「10年ほど前にロゼワインがブームになり、世界的に消費量は右肩上がりです。フランスでは白ワインを抜いて、赤ワインの次に飲まれているほどです。赤ワインと白ワインのいいとこ取りのロゼは、肉と魚のどちらでもいける。守備範囲が広いので、各自つまみを持ち寄っての花見やピクニックにはもってこいですね。多くの人に良さを知ってもらいたいです」
ソムリエの小山田貴子さんはロゼワインの魅力をこう語る。
そもそもの話だが、ロゼはなぜこのような色になるのだろう。その製法はいくつかある。小山田さんによれば、赤ワインを造る過程で、ピンクに色づいた果汁の一部を取り出して発酵させるセニエと呼ばれる方法。赤ワイン発酵時のマセラシオン(醸し)期間を短くしてブドウの色の抽出を抑える方法。さらに、シャンパーニュ地方以外のヨーロッパでは禁止されているが日本では可能な、赤と白をブレンドする方法があるという。

春来たる。ロゼワインで乾杯! 人気ソムリエが厳選する3000円以下とは思えない美味の5本
春がやってきた。暖かくなってきて、お花見やピクニックなどの「外飲み」が楽しいシーズンだ。そんな季節にぴったりなお酒といえば、桜色に透き通るロゼワインだろう。そこで、「ワインの中でも特にロゼ推し」の日本ソムリエ協会認定ソムリエ、小山田貴子さんにおすすめのロゼを聞いてみよう。3000円以下とは思えないリーズナブルな国内外のおいしい5本を、豆知識と共にご紹介。

ソムリエおすすめのロゼ5本。インターネットやスーパーなどで手に入りやすい商品を選んでもらった
世界ではロゼブームが続いている
【1本目】赤と白のブレンドで造られた国産スパークリング
小山田さんが最初におすすめするのは、ブレンドで造られた国産の「今様2019 Brut Nature」(マンズワイン)。俳優で「日本のワインを愛する会」会長の辰巳琢郎氏がプロデュースするロゼスパークリングワインだ。
「2011年の東日本大震災後に継続して販売されています。復興の願いを込めて岩手県産のヤマブドウと日本固有品種の山梨県産甲州種がブレンドされています。2019年モノは、キリっと辛口なブリュットナチュール。泡なので飲みやすく、若い世代の花見ワイン入門に最適です。色合いが濃く、鮮やかな真紅はインスタ映えも間違いなし。フレッシュなブドウを噛んだような香りにクローブ、生姜のようなスパイシーなニュアンスも。シャープな酸と、かすかにタンニンも感じられます。おつまみには、ゴボウなどの根菜系、セリやみょうがなど和のハーブ、フキノトウなど苦味のある山菜が合います。ミツバや菜の花のおひたし、筍の炊き合わせなどもいいと思います」

「今様2019 Brut Nature」(マンズワイン、日本) ¥2,900(税抜)
【2本目】ロゼに定評がある国産ワイナリーの逸品
同じく国産でもう1本おすすめを。山形県で造られている「朝日町ワイン ロゼ」(朝日町ワイン)だ。
「朝日町ワインはとてもクオリティーの高いワインを造っていて、特に甘口とロゼには定評があります。セニエによるこのロゼは、朝日町産のマスカット・ベーリーAのみで造られたスパークリングタイプで、品種特有のキャンディーのような甘い香りが特徴。1000円ちょっととコスパもよく、朝日町ワインを手軽に楽しめる1本。朝日町ワインの『マイスターセレクション遅摘みマスカットベーリーA ロゼ』もおいしいです。遅摘みで糖度の上がったマスカット・ベーリーAのほのかな甘さと心地よい苦味のバランスがすばらしいんです。生ハム、パルミジャーノやミモレットなどの熟成された固いチーズ、ビーフジャーキーなど、塩気がダイレクトに味わえるつまみだとワインの個性がより引き出されます」

