ジャニーズアイドルの歌の魅力

「今、日本で最も優れたボーカリストは玉置浩二とMISIA」音楽家・武部聡志がそう語る理由_1
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――ジャニーズのアイドルたちとこれだけたくさん共演してきた方は、武部さん以外にあまりいないような気がします。ジャニーズのなかでとくに印象深いボーカリストは誰ですか?

武部 やはり歌を聴いた回数も、レコーディングでアレンジした曲数も多いですから、その思い入れも含めてKinKi Kidsは特別です。ただ堂本剛くんと堂本光一くんのふたりはそれぞれ、歌に対するアプローチの仕方も違うし、違う表現力を持っている。それが面白いですよね。

光一くんはどこまでも明るい王子様で、だからエンターテイナーとして『SHOCK』みたいなミュージカルを成功に導けた。剛くんは彼自身が“硝子の少年”ですから、どこかに屈折した思いみたいなものがあって、その暗さが歌ににじみ出ています。

それなのにふたりで声を合わせると、ハーモニーの一体感が生まれて、たまにどっちの声かわからなくなるときがあるんですね。ソロで歌っているところはもちろんわかりますよ。

でもユニゾンで歌ったり、ハモって歌ったりすると、「あれ、剛? 光一?」って戸惑うことがある。不思議なもので、そういうときは似て聴こえるんです。

――コンビネーションの妙なんでしょうね。

武部 そこはジャニー喜多川さんの先見の明だと思います。あのふたりを組ませようと考えたことが、ジャニーさんの天才的なところですよ。

ジャニーズのアイドルたちの歌を聴いて、もしかしたら手厳しいことを言う人もいるかもしれません。だけど僕はそれぞれが魅力的なボーカリストだと思っています。

人前に出て人気を得るということは、それだけ人の心をつかめるということですよね。そこには技術とはまた違う観点から見た魅力があるはずです。

ジャニーズの場合、グループが多いのが特徴ですね。グループというのはソロと違い、全員で声を出したときのユニゾンの響きが気持ちいいかどうか、それが大きなポイントです。

SMAPにしても嵐にしても、5人で声を出したときのユニゾンの響きがすごくいい。その瞬間にSMAPの色、嵐の色ができあがります。

そういうものがグループならではの魅力じゃないでしょうか。そのメンバーの組合せを、ビジュアルだけでなく、歌や踊りも含めて考えたジャニーさんって本当にすごいですよね。