北口富紀子さんは、1998年にフジテレビへ入社後、2年目からバラエティ制作センターに所属し、『ネプリーグ』『ハモネプ』『AI-TV』など、数多くの人気バラエティ番組を世に送り出してきた、敏腕プロデューサーだ。

4年前からは、フジテレビの看板お笑い番組『THE MANZAI』『爆笑ヒットパレード』『ENGEIグランドスラム』3本のチーフプロデューサーを務め、現在は企画担当部長として、すべてのバラエティ番組に関わっている。2児の母でもある北口Pに、「おもしろいモノ」を作り続ける情熱を聞いてみた。

人を動かすのは、熱意

――学生の頃からプロデューサーを目指していたのですか?

子どもの頃から本当にテレビが大好きだったので、就活はテレビ局に絞りました。実は他局も受かったんですけど、フジテレビのお笑い番組で育ってきましたので、迷うことなく、憧れのフジテレビに入社しました。

――改めて、バラエティ番組におけるプロデューサーのお仕事内容を教えていただけますか?

番組を立ち上げるときに、キャスティングをして、予算をどこにどう使うかを考えるのがプロデューサーで、キャスティングされた出演者に何をしてもらって、それをどう撮り、どう編集するかを決めるのがディレクター。

でも実際は、それほどキッチリ分かれているわけではありません。1つの番組について、プロデューサーとディレクターがそれぞれ企画書を書いて通すんですけど、同じ企画でもメイン司会を…たとえばウッチャンナンチャンの内村さんにお願いするのか、ダウンタウンの松本さんにお願いするのかによって、番組のカラーはまったく違ってきますよね。ですから、双方が深く関わり合いながら番組を作ることになります。

――プロデューサーというお仕事の醍醐味は?

それまではあまり知られていなかったタレントさんや専門家の方を自分が「おもしろい」と思い、口説いて番組に出てもらい、その後その方が他局も含めて活躍されていくのは、とても嬉しいことですね。

――口説く?

これはフジテレビの伝統かもしれないけど、出て欲しい!となったら全力で口説くんです(笑)。
たとえば、私の先輩である片岡飛鳥さんは、まだ仕事でご一緒したことがないタレントさんを初めて口説くときは、その方がこれまで出演してきた舞台やテレビ番組などの作品すべてを、何ヶ月もかけて見てからオファーしに行ったそうですし、荒井(昭博)さんは、どうしても出てほしいと思った方には、雨の日も風の日も毎日家に通ったそうです。

――では、もちろん北口さんも…

入社してまもなくのころ、当時まだADだった私に、先輩が「北口は、ADにはあまり向いてないけど、人と仲良くなるのはうまいから、美輪明宏さんを口説いてこい」って言うんですよ。

当時の美輪さんは、非常にミステリアスな、すごい方というイメージ。連絡を取らなくてはとタレント名鑑をめくって事務所に電話しても、いっこうに繋がらないんですね。

そんな美輪さんを私が“口説く”だなんて、まるで雲をつかむような話だと思っていたのですが、上司から美輪さんがいらっしゃると噂の場所を教えてもらって。舞台や音楽会など、美輪さんとお話できそうな機会を狙って、地方まで追いかけました。

そのうちに少しずつ、美輪さんご本人と挨拶できるようになって、ついには楽屋にまで呼んでいただける仲になったんです。しかも美輪さん、私の愚痴や悩みまで聞いてくださり、励ましてくださって。本当にありがたかったですね。それ以来、私がお願いする番組にも気持ちよく出ていただきました。こんなにいい経験はないと思っています。

――熱意が通じたんですね。

人を動かすのは熱意だと思うんです。それと、いかに相手を知るか。私はそう信じて、プロデューサーという仕事を続けてきました。