【漫画あり】このままいくと孤独死かもしれない…35歳独身男の大人の友だちづくり奮闘生活
35歳独身、上京して友だちがひとりもいない孤独な男の友だちづくり奮闘記を描いた実録漫画『僕にはまだ 友だちがいない』が集英社オンラインで配信決定。2013年には浜野謙太主演でテレビドラマ化もされた同作の誕生エピソードを作者の中川学氏に聞いた。
人生死んでしまいたいときには下をみろ、俺がいる #3
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「中川さん、友だちいないですよね?」
――『くも漫。』に続いて、デビュー作『僕にはまだ 友だちがいない』(2012)が集英社オンラインで公開されることになりました。
とてもうれしいです。この作品は『くも漫。』と同様に自分のダメなところを描いている話なので、そういう部分を面白がってくれた人には刺さるんじゃないかなと思います。集英社オンラインの記事で『くも漫。』を読んでくれた方が、けっこうコミックスを買ってくれたみたいなので、同じパターンを期待しています(笑)
――こちらは「コミックエッセイ劇場」(メディアファクトリー/現・KADOKAWA)で連載されていた作品です。どんな経緯ではじまったのでしょうか?
もともとは、SNSをテーマにしたエッセイ漫画を描こうということで担当さんとやりとりをしていたんですが、途中で東日本大震災がおきて企画がストップしてしまって。担当編集の方が変わって仕切り直しをしたんですが、その初めての打ち合わせのときに「中川さん、友だちいないですよね?」っていきなり言われたんですよ(笑)。
確かに自覚はあったので、本編にも描いた“仲のいい幼馴染みの結婚式に呼ばれなかったエピソード”を話したら、「だったら、友だちづくりの話はどうですか?」と、方向性が固まっていきました。実際、上京したばかりで寂しかったし、東日本大震災後の心細さもあったから、友だちは欲しかったんです。だから、僕も「やりましょう!」という気持ちでした。

幼馴染み・かみちゃんの結婚式に呼ばれなかった中川氏【第2話収録】
――本作も『くも漫。』と同じく人間ドキュメントのような読後感があります。中川さんの作風はこのときに確立したのでしょうか。
エッセイ方向で行くことは決めていましたが、最初はすべてさらけ出していこうとまでは思ってなかったんですよ。ただ、笑える方向を突き詰めていくのであれば、自分の恥ずかしいところを出した方が面白いので、徐々にさらけだすようになりました。『くも漫。』でもお話した村西とおるさんのお言葉、「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ、俺がいる」ではないですが、その気持ちはずっと持っています(笑)
日雇いバイトと漫画にまみれた上京生活
――本作を描くにあたって苦労した点はありましたか?
作品テーマそのものですけど、友だちづくりに苦労しましたね(笑)。近所のバーに行ったり、飲み会サークルのオフ会に参加したり、サブカルイベントに行ったりと色々やったんですけど、なかなかうまくいかなくて。連載自体も結末を決めずに、見切り発車でスタートしていたので、「この作品はどうなってしまうんだろう」とハラハラしながら描いていました。

ふらりと入ったバーにはひとり客の女性が…【第8話収録】
――中川さんがこの作品を描いていた2011年ごろは、どんな生活だったのでしょうか。
上京してきて、まだ半年くらいでした。漫画家支援プログラムの「トキワ荘プロジェクト」に参加して、漫画家のたまご5人と一軒家に住んでいたんですけど、お金も全然なかったので連載が決まるまでは日雇い派遣のアルバイト生活です。「今日はこの現場に行ってください」みたいなメールが毎日きて、行って、働いて……という感じでした。

漫画→バイト→漫画→バイトの繰り返しの生活【第1話収録】
――日雇いバイトだと友だちはできづらいですよね。
今日を生きるので精一杯の人たちばかりで、殺伐としていましたしね。毎日違う顔ぶれだし、友だちができる要素はまったくなかったです。いま思えば特定のバイト先にしておけば友だちはできたのかもしれないけど、僕も日雇いの方が気楽だったんですよ。そこは、逆に僕のダメな部分が出ていましたね。
――日雇いバイトではどんな作業をしていたんですか?
文庫本の帯を付け替えてました。作品が映画化されたりすると、帯が変わるじゃないですか。「絶対にいつかこっち側に行くぞ」みたいな気持ちで、延々と作業していましたね。
漫画の仕事が全然決まらないので、本腰を入れて図書館司書をやろうと思ったこともあります。でも、研修を受けて現場に出る数日前のタイミングでこの作品の連載が決まったので、それはやめたんですけど。
上京3か月で連載決定、しかもデビュー作がテレビドラマ化!
――上京してたった3か月で連載が決まるって、実はすごいことですよね。
そうなんですよね。僕がいたトキワ荘の中でも早い方だったので、ありがたかったです。
――トキワ荘の人たちとは、ライバル意識みたいなものもあるんですか?
人によると思いますけど、僕はまったくありませんでした。いまもそうですけど、僕は絵が全然描けないので、みんな師匠ぐらいの気持ちでいましたね。全員年下なんですけど(笑)
――本作は、2013年にNHK Eテレでドラマ化もされています。連載開始が2011年で、単行本発売が2012年、その翌年には映像化とかなりのトントン拍子です。
本当にありがたいですよね。ただ、メディア化みたいなことは想像もしていなかったので、本当に人ごとみたいな気持ちでした。
――ドラマ化の話はどんな経緯できたんですか?
めちゃめちゃコネなんですよ(笑)。担当編集のいとこの方がテレビディレクターで、いつも編集さんが自分の担当した漫画を送っていたらしいんです。で、『僕にはまだ 友だちがいない』を読んで面白いと思ってくれたみたいで、『青山ワンセグ開発』(NHK Eテレ)という若手ディレクターの登竜門的な番組に出すために3話分を作ってくれたんです。番組で優勝をすると最後まで作れる権利がもらえるんですけど、優勝できて全13話作っていただけました。
――主演の浜野謙太(ハマケン)さんのことは、ご存知でしたか?
映画が好きなので、役者としては前から知ってました。『婚前特急』という作品で初めて見たんですが、異様なキャラクター性にすごく惹かれて。だから、主演がハマケンさんと聞いてうれしかったですね。

2013年にNHK Eテレでドラマ化された
――いってしまえば、中川さんご自身を演じるわけですからね。
そうですね。いま「異様な」って言っちゃったとこですけど(笑)。ハマケンさんとは雑誌の対談企画のときに、作品にひっかけて「友だちになりますか?」みたいな話題に一瞬なったんですけど、それ以降の交流はいまのところ特にありません。
中川氏に友だちはできたのか?
――ちなみに、その後、本作を描くきっかけにもなった「結婚式に呼ばれなかった仲のいい幼馴染み」から連絡はきませんでしたか?
コミックスが刊行された後に地元に帰ったとき、ほかの幼馴染みと一緒に飲みましたよ。漫画も読んでくれたみたいで、「結婚式に呼ばなかったのは、ごくごく近い人たちだけでやったからだよ」と言ってくれたんですけど、どこまで近い人たちでやったのかは、怖くて聞けなかったです(笑)
【漫画】ひとりカラオケ、ひとり焼肉、ひとり映画館、このままいくと孤独死だ…「35歳独身男の大人の友だちづくり奮闘記」(すべての画像を見るをクリック)

漫画を1話ごと読みたい方はこちら。くすりと笑える中川先生のレビューつき
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取材・文/森野広明 漫画/中川学
僕にはまだ 友だちがいない


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