1988年はアリッサ・ミラノの年だ。2月号で「うわさの美少女アリッサ・ミラノ」と特集が組まれたのち、3月号では初めて表紙を飾る。その後も、2度表紙に選出されており、前年女王のシンシア・ギブと3回タイで並んでいる。

1988年の顔は新星アリッサ・ミラノ。そして映画の見方に大きな変化がやってきた
黒い髪と瞳で日本人の心をわしづかみにしたのは、『コマンドー』のいたいけさが評判となったアリッサ・ミラノ。このころ、ビデオデッキ&レンタルビデオ店が普及して、見たい映画を(ほぼ)好きなときに見られる環境がようやく整った!
ロードショー COVER TALK #1988
アリッサ・ミラノVSシンシア・ギブ

この年も男性表紙は4月号のみ 1月号/ジェニファー・コネリー 2月号/シンシア・ギブ 3月号/アリッサ・ミラノ※初登場 4月号/リヴァー・フェニックス 5月号/シンシア・ギブ 6月号/ジェニファー・コネリー
©ロードショー1988年/集英社
1972年生まれのアリッサ・ミラノは、7歳でミュージカル舞台『アニー』に抜擢されたのち、米人気シチュエーションコメディ『Who’s the Boss?』(1984~1992)のレギュラーとなり、アメリカでティーン・アイドルとなった。12歳のときに出演した『コマンドー』(1985)でアーノルド・シュワルツェネッガーの娘役を演じ、日本でも人気に火がついた。歌手としても4枚のアルバムをリリースしている。
その後、キャリアが低迷するものの、TVドラマ『チャームド 魔女3姉妹』(1998~2006)で再ブレイクを果たしている。ちなみに、2017年に始まった#MeToo運動は、アリッサ・ミラノのツイートがきっかけだ。まさかこのときの少女が、その後、エンタメ業界を大きく揺るがすムーブメントを起こすとは想像もできなかった。
リヴァー・フェニックス人気も健在で、4月号で表紙を飾っている。リヴァー人気を当てこんで公開された『ジミー さよならのキスもしてくれない』、サスペンス映画『リトル・ニキータ』を経て、シドニー・ルメット監督の佳作『旅立ちの時』が公開(いずれも1988)。カリスマ俳優の少年から大人への成長をリアルタイムで追うことができた当時の読者は、なんと幸せだったことか。
1年間で倍増したレンタルビデオ店!
1988年の日本映画配給収入ランキングをみると、『敦煌』(1988/日中合作)が1位で、2位『ラストエンペラー』(1987/英中伊合作)、3位『ランボー3 怒りのアフガン』(1988/米)、4位『優駿』(1988/日本)、5位『危険な情事』(1987/米)と洋画に元気がない。『ロボコップ』や『フルメタル・ジャケット』『ウォール街』『太陽の帝国』『再会の街』『さよならゲーム』と、この年のラインナップは必ずしも悪くないが、老若男女にあまねくアピールする作品は少なかった。
その一方、「ロードショー」には1月号に「VIDEGON」という新コーナーが登場する。最新ビデオソフトを紹介するもので、レンタルビデオの普及に対応したものだ。

8・12月号には、前年登場がなかったフィービーが復活している 7月号/アリッサ・ミラノ 8月号/フィービー・ケイツ 9月号/シンシア・ギブ 10月号/ジェニファー・コネリー 11月号/アリッサ・ミラノ 12月号/フィービー・ケイツ
©ロードショー12月号/集英社
現代の若い読者には想像できないかもしれないが、かつての映画ファンは、旧作を見たければ、リバイバル館に行くか、TV放映を待つしかなかった。だが、ビデオデッキの登場とレンタルビデオ店の台頭で、家庭でも多様な映画作品を鑑賞できるようになったのだ。
日本映像ソフト協会(JVA)の資料によると、同団体の加盟店は1987年12月には4,748店舗だったのが、1年後の1988年12月には10,067店舗に倍増している(ピークは1990年の13,529店舗)。バブル景気でビデオデッキの世帯普及率が高まったことも影響しているだろう。
https://www.jva-net.or.jp/report/joiningshop.pdf
おそらく初めてレンタルビデオ店を訪れた当時の映画ファンは、その選択肢の多さに興奮を覚えつつも、圧倒されてしまったに違いない。そんな迷える読者たちのために、ロードショーはビデオ紹介コーナーを始めたのだ。もはや映画を提供する場所は、劇場やテレビだけではない。そんな時代の流れに軽やかに適応した「ロードショー」は見事だ。「VIDEGON」という名称はどうかと思うけれども。
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