“キングオブコント事件”の後、いぬはM-1でもキスネタを披露していた!「完全に“禁じ手”と言われるまではやりますよ」
キングオブコント2022最大の“問題作”ともいわれたパーソナルトレーナーと中年女性の純愛キスネタ。同大会では審査員に「禁じ手」とも言われたが、実はいぬのふたりはその後に行われたM-1グランプリ3回戦でもキスネタを披露していた!
いぬ インタビュー♯3
コンビ結成のきっかけとなった芸人

いぬ。吉本東京所属。2009年結成。ネタ作り担当の有馬徹(左)と太田隆司(右)はともに宮崎県出身で、高校時代はラグビー部の同級生。
——キングオブコントのファイナリストになったことで、その後、環境に変化はありましたか。
有馬 僕らの中では、めちゃくちゃありましたね。テレビのネタ番組に呼ばれたり、あと、ルミネ(新宿・ルミネtheよしもと)の本公演に立たせてもらったり。
——今、ルミネの舞台に立つのは、かなりハードル高いですもんね。
有馬 若手が出るのはなかなか。
太田 東京吉本の若手は基本、渋谷の「ヨシモト∞(無限大)ホール」なんで。たまにルミネに出られるんですけど、夜の、本公演とは別の公演がほとんどなので。ルミネの本公演というのは滅多に出られないんです。
——土日の本公演ともなると、ほとんどのメンバーがM-1かキングオブコントのファイナリストで、錚々たる顔ぶれになりますもんね。
有馬 同じ香盤(出演者の出番時間が書かれた表)に中川家さんとかの名前があるのが本当に嬉しくて。
太田 僕ら6、7年ぐらい前にルミネの前説を1年間で100ステージぐらいやらせてもらったことがあるんです。それでやっと、幕の前じゃなく、幕の後ろでネタができて。それこそジャルジャルさんが袖にいて、見てくれているのとかも感じつつ。
太田 福徳(秀介)さんの笑い声とかが聞こえてくるんですよ。
有馬 あれはちょっとしびれましたね。
——2人がコンビを結成したのは、ジャルジャルが一つのきっかけになっているんですよね。
太田 僕らは宮崎出身なんですけど、高校が一緒で。2人ともラグビー部で、そのときから、高校卒業したら一緒にお笑いをやろうと言っていたんです。でも有馬の両親が大学だけは行って欲しい、と。
有馬 それで僕は鹿児島の大学に入って、太田は一浪して京都の大学へ行ったんです。でも途中で、大学4年間は長いな、と。
太田 有馬と電話で話しているときに、僕が関西でめっちゃおもしろい人を見つけたぞって言って、そうしたら有馬も俺も見つけた、と。それが2人ともジャルジャルさんだった。そこで話が盛り上がって、勢いで大学を辞めて、東京NSCに行こうということになったんです。僕が2年生で、有馬が3年生のときでしたね。
「あ、もう、ぜんぜん。余裕で僕が勝ってます」

野田クリスタル(マヂカルラブリー)がジム長を務めるクリスタルジムでパーソナルトレーナーをしている太田
——もしキングオブコントのファイナルステージに進めていたら、2本目は、太田さんの鍛え上げられた肉体美を見せられるネタだったんですよね。そのために本番2日前から水を抜いていたとか。
太田 せっかくなんで、きれいな体を見て欲しくて。3週間ぐらい前から食事を制限して、2日前から水抜きをしました。水分は当日、本番前にちょっと摂ったくらいです。
——いつからボディービルを始めたのですか。
太田 高校のラグビー部のときに週1回、筋トレの日があって。そこからですね。去年の夏、マヂカルラブリーの野田(クリスタル)さんがクリスタルジムをオープンさせたんです。僕もそこでトレーナーをやることになっていたのでジムに通い始めて、ここ2年ぐらいはさらに体が仕上がりましたね。
——野田さんと太田さんだったら、体的にはどちらが上なんですか?
太田 ぜんぜん僕の方が上ですね。これは声を大にして言いたい。
——東京ホテイソンのショーゴさんも体を鍛えていますよね。
太田 あ、もう、ぜんぜん。余裕で僕が勝ってます。
——そういうのは見る人が見れば一目瞭然なんでしょうね。
太田 はい。筋肉芸人の勢力図を塗り替えてやろうと思っています。芸人で負けたなって思ったのは中山きんに君ぐらいですね。あの人はやっぱりちょっとレベルが違います。
M-1では「キスは禁じ手」じゃない?

——それにしても、今大会は、ネタに点数を付けることの残酷さを改めて思い知らされました。順位をつける大会ではなく、普通のライブだったら「今日はいぬが一番ウケてたんじゃない?」みたいな感じで終わっていたかもしれないじゃないですか。でも、審査員の飯塚さんに「キスは禁じ手」と言われたこともありますし、点数が伸びず9位に終わったことで「おもしろくなかった」と見なされかねない。ここが賞レースの難しいところというか、ジレンマですよね。
有馬 決勝に出てくるほどのメンバーですから、どこもおもしろいに決まってるんですよ。でも、その中で、差をつけなければならない。みんなおもしろいおもしろいと高得点を付けていたら賞レースにならないですからね。審査員も大変なんだと思います。

「“禁じ手”って言われたときは、やっちゃいけないことやっちゃったのかと、恥ずかしかった」と語る有馬
——今回、14度目の挑戦で、ようやく決勝のステージに立つことができました。やっと見えたものもある反面、迷いが生じてしまった面もあるのではないですか。
有馬 キスに関しては、そうですよね。賞レースでなければ何でもありなんでしょうけど。避けるか、貫くか。どちらかですよね。
——去年のM-1で、ロングコートダディが、松本(人志)さんやオール巨人さんにもっとセンターマイクを使うべきだというアドバイスを受けました。でもロングコートダディはまったく気にしていませんでしたね。必要であれば使うし、使わない方がおもしろければ今後も使わない、と。お笑いを作る人は、そうあるべきなのかなと思いました。
有馬 ハートが強いですよね。でも、僕もめちゃくちゃおもしろいネタができて、そこにキスが必要なのであれば、たぶんやると思います。
——今年のM-1の3回戦のネタも見ましたけど、動きで笑わせる、いぬにしかできないネタでした。あれだけおもしろくても3回戦を突破できないんですもんね。M-1も、やはり厳しいですよね。
有馬 しゃべりが少ないので、やっぱり漫才になってない、ということなんですかね。
——どうなんでしょう。そうやって線を引いちゃうと、窮屈な感じもしますが。それはそうと、M-1のネタでも最後、キスをしていましたね。
有馬 もともとはなかったんですけど、キングオブコントからの流れでいちおうやっておこうかな、と。
——いやあ、おもしろかったです。めちゃめちゃ笑いました。
有馬 M-1では、まだ「キスは禁じ手」とは言われてないんで。言われるまでやりますよ。

取材・文/中村計 撮影/村上庄吾
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