――初めての主演映画『炎上シンデレラ』が、11月4日(金)に公開になります。
主演を務めさせていただくと決まった時は、正直嬉しさと驚きと同時に、不安もありました。モデルになりたくて熊本から上京して来て、そこに軸を置いて仕事をしてきたので、お芝居に対してはモデルの仕事ほど自信が持てないところもありました。
――プレッシャーを感じていた?
ものすごく(苦笑)。ただ、今回の作品は台本をいただいて、はい本番!という作り方ではなく、まず台本をいただいて次に監督さんとお会いして、色々とお話をさせていただく時間を設けていただいたんです。
――それは田中芽衣さんからの希望!? それとも尾崎将也監督の方針?
尾崎監督から新しい作り方をしたいというお話をいただきました。実際お会いした時に、出来上がった脚本に、私をイメージした当て書きを加えたいというお話をいただいて。セリフやシーンを改訂したり、クランクインの前にみんなで集まって…3週間くらいかな、稽古の時間があったんです。
――映画で稽古ですか? それは珍しいですね。
舞台では当たり前ですが、映画で稽古というのはすごく特殊だと思います。1シーン、1シーン、ほぼ全てのシーンを本番前に一度経験できたことで、初主演だとか私が頑張らなきゃとか、そういう変なプレッシャーからは解放されたような気がします。
――安心して本番に臨めた?
はい。それぞれがそれぞれの役をイメージして、自分の中でそのキャラクターを作り上げて本番に入るのではなく、稽古しながらみんなで話し合って役を作り上げていったので、そこはすごく安心材料になりました。
――ということは、脚本も最初のものとはかなり変わったんでしょうね。
だいぶというか、結構変わりましたね。半分くらいは変更になったと思います。
――例えば?
私が演じたみつほは、とても不思議な女の子で周りを振り回すんですけど、それをもっと大胆に、よりミステリアスさを出すために、元々あったセリフを削ったり、その逆でシーンによっては言葉を増やしたり…試行錯誤しながら、みんなで作り上げていきました。自分の中でも脚本や、みつほのイメージがどんどん膨らんでいきました。
――それは、今までにない感覚?
これまではセリフを覚えるのに一生懸命だったり、共演者の皆さんについていくのに必死すぎて(苦笑)まるで余裕がなかったんですが、今回みつほを演じながら、“私は今みつほになっている”と感じることが、何度もあって。それは稽古の時間を作っていただいたり、監督が私たち演者に寄り添って、話し合う時間をくださったりしたおかげだと思っています。

映画撮影中に大麻パーティで大炎上!? 映画「炎上シンデレラ」主演の田中芽衣に足りないものはあざとさ
映画を撮影中にスキャンダルを起こして大炎上、芸能界を追放されるみつほ役で映画初主演を果たしたモデルの田中芽衣に、撮影中のエピソードやみつほの魅力、役者として目指す場所など、ファッション誌では聞けない話をあれこれ聞いてみた。

映画で稽古?

負けないぞ精神
――映画の公式サイトで、「みつほの表情にも注目して欲しいなと思います」とコメントされていますが、これはどういう?
みつほは、言葉で感情を表すのではなく、表情や動きで自分の気持ちを表現するタイプの女の子なので、みつほの本心が今どこにあるのかを表現するために、表情の作り方だったり、目の動かし方、ちょっとした仕草にこだわりました。ぜひそこも見てほしいなと思いまして。
――みつほを演じていて難しかったのは、どういうところでしたか。
みつほが持っている、“あざとさ”をどう表現すればいいのかわからなくて。私自身に一番欠けている部分なので、それを自然に出すにはどうすればいいのか、ずいぶん悩みました。もしかするとそこに一番時間をかけたかもです。
――これだ!というのは見つかったんですか。
まずは、上目遣いです。これは結構、強力な武器になります(笑)。あとは、みつほの癖として、テーブルに座るときは、頬杖をついたりとか、ちょっと気だるそうにして見せるとか、時にはイタズラを思いついたように目をキラキラさせるとかですかね。私の普段の生活には活用できていませんが、スクリーンの中でちょっとでも出ていればいいなぁと思います(笑)。
――ここがみつほの魅力だ!というのを教えてください。
熱い情熱と冷徹な心を併せ持っていて。そのパワーがどちらも強いから、うまく制御できずに自分を持て余してしまうんですけど、それでも自分がやりたいことや目標とするものに対して、ものすごく情熱を持っている。何も考えていないように見せているけど、本人の中にはちゃんと信念がある。そういうところがすごく魅力的だと思います。
――全部計算しているようにも見えるし、純粋なだけのようにも感じます。
そこなんですよ! どっちもみつほらしい。きっと正解はなく謎は謎のままで。見てくださった方が、こっちだと思った方が正解なんだと思います。
――そういうところは、プライベートの田中芽衣さんと似ている?
“絶対に、負けないぞ精神”は似ていますね(笑)。そういう負けん気というか、熱量はみつほとリンクしている部分だと思います。
――撮影中のエピソードを教えてください。
飯島寛騎さんが演じた田代は、映画オタクの青年という、とてもキャラが際立った役で。ある意味みつほは、田代がいることで成立しているところがあります。田代さんと会った瞬間、私の中のみつほが目覚めるというか、スイッチが入る感じがあってそこがすごく面白かったですね。

