大手企業が好ましく思わない動画増加で苦境に……

今年9月、複数の海外メディアが“YouTubeで動画を再生した際、スキップできない動画広告が連続で5本も流れる事態が起きている”と報じた。これはSNSでも大きな話題となりYouTubeの広告が今後どう変化していくのか、不安の声が集まる形となっている。

こうした動揺の声にYouTubeの公式Twitterアカウントは、「(広告の連続再生は)バンパー広告と呼ばれる最長6秒の広告で起こる可能性があります」と回答。つまり噂を否定しなかったのだ。

では、このスキップできない動画広告が最近かなり増えてきた理由はズバリなんなのか。

「これまで動画広告を出していた大手の企業が出稿を減らしており、代わりにそこまで知名度のない会社や、ベンチャー企業を中心とした出稿が増えたことが理由だと考えられます。

近年のYouTubeはヘイトを助長するような動画や、ドラマや映画をまるごと一本投稿するといった著作権法違反動画の横行など、広告主にとって好ましく思えない動画が世界的に増加した印象があります。

一方、YouTube上で自前のチャンネルを作ることで、お金を払って広告を出稿しなくても宣伝ができるようになったこともあり、元からある程度の知名度を持つ大手企業は動画広告をあまり出稿しなくなったのです」(YouTube界隈の事情に詳しいITジャーナリストの井上トシユキ氏)

海外では動画広告が連続5本続く事態も発生中! 有料プランに加入しない今後“YouTubeが広告だらけになる”のは本当か_1
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そもそもYouTubeの主な収入源は、動画広告の出稿からだっただろうのか。

「YouTubeの初期は映画やビデオ化された映像作品の予告編やミュージシャンのPVを公式広告として流すことで、映画会社、レーベル会社などから収益を得ていましたが、2006年にGoogleがYouTubeを買収。その翌年から大々的な広告表示が始まり、広告主が支払う広告掲載料金から収益を得るビジネスモデルへと移行しています」

このシステムによりYouTube側の収益は増加。さらにその収益をクリエイターへと分配するプログラムを2007年から始めたことで、動画制作を専門に行う、いわゆる“YouTuber”も生まれ、YouTubeのコンテンツは充実していきました」

こうしてコンテンツが徐々に増えていったなかで、大手広告主が好まないような動画も増えてしまったという。

「その結果、限られた広告予算しか持たず、少額の広告掲載料金しか払えない知名度の低い企業などからの出稿が主になり、YouTubeはこうした状況下でも、これまでと同水準の収益を得るために、広告の数を増やしているのだと考えられます」