『ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男』|名作『ゴッドファーザー』の波乱に満ちた誕生秘話【今からでも間に合うネットドラマ|宇都宮秀幸】_1
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名作『ゴッドファーザー』の
波乱に満ちた誕生秘話

 映画製作の舞台裏というものは、往々にしてそれ自体がドラマティックなものだ。次々に発生する現実的な課題をクリアしなければ映画は生まれない。そしてその役割を担うのが、責任者であるプロデューサーという職種である。名作『ゴッドファーザー』の製作者で実在の人物アルバート・S・ラディを主人公にした『ジ・オファー〜』は、製作の裏側に秘められた実話をもとにしたドラマだ。マフィア映画はヒットしないと言われた’70年代、新米プロデューサーのラディはベストセラー小説『ゴッドファーザー』の映画化を命じられる。だがそこには、想像以上の困難が待ちかまえていた。


 当時落ち目で扱いにくい大スター、マーロン・ブランドの主演抜擢と、無名の新人アル・パチーノの起用を拒否するスタジオ側。少ない予算に反し、芸術作品としての質にこだわる気鋭の若手監督フランシス・フォード・コッポラの絶え間ない要求。さらには本物のマフィアからの脅迫など、ラディの悩みは尽きない。

 映画はアートであると同時に商品でありビジネスでもある。優れた作品を生もうと必死の監督ら現場サイドと、利益追求を第一とする会社サイドの間でラディは常に板挟みとなる。その苦悩は見ていて胃が痛くなるほどだが、一方で度胸と知性で問題を乗り越えていくラディの姿は痛快だ。今作の根底に流れているのは映画という大衆娯楽への信頼であり、観客を楽しませるためならどんな苦労もいとわない製作者たちの誇りや情熱にこそ、単なる実録ものではない感動がある。

 もちろん、当時のハリウッド映画界を至近距離でのぞき見る楽しさも魅力の一つ。コッポラ、ブランド、パチーノらを演じる俳優陣の驚きのソックリぶり、随所に登場するスターたちや有名人のエピソードには映画好きの方なら思わず笑みが漏れるだろう。また、映画製作と並行して描かれる現実のマフィア社会の過酷な世界は、作品に多層的な面白さをもたらしている。最後に、本家にオマージュを捧げた小ネタが多数あるので、未見の方は映画『ゴッドファーザー』を見たうえでの鑑賞をぜひおすすめしたい。

「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」
監督/デクスター・フレッチャーほか 出演/マイルズ・テラー、マシュー・グード、ダン・フォグラー、ジョヴァンニ・リビシ

『ゴッドファーザー』の製作過程に秘められたさまざまな困難を描く実話のドラマ化。主演は『トップガン マーヴェリック』のマイルズ・テラー。U-NEXT「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」全10話配信中。

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