一夜にして人生が変わった経験、ありますか?
私はあります。みなさま、ごきげんよう。青木美沙子です。
ロリータモデルであり、正看護師でもあります。10代のころからずっと“ロリータ”という限られた世界で活動してきました。ふわふわのパニエにフリルにリボン……ロリータは誰もが“かわいいお姫さま”になれる素敵な世界。その魔法にかかって以来、私は永遠にロリータのトリコ。けれど、そんな夢の国にも時折“外”から心ない声が石のように投げつけられます。
「25歳過ぎてロリータとかイタい」「ロリータババア」と言われて…。なぜ40歳看護師は今も胸を張ってロリータモデルでい続けるのか?
青木美沙子、40歳。職業「ロリータモデル」で「正看護師」。彼女が40歳になった現在もロリータでいる理由を『まっすぐロリータ道』(光文社)からお届けする。
なぜ40歳の今もロリータでい続けるのか?

「ロリータババア」
「25歳過ぎてロリータとかイタい」
何度も礫に心を打たれて、いつの間にか年齢を隠すようになりました。胸を張って「ロリータモデルをしています!」と言えない時期もありました。
転機が訪れたのは6年前、ドキュメンタリー番組で年齢を公表してから。私を取り巻く環境は一変しました。それまで石を投げてくる怖い世界だと思っていた〝外〞の方々から、共感と応援の声が届いたのです。
「“普通じゃない”ことは悪いことじゃない」
「“一般的”からはみ出して生きたって、はずかしくない」
「好きなことを貫き通す姿に勇気をもらえた」
「私も何歳になっても自分の好きな服を着たい」

そのひとつひとつから、温かい思いと切実なつらさがあふれていました。私だけでなく、ロリータだけでなく……“外”にも生きづらさを感じている人はたくさんいると知りました。世界がそれまでと違って見えた。34歳のことです。
このドキュメンタリー番組出演をきっかけにメディアで取り上げられる機会が急激に増え、私は包み隠さず、ロリータ愛を語ることにしました。好きなものを好きと言い続けることで、自分だけでなく、ほかの誰かを勇気づけることができるかもしれない。この世界の生きづらさを、ほんの少しだけ変えるきっかけにできるかもしれない。
大好きなロリータ服を着ているのに、後ろめたさを感じることはもうありません。ふわふわのパニエ、フリルにリボン、完璧にかわいいロリータ姿で街を歩けば、怖いものなんてないのです。かつて私を打ちすえた礫に、今なら笑ってこう返すでしょう。
「何歳になっても、ずーっとロリータひと筋!」
世界に誇る日本の“KAWAII文化”のアイコンのひとつ
「ロリータ」と 聞いて、まずどんなファッションを想像しますか? フリルやレースたっぷりの生地に、キラキラのリボンがたくさん飾られていて、パニエでふんわりふわふわにふくらんだスカート、くるくる巻いた髪にはリボンやボンネット……。

まるで世紀のフランス王妃、マリー・アントワネットのようなイメージから「ロリータは西洋の伝統的なファッション」と思っている方が多いようです。
しかしじつは、日本で1980年代にストリートファッションとして誕生した、れっきとした日本発のファッションスタイル。ヨーロッパのバロックやロココ、ヴィクトリア時代の華やかなドレススタイルをベースに、日本独自の“少女趣味アレンジ”が加わって発展してきました。
ヴィヴィアン・ウエストウッドの影響を受けた「MILK(ミルク)」を皮切りに、さまざまなメゾンがロリータテイストの服を製作するようになり、現在まで続いているのです。

ロリータ服はその繊細なデザインや凝ったディテール、技術の高さから、日本の伝統文化である着物にたとえられ、海外では“現代の着物”のようにいわれることもあります(価格も高いですし……)。確かに、デザイン性の高さや細部の作り込みなどに日本人らしさがよく表れていて、眺めていると、日本の誇るべき服飾文化だなと思えます。
「ロリータ」という名称自体は、ナボコフの小説『ロリータ』に登場する少女が 語源といわれていますが、ロリータファッションとの直接的な関係はありません。80年代の原宿で産声を上げたロリータは、いまや世界じゅうにファンをもつ、日本の“KAWAII文化”のアイコンのひとつ。といって、順風満帆、右肩上がりで認知度を高めてきたわけではありません。
というか、発祥の地である日本では、山あり谷ありの歴史をたどってきました。
ロリータファッションはコスプレではない!
何度かブームとして盛り上がりをみせ、その後衰退して「男ウケの悪いファッション」なんて不本意なレッテルを貼られたことも。あとで詳しくお話ししますが、ロリータを愛する人たちにとっては長らく、肩身のせまい時期が続きました。けれどこの数年、世間では“多様性”が求められる影響もあってか、ロリータの魅力が再び評価されつつあります。ロリータの誕生からずっとともに歩んできた私にとっては、やっとおもしろい時代がきた!という感じです。

それと、よく 混同されがちな誤解について。「ロリータ」と「コスプレ」は、まったくの別物です。一般的にコスプレのほうが有名なので、ロリータファッションで街を歩くとコスプレだとみなされがち。ですが、コスプレはキャラクターになりきるためのもので、ロリータは自分自身のファッション表現。
マリー・アントワネットのような衣装にあこがれてロリータ服を着たとしても、マリー・アントワネットそのものになりたいわけではないので、互いの目的の違いを知っていただけるとうれしいです。
撮影/中林香
まっすぐロリータ道(光文社)
青木美沙子

2023年5月24日
1980円
176ページ
978-4334953805
レールから外れたら、
世間に対して気おくれや劣等感を抱かなきゃいけないの?
青木美沙子、40歳。
職業「ロリータモデル」で「正看護師」。
「25歳を過ぎたらロリータなんてやめるべき」
「看護師がロリータ服なんか着ちゃいけない」
「35歳までに結婚して子供を産まなきゃ」
――だって、それが「常識」でしょ?
自分の軸を「世間」という他人に明け渡さず
私はロリータな自分を肯定して生きていきたい!
モデルと看護師のふたつの仕事、婚活などを通して
生涯〝好きをどう貫くか〞をつづった1冊。
〝普通じゃない〟は悪いことじゃない!
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