ヒントにしたのは、あの無人販売店

小田急線千歳船橋駅を降りてすぐの通り沿いに、一風変わったお店がオープンした。ティファニーブルーを基調とした外観は、美容室やネイルサロンのようにも見えるが、看板やポスターには「牡蠣食う客は健康だ」「“カキ活”美人」といった文言が踊る。実はここ、日本初となる殻付き牡蠣の無人販売店『カキクケコ』の一号店なのだ。

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「カキクケコ」の外観。道行く人も立ち止まって店内をのぞき込んでいた。

取り扱っている牡蠣は、宮城県沖で水揚げされ、殻付きのまま冷凍されたもの 。安全性のため、加熱調理が必須とされている。価格は一箱4〜5個入り(500g)で、税込1,000円。販売方法は至ってシンプルで、購入者が冷凍庫から商品を取り出し、料金箱に現金を支払う仕組みだ。

「参考にしたのは、餃子の無人販売所です」と率直に明かすのはオーナーの吉沢さん。

もともとは千葉県内で二軒の居酒屋を経営していた吉沢さんだが、コロナ禍のあおりを受けて業績が悪化。一軒は閉店にまで追い込まれ、残る一軒も長らく営業できない期間が続いた。活路を模索するなかで注目したのが、急速に店舗数を拡大しつつあった餃子の無人販売所だった。

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オーナーの吉沢竜治さん。「牡蠣食う客は健康だ!」というキャッチフレーズや、それを略した「カキクコケコ」という店舗名も吉沢さん自身のアイデア

「人件費のかからない無人販売なら、自分にもチャンスがあると思ったんです。ただ餃子のような加工食品の場合、生産ラインを整えるために莫大な初期費用がかかります。どこかに製造を委託するにしても、やっぱりお金がかかってしまう。

それに加工食品には、たくさんの化学調味料や食品添加物が使われていますよね。そのことを否定するつもりは一切ないのですが、自分が無人販売に取り組むのなら、食べる人の健康を支えるようなものを扱いたいという思いがありました。それでいて、ほかでは簡単に購入できないものは何だろうと考えていった結果、辿り着いたのが『殻付き牡蠣』だったんです」

最近では、都内のスーパーでも生牡蠣を一年中見かけるようになったが、「殻付き」となると、手に入る時期は限られる。

「そもそも、都内で手に入る牡蠣は、必ずしも品質が安定しているわけではありません。特に旬の時期を外してしまうと、飲食店に卸されるような牡蠣でも、身の痩せた個体が少なからず混じってきます。その点、旬の時期に水揚げしたものを殻付きのまま冷凍しておけば、ぷりぷりとした肉厚の牡蠣をいつでもお届けすることができる。無人店舗で扱う商材としては、最適だと考えました」

スイーツを思わせるかわいらしい箱に、冷凍牡蠣が殻ごと真空パックされている