キングオブコントもトップバッターは不利なのか? クロコップに聞いた。「あれは絶対、ヤラセだと思ってます」
ここ数年で「大会のレベルが飛躍的に上がった」と言われるキングオブコント。2022年のファイナリストたちの貴重な証言から、その舞台裏を浮き彫りにしていくシリーズ連載。今回は今年1番手に登場し、人気漫画のオマージュネタをやりきったクロコップ。彼らは「トップバッター不利説」をどう感じているのか?
クロコップ インタビュー♯1
ずっと松本さんの方を見てネタをやった

クロコップ。ケイダッシュステージ所属。2013年結成。ネタ作り担当の荒木好之(左)としょうた(右)はともに大阪府出身で中学の同級生
――決勝初出場でトップバッター。初物尽くしの登場となりましたが、普段通りにできましたか。
荒木 決勝は舞台が左右に分かれて二つあって、交互に使うんです。そうすればネタ中、逆の方の舞台で次の組のセットなどの準備ができますからね。
それで正面に設置された審査員席のいちばん右端に松本さんが座っていたんですけれども、僕らは松本(人志)さん側の舞台を使ったので、「松本さん、近っ」って思って。なので最初のセリフは、松本さんに向かって言いました。度胸試しで。
しょうた お前、すごいな。
荒木 トップバッターというのもあって、どうにでもなれぐらいの気持ちでやっていたんで。その後も、ずっと松本さんの方を見てネタをやりました。そうしたらネタが終わったあと、松本さんに「ウケてるぜーって顔がちょっと……」と苦言を呈されて。僕はそんな顔をしているつもりはなかったんですけど、たぶんそのせいだったと思います。
――クロコップのネタは、勇壮な音楽に乗せて、互いに必殺技のカードを出し合いながら、あっち向いてホイで対決するというものでした。私は後で知ったのですが、カード対決というアイディアや音楽は人気漫画『遊戯王』のオマージュだったんですね。ただ、おそらく、審査員も誰一人としてそのことには気付いていなかったですよね。
荒木 そこはわからなくても伝わるようにつくってあったので。知ってたら、もっと楽しめたかもしれませんけど、おもしろさはそんなにかわらなかったと思います。
――あまりにも音楽と動きが合ってるので、オリジナル曲なのかと思いました。
荒木 あれは『遊戯王』の中で、逆転しそうになったときにかかる音楽で、めっちゃ盛り上がるんです。だから、知っている人が見たら、テンションが上がる曲ではあるんですよ。
24回連続で攻撃できる「ホイましまし」で大失態

あっちむいてホイは“失敗が許されないネタ”だと語るクロコップのふたり
――あっち向いてホイを何度やっても互いに負けないという設定でしたが、あれだけの回数を間違えずにやるのは大変ですよね。間違えたときの対応策とかもあったのですか。
荒木 ないです。
しょうた 間違えたら流します。アドリブは一切、利かないネタなんです。このときは僕がこっちにホイってやるから、相方はこっちを向くというのを全部決めていました。
荒木 どこかで一度でも負けたことにしてしまうと、締めの「引き分けだな」というセリフにつながらなくなるんです。決勝はノーミスでしたけど、ライブでは何度もミスりましたし、お客さんにも気づかれました。だから、もし決勝で間違えたら、審査員に「途中で負けてたよね」ってツッコんでもらえることを願っていたと思います。見て見ない振りをされる方が辛いので。
しょうた 一度、テレビ収録のときに、ボロボロになってしまったことがあって。
荒木 相方が24回連続で攻撃できる「ホイましまし」というカードを出したときが、いちばん怖いんです。その収録のときは24回中12回、差された指と同じ方向を向いてしまいました。惨敗です。一度、間違えるとわけわからなくなって、どんどん指が向いてるほうに顔がいっちゃうんですよ。
――そのとき収録は撮り直したのですか。
荒木 いや、お客さんも入れていて、半分ライブみたいな感じだったので、撮り直しはできなくて。なので今回、ようやく完璧バージョンを放送してもらえて、よかったです。あそこまで精度を上げるのに、どれだけミスしたことか。
――あのネタは、いつ頃できたネタだったのですか。
荒木 一昨年ぐらいですかね。そこから改良しまくりました。
――決勝は結果、460点でした。460点台に乗ればまずまずという感じだと思うのですが、トップバッターは得点発表後のリアクションも難しいですよね。
しょうた 難しかったです。これじゃあトップ3に残るのは無理だなと思いつつ、いちおう暫定1位なのでガッカリするのも違うな、と。
荒木 正直、あとの組にどんどん抜かれていくだろうなと思っていました。
――その言葉通り、2番手のネルソンズ(466点)、3番手のかが屋(463点)と抜かれていって……。
荒木 4番手のいぬのネタを見た時点で、完全に脱落すると思ったもんね。
しょうた いぬはスタジオで、めちゃくちゃウケてましたから。
荒木 たぶん(1位から3位の)暫定席に座っていた3組は、みんな抜かれたと思ったんじゃないかな。どんな点が出んねん、みたいな雰囲気でしたから。
――プレスルームも、めちゃくちゃウケていました。ただ、審査員の飯塚(悟志)さんが「(いぬのネタ中の)キスは禁じ手」ということで89点をつけるなど、計459点どまり。思ったほど伸びませんでした。
荒木 1点差でギリギリ残りましたね。
しょうた ちょっとだけ耐えたんですが、5番手のロングコートダディ(461点)にすぐ抜かれましたけど。
荒木 僕らは最終的に8位まで落ちちゃいましたけど、5位のかが屋から9位のいぬまで、きれいに1点差なんです。1点の重みって、すげえなと思いましたね。
トップバッターはコントの方がしんどい
――M-1もそうですが、キングオブコントも順番の有利不利はいかんともしがたいですよね。2018年から上位3組がファイナルステージに進める方式に変更になりましたが、今大会を含め5年間でトップバッターが上位3組に残ったケースは、2019年のウルトラブギーズのみです。逆に6番手と8番手は、ともに3回ずつ残るなど、やはりこの近辺の組が強い印象があります。
荒木 トップバッターはたぶん漫才よりコントの方がしんどいと思いますね。漫才は自己紹介とかつかみがあるじゃないですか。あそこで場合によっては、空気を変えることができる。コントはそれがまったくできないので、どうしてもお客さんは最初「何すんねやろ」って構えてしまう。

荒木のトレードマークともいえるオープンフィンガーグローブ
――順番はいつ決まるのですか。
荒木 準決勝が終わって、ファイナリストが発表されたときですね。TBSに集められて、コロナの関係もあって局の人が代理で引くんです。そうしたら「まずは、クロコップさんの分から引きます」って言われて、いきなり1番目を引かれた。「これはヤラセちゃうんか」みたいな。
しょうた あれは絶対にヤラセだと思ってます。そう書いといてください。
荒木 僕らのあと、他のコンビの番手が決まった時のリアクションの薄いこと薄いこと。
しょうた ひとまず1番じゃないんで、みんなホッとし過ぎちゃって。
荒木 でも結果的に1番でよかったかもしれませんね。他のコンビのウケをまったく聞かずにできたので。(優勝した)ビスケットブラザーズの後とかよりは1番の方がぜんぜんよかった。あれだけ会場が揺れたあとは、なかなか普通にはできませんよ。
トップだから審査員の顔を眺める余裕がありましたけど、ビスケットブラザーズの後だったら松本さんの顔を間近に見た瞬間、テンパっちゃってたかもしれないですから。
取材・文/中村計 撮影/村上庄吾
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