後ろは振り返らない
――モデルであり、役者でもあり、ご自身で撮った写真で個展も開かれていますが、バランスを取るのは難しくないのですか。
それぞればらばらのようですが、私の中ではモデルも役者も写真を撮ることも、“表現する”というひとつの同じカテゴリーに入っていて。ダンスも歌も好きですし、全部が繋がっている感じがします。
――その中で一番自信があるのは?
これはもう間違いなくモデル業です。モデルになるために熊本から東京に出てきているので、そこに対する熱量は自分でもちょっとやりすぎかなと思うほど強くて(苦笑)。チャンスをいただけたらお芝居にもどんどん挑戦していきたいと思っていますが、軸はモデルの仕事です。
――仕事をしていく上で、大事にしているものを教えてください。
考えすぎたり、計算したりすると、絶対にうまくいかないタイプの人間なので(苦笑)、その場その場を楽しむことを大事にしています。
――後ろは振り返らない?
そうですね。終わったものは全てその場に置いてきて。はい次。はい次…という感じで、前だけをみて、歯切れ良くパンパンと切り替えている感じです。
――その過程で、ミスをした時は?
反省はします。同じミスを繰り返さないようにきちんと反省はしますけど…それを引きずることはないです。こういう言い方をすると、“炎上シンデレラ”になっちゃうかもしれないんですけど(笑)、引きずっている時間がもったいないなって思っちゃうんです。時間は戻ってこないので、引きずっている時間があったら前に進もうと。男っぽい性格なのかもしれません。
――役者として目指しているところがあったら教えていただけますか。
2018年に出演させていただいたショートフィルム『七年目の化石』がカンヌ映画祭に出品上映されカンヌまで行ったんですが、その時ものすごい刺激をいただいて。あの経験をもう一度味わってみたい、もう一度そこにいくために、私自身がそういう作品に関われるところにいたいという気持ちは持っています。
――これから演じてみたい役は?
みつほは、ニュアンスや表情での演技が大事だったのですが、次はもっともっと行動が際立った役…殺人犯とかヤンキーとか、自分とはまるでリンクしない役にも挑戦してみたいです。
――田中芽衣が選んだ◯◯な映画というテーマで、3作品を挙げるとしたら?
車という存在も車を運転する行為も大好きなので、『見るとリフレッシュされる映画』というテーマで、
『ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT』
『ベイビー・ドライバー』
『ソウル・バイブス』
この3本です。
劇中で流れるヒップホップ系の音楽も併せ、テンションはマックス。リフレッシュできるし、爽快な気持ちになります。

取材・文/工藤晋 撮影/石田荘一 スタイリスト/山田莉樹 ヘアメイク/長坂賢
衣装協力/EBONY(エボニー)・PLUIE(プリュイ)
『炎上シンデレラ』(2022)
監督・脚本:尾崎将也
出演:田中芽衣 飯島寛騎 横田真悠/大河内健太郎ほか 配給:キャンター
2022年11月4日(金)より池袋HUMAXシネマズほか全国順次ロードショー
https://cinderella-movie.jp/
衣装クレジット / ジャケット¥63,800、パンツ¥45,100/エボニー、ブーツ¥36,300/カルチェグラム(デュプレックス)ネックレス¥50,600、ブレスレット¥89,100、リング(人差し指)¥34,650、リング(中指)¥28,050/プリュイ(プリュイ トウキョウ)
問い合わせ先:エボニー/info@ebony00.com プリュイ トウキョウ/03-6450-5777
デュプレックス/03-5789-3109
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