、長い高齢期を孤独感に捕まることなく乗り切れるような気がします。

おいしいものを食べて免疫力アップ
しかし、高齢者に「外食をしましょう」「好きなものを楽しんで食べましょう」と私がすすめると、「食事制限をしているからできません」と言われるケースがとても多いのです。というのは、コレステロールや血圧、尿酸値などを気にして、食べたいものを食べずにがまんしている人が多くいるからです。
もちろん、重い病気を患っていてどうしても制限しなければならない場合は、がまんも必要でしょう。しかし、「ちょっとコレステロール値が高いから」などという理由であれば、そこはマインドリセットすべきです。
70代になったら、食べたいものをがまんする必要などありません。
暴飲暴食は体によくありませんが、適切な量の飲食であれば、好きなものをがまんせずに食べたり飲んだりしても問題ありません。

食べたいものを食べなさい
高齢者になれば食欲も落ちてきます。また、体にいいと信じて〝粗食〟を実践している人も多いようです。そのため実際には、栄養が不足している人がかなりいるのです。これがどれだけ体に悪いことか。好物をがまんするよりも、食べたいものを食べて栄養を摂ったほうがはるかにいいでしょう。
また70歳の人にとっては、たとえ100歳まで生きたとしても余生はあと30年です。限られた時間をどう生きるか──ということも考える必要があるのではないでしょうか。
そのとき、二つの選択肢があります。一つは血圧やコレステロール値などをいつも気にして、がまんしながら長生きする。もう一つは、たとえ寿命が数年短くなったとしても、食べたいものを食べる喜びを感じながら生活する。どちらの生き方が幸せなのか、考えてみてもいいと思います。
『幸齢者 幸せな老後のためのマインドリセット』(プレジデント社)
和田秀樹

2023/6/15
1,210円
208ページ
978-4833440523
2022年オリコン年間本ランキング・作家部門第2位、和田秀樹さん最新刊!
高齢者が共通して「後悔」していることが6つある。
「がまん」をやめれば、「つらい高齢者」は「しあわせな幸齢者」になれる。
高齢医療の専門家が優しく教える、今日からもっとラクに生きるためのコツのコツ。
70歳を超えて楽しく、充実した暮らしを送っている人は、高齢者ではなく“幸”齢者。呼び方を変えれば「超高齢社会・ニッポン」はもっと明るくなる、みんなが笑顔に、心豊かになれる──。
長年医療の現場で高齢者たちを見てきた和田さんは言います。
「いま本当に必要なものは、60歳以降の“マインドリセット”です。つまり、考え方のスイッチです。これをやらなければ、どんなにいい方法を提案しても、現実は何も変わらないということを確信しました」。
そこで本書ではまず、後半生を豊かに楽しく生きることを阻害する数々の「壁」の正体を具体的に明らかにしていきます。そのうえで、固定観念を乗り越えるための「マインドリセット」の方法を優しく語ります。
「日本を、苦労を重ねて人生をまっとうしてきたすべての高齢者が“幸せ”を意味する“幸”齢者と呼ばれる国にしたい」と心から願う老年医療専門家・和田秀樹さんが、高齢者ご本人、また老親のいる現役世代へ贈る、「本当に伝えたかった」メッセージ。
【目次】
序 章 「幸齢者」へのマインドリセットのすすめ
第1章 「お金」へのマインドリセット
第2章 「子ども」へのマインドリセット
第3章 「夫婦」へのマインドリセット
第4章 「医療」「健康」へのマインドリセット
第5章 「生き方」「生活」へのマインドリセット
終 章 マインドリセットカ条
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