看取った患者さんは忘れられない。気持ちを整理するため漫画を描きました【私のウェルネスを探して 看護師兼漫画家・明さん 後編】_1
すべての画像を見る

引き続き、漫画家で看護師の明さんのインタビューをお届けします。

看護師として病気と共に生きる人たち、最期を迎える人を身近で見てきた明さん。漫画を描き始めた当初から、「看護で感じたことを漫画で伝えていきたい」と考えていました。しかし、明さんが小さい頃憧れていたのは“宇宙に住むこと”だったそう。後半では、明さんがどんな幼少期を過ごし、宇宙を目指すことになったのか。そこから看護師へと路線変更し、漫画を描くようになったきっかけを聞きます。

今回の撮影は、東京タワー近辺で行いました。明さんが初めて勤務した病院の窓からよく見えたのが東京タワーだったそうで、当時を思い出しながら明さんが語ってくれました。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む

誘われて入った生徒会が漫画好きの巣窟だった

明さんは沖縄県出身、5人きょうだいの長女として生まれました。運動が大好きで好奇心旺盛、何事も積極的な性格で、小学生の頃はバスケットボール部に所属していました。

「常に体を動かしていないとストレスが溜まるタイプでした。チームプレイが好きでバスケ部に人が足りないと聞くと“はい、やります!”みたいな感じで。性格は結構やんちゃなタイプで、長女だった私が次女に逆に叱られたりすることもありました(笑)」

看取った患者さんは忘れられない。気持ちを整理するため漫画を描きました【私のウェルネスを探して 看護師兼漫画家・明さん 後編】_2
明さんがリラックスのために持ち歩いているガムや

中学では、先生から誘われて生徒会に参加。実は生徒会がアニメや漫画好きのオタク好きが集まる場所で、明さんも漫画にハマるようになります。生徒会には同人誌を出す先輩もいて、締め切り前は明さんもアシスタントのように手伝いをしたそうです。

「私自身が描いたりはしませんでしたが、みんなが作るもの手伝ったり読んだり。当時、ミニ四駆の漫画『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』が流行っていて大好きでした。その中に出てくるキャラクターで宇宙飛行士のチームがいたことをきっかけに“宇宙があるんだ”と知って興味を持つようになり“宇宙に住みたい”と考えるようになりました。宇宙に住むとしたら看護師か医師ならが必ず需要があるだろうと考え、将来は医療系に進もうと思いました」

看取った患者さんは忘れられない。気持ちを整理するため漫画を描きました【私のウェルネスを探して 看護師兼漫画家・明さん 後編】_3

絵も描き続けつつ、東京で看護師になる

絵を描くのも好きだったので、芸術系の学校への進学も考えました。しかし勉強が得意だったため、親からは「勉強ができるんだからきちんと学べる学校にしたら」と勧められ、他の高校へ。高校でできた友人が科学好きだったこともあり、科学部に顔を出し、スライムを作ったり、ペットボトルロケットを校庭に発射させたりと、理系生活を満喫。並行して、絵を描く活動もひっそりと続けていました。

「理科室のテーブルの黒い天板に鉛筆で落書きをしていました。そこに『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』のキャラクターを書いていたら、“いいですね”と返信をくれる人がいて。ある時、ミハエル(『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』のドイツチームのキャラクター)を描いていて、カリスマ的に人気のあるキャラだったので“カリスマって何?”と質問したら返事が来ていて(笑)。後にその子とは友達になりました」

看取った患者さんは忘れられない。気持ちを整理するため漫画を描きました【私のウェルネスを探して 看護師兼漫画家・明さん 後編】_4

高校卒業後は、地元の大学の医学部に進学。保健学科を選択し、職業研修をするうちに看護師に興味を持ち、看護師になることを決めます。大学卒業後は、東京の病院へ。東京に祖父母がいたことや循環器の専門病院に行きたかったこと、このタイミングを逃すと一生県外に出ることはないと思い、東京行きを決めました。

いい意味でも悪い意味でも、看取った患者さんは忘れられない

明さんが勤務した循環器系の病棟では、治らない病気を患っている方が多く、長期にわたる治療や闘病をし、病気と共に生活をしている人が多かったと言います。そこで経験したことが、昨年出版した『いのちの教室~あなたの最期が私に教えてくれたこと』(集英社)で綴られています。看取りをテーマに漫画を描こうと思ったきっかけは、そこでの経験や大好きだった祖母を亡くしたことが大きかったと振り返ります。

「病院で看護をしていると、いろいろな患者さんがいて、それぞれの思いがある。いい意味でも悪い意味でも、看取った患者さんは忘れられないんです。祖母はもちろん、患者さん一人ひとり一人の顔が思い浮かびます。私には誰かを看取った後、整理する時間が必要でした。漫画を描き始めたのもそんな時でした。ふと描いてみた時に、気持ちがすっきりしたんです。気持ちの整理にいろいろな方法がありますが、私にとっては漫画でした」

看取った患者さんは忘れられない。気持ちを整理するため漫画を描きました【私のウェルネスを探して 看護師兼漫画家・明さん 後編】_5

看護師と病院で最期を迎える患者さん。そこには目に見えない絆や家族のような愛情があることにも気づかされます。

「病院で最初に看取った方は、私が働き始める30年以上前に心臓の手術をして以来ずっと病院に通っている人でした。勤めている看護師、医師とも長い付き合いで、家族にも似たような感情があって。彼女がもう少しで亡くなりそうな時、夜勤明けの看護師さんがみんな残っているんですよね。最期を一緒に残って看取っているんです」