下北沢は、東京でも“上級者”が集まるイメージ

ミュージカル界のプリンス井上芳雄が初めて降り立つ、聖地・本多劇場_1
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――舞台『しびれ雲』は下北沢の本多劇場で公演されます。井上さんご自身は下北沢や本多劇場にどんな印象を持っていますか?

下北沢自体が演劇の街というか、小劇場がたくさんありますし、劇団の方々が日夜しのぎを削っているイメージです。もちろん舞台を見に行ったことはあるんですが、どちらかと言うと、僕がやっているミュージカルは大きめの劇場で上演することが多いので、あまり馴染みはなかったです。同じ演劇ではありますけど、畑が違うと言いますか。踏み入れると怒られるのではないかという、ちょっとの緊張感と憧れのある街であり、劇場だなと思います。

――たしかに。ミュージカル作品といえば日比谷の帝国劇場。本多劇場のある下北沢と同じく、日比谷も演劇の街ですが、全く違う雰囲気です。

そうですね。本当は隔たり的なものはないほうがいいので、自分としてはあまり感じないようにしたいなと思いますし、役者としてステージに立つ上ではどこの劇場でも呼ばれれば行きます! 

見てくださる方々にはもちろん、お好みの演劇を見ていただければと思うんですけど、日本は同じ演劇ファンでも細分化されているのは確かですよね。宝塚ファンの方や劇団四季ファンの方など、結構細かいんです。もちろん何でもご覧になる方もいらっしゃって、素晴らしいなと思います。

ただ、意外と小劇場ファンとミュージカルファンは被っていなくて。小劇場ファンは下北沢に通い詰めるし、ミュージカルファンは日比谷に通い詰めるという傾向があると思います。それが悪いということではないです。どちらにも素晴らしい部分があるし、好みの違いもあるかと思います。でも、互いを知ってもらったり、両方を行き来して交わるというのも、素敵なことなんじゃないかなと思います!

ミュージカル界のプリンス井上芳雄が初めて降り立つ、聖地・本多劇場_2

――今回は井上さんが橋渡しの役目を果たすかもしれませんね!

両方向から行き来し合うきっかけになれば嬉しいですね。ミュージカルをやることが多いですけど、ストレートのお芝居をやるときには毎回思います。ごちゃごちゃになってくれればいいなって(笑)。

――下北沢は心の距離感で言うと近い・遠い、どちらでしょう?

いやぁ、僕は地方出身者(福岡県出身)なので、気軽に行けないというか。ちょっと迷いやすい街です。今は再開発で変わっているところもありますけど。東京の中でも上級者が集う感じがありますね。お店もたくさんありすぎて、どこに入ればいいのか……(笑)。

――では、観劇で訪れる以外は行かない街?

若い頃は舞台を観て、みんなでそのまま朝まで下北で飲むみたいなことはしてました。決して敷居が高いわけではないですけど、独特の雰囲気で個性的な人が集まるイメージ。

――居心地の良さといった点ではいかがですか?

ホッとするというよりも、強い個性への緊張感、みたいなものがあるかもしれないですね。

ミュージカル界のプリンス井上芳雄が初めて降り立つ、聖地・本多劇場_3


――井上さんがホッと息をつけるような場所はどんなところなんでしょう?

住んでみて印象が変わったのは西麻布です。実は以前に住んでいたことがあって。住みたかったというよりは、結果的に西麻布になっちゃった感じなんですけど……。長く住んでいた場所なので、そういう意味では落ち着く街ですね。

その前は亀有に住んでました。(母校の東京藝術)大学から通いやすかったのもあって。亀有は下町って感じがしますね。もうあんまり行くことはないですけど、行くとやっぱり懐かしいです。その後が西麻布なので極端ですよね。

――西麻布は実際住んでみると、どんな街でしたか?

昼間はすごく静かだし、おいしいお店もいっぱいあります。当時は一人暮らしだったので、スーパーもあって買い物に不便がなく住みやすかったです。