「朝日町ワイン ロゼ 720ml」(朝日町ワイン、日本) ¥1,200(税抜)
ロゼのつまみ選びのポイントは「マヨネーズ」
コンビニやスーパーへ買い出しに行くならば、ロゼのつまみは何にすべきか。小山田さんは、マヨネーズをポイントに挙げる。
「ロゼワインは樽で発酵したり、熟成したりすることが少ないので、おしなべてフレッシュで酸味があります。マリアージュの鉄則で、同じように酸味のあるものを合わせるといいのですが、尖った酸味だとケンカしてしまう。そこで、酸味がありつつ、ほどよくまろやかさも感じられるマヨネーズの登場。コンビニで買うなら、卵サンド、ツナサンド、マヨネーズ味のおかきなどがよく合います。ハンバーガーチェーンで、タルタルソースを使ったフィッシュバーガー、マヨネーズが入ったテリヤキバーガーも。ただ、あまり強い唐辛子系の辛みやニンニクを感じるものは、ワインの風味を損なってしまうので注意しましょう」
【3本目】ブラピとアンジー経営のワイナリーが造るロゼ
地中海に面したプロヴァンス地方は、ワイン生産の約80%がロゼワインという一大産地だ。
「かつてソムリエの勉強をしていたときに、ロゼが美味しい産地といえばプロヴァンスかローヌのタヴェルと刷り込まれました。私の中ではよく晴れた日に飲みたくなるロゼ=プロヴァンスです」
プロヴァンスで造られる「STUDIO BY MIRAVAL 2020」(ミラヴァル)のさわやかな味わいは格別だという。
「地中海に接していて天気のいい地域のワインなので、気温がぐっと上がった春の日に飲みたくなります。このワイナリーはブラッド・ピットとアンジョリーナ・ジョリーが協同経営者ということで有名。チャーミングな酸味と品種固有のスパイシーな香り、適度なタンニンが見え隠れします。ジャンボンフロマージュ(バゲッドにハムチーズを挟むサンドイッチ)やスモークチーズ、パストラミなどスパイシーなアクセントがある加工肉が合いますよ」

「STUDIO BY MIRAVAL 2020」(ミラヴァル、フランス・プロヴァンス) ¥2,500(税抜)
【4本目】サクランボのような酸味が楽しいスペイン産
続いて、スペインのカタルーニャ州で造られる「JEAN LEON3055 2019 ロゼ」(ジャン・レオン)は、実業家のジャン・レオンが経営したレストラン「ラ・スカラ」の客にふさわしい上質なワインを造ろうと故郷のスペインで立ち上げたワイナリーのものだ。ちなみに、ワイン名の「3055」は、レオンが若かりし頃にタクシー運転手をしていたときのライセンスナンバーだ。
「このロゼは淡いサーモンピンクがとても美しい。さまざまな香りの中に桜の花のニュアンスも。日本のサクランボのように柔らかい酸味、ほのかな苦味もあります。余韻が比較的長いのでひとりでのゆっくり花見にもよさそうです。幅広いお料理に適合しますが、ワインの色に合わせてサーモンを合わせてみましょう。ディル、オレガノ、バジルなどの香草とグリルすると風味が増しますよ。窓越しに桜を眺められるシチュエーションならこうした料理を作ってみるのも手です」

「JEAN LEON3055 2019」(ジャン・レオン、スペイン・カタルーニャ) ¥2,500(税抜)
【5本目】ボトルがかわいく和食にも合う中甘口
そして、最後に挙げるのは世代によっては懐かしさを感じる「MATEUS ROSE」(ソグラペ)。
「子供の頃、父親がお中元お歳暮にもらっていたのがウイスキーとこのマテウスとのセット。ボトルの形は変わりませんが、色は緑がかかっていていましたね。今は透明になっていて、赤みを帯びた鮮やかな色が花見の席で映えます。中甘口とされていますが、かすかに泡立ちがあり、すっきり感も。肉じゃが、ほうれん草の胡麻和えなど甘さもある味付けの和食と合わせるのがおすすめ。レアチーズケーキにも意外と相性よしです」

「MATEUS ROSE」(ソグラペ、ポルトガル) ¥900円前後(オープン価格)
さまざまなロゼワインを飲み比べ、春色のグラデーションを楽しむのも一興。ぜひお試しあれ。
取材・文/小林 悟
撮影/松本 侑
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