世紀末、気分は“ディザスター”!?

1999年の配給収入ランキング1位が『アルマゲドン』(1998)であることは、同作でブルース・ウィリスの娘を演じたリヴ・タイラーがさっそく1月号の表紙を飾っていることからも明らかだろう。

ついに世紀末。『アルマゲドン』と『スター・ウォーズ』新3部作というSF超大作が指し示した、21世紀の映画の可能性_1
エアロスミスのスティーヴン・タイラーの娘リヴは、『君に逢いたくて』(1995)で映画デビュー、恋愛ドラマ等を経て『アルマゲドン』で大ブレイクした
©ロードショー1999年1月号/集英社
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『アルマゲドン』は、ハリウッドの“ディザスター映画”ブームを象徴する作品だ。ディザスターとは大災害のことで、70年代にはパニック映画と呼ばれ、『大空港』(1970)『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)『大地震』(1974)『タワーリング・インフェルノ』(1974)といった作品が人気を博したが、90年代に呼び方を変えて第二次ブームが到来した。

きっかけは1993年の大ヒット映画『ジュラシック・パーク』だ。CGを導入することでそれまで不可能だった映像表現ができることが証明されると、竜巻の恐怖を描く『ツイスター』(1996)をはじめ、火山噴火を題材にした『ボルケーノ』(1997)と『ダンテズ・ピーク』(1997)など、各社がこぞってディザスター映画を立ちあげた。主人公たちが大災害に巻き込まれる設定を取り入れれば、観客の度肝を抜く映像と、極限状態に置かれたキャラクターたちのドラマを描くことができる。エイリアン襲来を描く『インディペンデンス・デイ』(1996)もディザスター映画だしーーというか、ローランド・エメリッヒ作品の大半はディザスター映画だーーその究極は『タイタニック』(1997)だ。

「巨大隕石が地球に落下する」という設定を取り入れたディザスター映画に関しては、スピルバーグ監督が製作総指揮を務める『ディープ・インパクト』(1998)と、ジェリー・ブラッカイマーがプロデュースする『アルマゲドン』が同時期に製作されていた。前者が社会性やリアリティを取り込んだわりと真面目な作風だったのに対し、後者は気持ちがいいほど荒唐無稽に終始。その結果、エンタメ性を最優先した『アルマゲドン』が大勝利を収めることになる。

ちなみに、メガホンを取ったマイケル・ベイ監督は、『パール・ハーバー』(2001)ーーこれも歴史大作のふりをしたディザスター映画だーーを手がけたのち、『トランスフォーマー』(2007~)シリーズを量産していくことになる。CG映像を売りにしたハリウッド映画のトレンドが、ディザスター映画から、アメコミ映画などの原作モノに移っていくためだ。