1年の初め、気持ちを新たに2023年のはじまりを進んでいくべく、見ているだけで元気をもらえる名作映画をご紹介。
「桂枝之進のクラシック映画噺」第10回は、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)の魅力をお届けする。
主人公は、アメリカはアラバマ州の田舎町で生まれたフォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)。まわりと比べて知能指数は劣るものの、裏表のないひたむきな性格と誰にも負けない足の速さを持ち合わせ、アメリカ激動の時代を駆け抜けてゆく物語だ。
監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでおなじみのロバート・ゼメキス。CGやVFXを多用し、独自の視覚効果を追求する監督なだけあって、この作品も白い羽根が宙を舞うCGのカットから物語が始まる。製作された1994年当時の先端技術が、要所要所で作品のリアリティを支えているのも見どころのひとつだ。
幼少期のガンプは、ひとり親であるお母さんの言いつけをしっかり守る純朴な少年。初めてスクールバスに乗るときには、「知らない人の車には乗ってはいけないから」と、運転手とあらたまって自己紹介を交わしてから乗車するような、少し変わったキャラクターの持ち主だった。
故に周りからは好奇の目で見られ、なかなか周囲に馴染むことができないガンプに、同級生のジェニー・カラン(ロビン・ライト)ただひとり、隣の席に座らせて話しかけてくれた。
その日からガンプとジェニーは意気投合。
いつしかガンプにとってジェニーは特別な存在になってゆく。
常にニュートラルでオープンマインド。Z世代が映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』に学ぶ理想の生き方
本業の落語のみならず、映画や音楽など幅広いカルチャーに造詣が深い21歳の落語家・桂枝之進。自身が生まれる前に公開された2001年以前の作品を“クラシック映画”と位置づけ、Z世代の視点で新たな魅力を掘り起こす。
Z世代の落語家・桂枝之進のクラシック映画噺⑩
ロバート・ゼメキス監督の名作映画

『フォレスト・ガンプ/一期一会』
Album/アフロ
際立つガンプと周囲とのギャップ
ガンプの人生にはいつも不思議なことが起きる。
本人は気の赴くまま、ただそのままに生きているはずなのに、足の速さが周りに知られるとラグビーでフォワードを任され、輝かしい成績を残してしまう。
またベトナム戦争が始まると、ガンプはスカウトされるままアメリカ陸軍に入隊する。
そこでも真っ直ぐな性格のガンプは軍隊にすっかりとけ込み、人命救助で大きな功績を残して帰国すると、ジョンソン大統領から勲章が贈られる。
本人の意思を飛び越えて、次々とミラクルを起こしていくのだ。
しかしどれだけ人生が上手く転がっても、ガンプは頭の中で常にジェニーを思い続けている。
一方でジェニーは複雑な家庭環境で育ち、成長するにつれて悪い友人や刺激に囲まれて徐々に人生が没落していく。
頭ではわかっていても幸せになる方法を選ぶことができない、ガンプとは真逆のような人間なのだ。
この対照的な2人は時折交差しながらも、それぞれの人生を歩んでゆく。
ガンプはいつもニュートラルで、まわりの出来事とのギャップが際立つ存在だ。
1950年代〜1980年代の激動のアメリカ史、ベトナム戦争やジョギングブームなど、ガンプはいつも周りに囃し立てられ、気付けば時の人になっているのだが、本人は自分のペースで生きているだけなのだ。
ガンプとジェニーの対比、ガンプと社会の対比、そして雄大なアメリカの自然風景やリンカーン記念堂に群衆が集まる反戦運動のシーンなど、CGを多用した壮大なスケールで描かれる迫力のある画作りと、素朴なガンプとの対比。
この映画はガンプの人間味とその周囲のギャップによって、そのどちらもが際立つのだからおもしろい。
走りたいと思ったから走り、戦友との約束を守るためにエビ漁を始め、いつでもジェニーが一番。
とても理想的な生き方なのかもしれない。
「人生はチョコレートの箱みたい。食べるまで中身はわからない」
2023年はガンプのように、オープンマインドで過ごしたいと思った。
文/桂枝之進
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)Forrest Gump 上映時間:2時間22分/アメリカ
知能指数は劣るものの、純真な心と恵まれた身体、母への愛とひとりの女性への一途な思いを貫き続ける主人公フォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)の人生を、1950〜1980年代のアメリカの歴史を交えながら描いたヒューマンドラマ。第67回アカデミー作品賞を受賞し、世界中で大ヒットを記録した。
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