住人の息づかいが残された古民家カフェ

江ノ電和田塚駅から徒歩二、三歩。
大切なことなので繰り返すが、二分ではなく、二歩。ほとんど江ノ電の駅の南側の続きのような場所に「ブリーズバードカフェ」はある。私の歩幅だと駅から大股二歩でここに着く。元は民家で、門構えや表札はそのまま残されている。門を潜ると、店名の通り風通しがいい空間が広がっている。

江ノ電・和田塚駅から徒歩2歩。地元に根付きつつある古民家カフェで出会った生まれて初めての味_1
看板を飾るオーナメント
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鎌倉には古民家を改装したレストランやカフェが多く、それぞれの改装の方向性を味わうのも、鎌倉らしい楽しみだ。元の家をどれぐらい生かしているのか、どんな風に生かしているのか、もしくはまったく別のものに作り変えているか、手掛ける人によってさまざまである。私は前の住人の息づかいがどこかに残されているような改装が好き。


古めかしい大きな石の門を潜ると、全く別の軽やかな世界が広がっている。北海道から運んだ木材でシンプルに構成された室内は解放感に満ちていて、モダンな印象だ。
広々とした庭を望むテラスは3卓。頭上の白い日除布がアクセントになっている。元は庭だったところにテラス席を作ったため、そこにあった植物を塀側に移動させており、壁に沿って並べられたさまざまな草木は小さな植物園のようだ。庭側は大きなガラス窓なので店内と庭の一体感があって、店の中にいてもテラスにいるような気分になる。

江ノ電・和田塚駅から徒歩2歩。地元に根付きつつある古民家カフェで出会った生まれて初めての味_2
広々とした庭を臨むテラスには3卓の客席

こちらの改装を手掛けたのは葉山に事務所を構える「セイムピクチャーカンパニー」。ビューティーサロン「uka」のミッドタウン店のリニューアルや札幌店、大阪店や神戸店を手掛けている、といったら作風が伝わるだろうか。
木材を扱うのが上手く、ナチュラルな空間づくりを得意としている。ブリーズバードカフェのシェフ片岡聖斗さんによると、「材料を無駄しにしない。素材をそのまま生かしてくれる」ので、セイムピクチャーカンパニーに決めたという。使用されているワックスは米油や蜜蝋でできていて、口に入れても大丈夫なものだそうだ。

江ノ電・和田塚駅から徒歩2歩。地元に根付きつつある古民家カフェで出会った生まれて初めての味_3
木材の温もりを感じるナチュラルな内装

片岡さんは北海道の厚岸町出身。実習船のコックをした後、新富町のフュージョン「クーリ」に入った。そこに客として来ていたオーナーに「鎌倉で飲食店をやってみないか」と声をかけられ、この地にやってきた。