『座王』での通算勝利数261勝、優勝回数58回(2022年9月時点)。優勝回数2位のR藤本が通算15回であることを考えると、笑い飯・西田の成績が、いかに突出した数字であるかがわかるだろう。中でも、「大喜利」、「モノボケ」、「歌」といったお題での圧倒的な強さから、付いた異名は“鬼”。
以前からイベントなどで披露している高い大喜利力には定評があったが、『座王』に参加したことでその類まれなセンスが改めて実証された芸人のひとりと言える。
だが、そんな西田ですら、初参加の時点では『座王』の難しさを痛感することになった。
「最初はレギュラー放送になる前、特番時代に参加したんです。当時は観覧のお客さんもいたので(※コロナ禍前は、一般の観覧席を設けていた)、TV番組というよりもライブに近いなっていう印象がありましたね。『座王』で気が抜けないのは、大喜利イベントと違って、好きなもん(お題)ばっかり食べられないこと。何なら嫌いなものを強制的に食べさせられる(笑)。それが、難しいところですね」
事実、『座王』では「ギャグ」や「モノマネ」、「1分トーク」といった、普段の活動や笑い飯のテイストからは縁遠いお題にもチャレンジしなければならなかった。そこでも西田は持ち前の発想力を活かし、司会である千原ジュニアが机をバンバン叩くほどの爆笑をかっさらってきた。
「『座王』に出場するまで、ホンマにギャグなんか一回もやったことなかったですから(笑)。“モノマネ”で披露した顔マネ“秦の始皇帝”は、唯一、元々やったことがある持ちネタではあるんですけど、その場でフッと思い出して。そこからのバリエーションとかは、完全にその場での思いつきですね。しかもよく考えたら、あれはちゃんとしたモノマネでもなければギャグでもない(笑)。
お題の“歌”なんかも、基本的には2回しか聴けないので、そこで何も浮かばない場合は、“もう一度聴かせてください”とお願いすることもあります。その間に、持っていたエピソードをうまいこと利用して当てはめることもありますし、歌からネタが降りてくるような経験もありますね」

「結局、負けても面白い人が最強」――最強の男、笑い飯・西田が語る『座王』
千原ジュニアがMCを務めるバラエティ番組『座王』が生んだスターのひとりが、笑い飯・西田だ。『座王』の鬼と称される圧倒的強さを誇る彼の目線から、『座王』の歴史と魅力を語ってもらった。
『座王』の鬼、笑い飯・西田が語る番組の魅力

好きなものばっかり食べられないのが『座王』


プレイヤーとして参加している際の西田。200勝超えのみに許されるブラックビブスを着用
審査委員長として実感したジャッジの難しさ
『座王』に参加したことで、「街中でも、“『座王』見てるで”、と一般の方からよう言われますね」と、その影響力の大きさは肌で感じているという西田。250勝を超えたレジェンド級の活躍が評価され、プレイヤーとしていまだ現役でありながら、バトルをジャッジする審査委員長として出演する機会も増えてきた。そこで若手の能力に驚くこともあるそうだ。
「プレイヤーとして出るよりも、審査委員長の方が難しいですね。一応、自分の中には基準があって、笑いを取る手法が斬新だったりすればポイントは高いです。もちろん、自分が面白いと思った方が勝ち、というのは一番に考えていますけどね。
審査する立場で見ていても、『座王』に参加する若手の実力は上がってきているんじゃないかなと思いますよ。コンビだと、ツッコミやネタを書かない方って、普段は自分から何かを考えたり発想したりすることは少ないんですよ。でも、『座王』に出たらひとりでやらされるんでね」
“鬼”と呼ばれ、これまでは絶対王者として負けられないプレッシャーもあった、西田。だが最近は、いかにして勝つかに加えて、敗北をどのように笑いに転換するかも考えているという。
遡ること14年前、西田は2008年の『M-1グランプリ』で敗退が決定したとき、「思てたんと違う!」という名コメントを発して喝采を浴びた。あのときと同じように、爪痕の残し方は常に意識している。
「ずっと勝ち続けるなんて無理じゃないですか。その日の雰囲気っていうのがあって、何回か勝ち上がっていく間に“今日、ハマってるな~”という空気を作り出した人との対決は、どうしても分が悪くなる。例えば、ジョイマン・高木が流れを掴んでバーっと勢いがついたときなんか、こっちが何を言ってもアカンのですよ(笑)」

ドローのジャッジをする西田。プレイヤーの気持ちが痛いほどわかるだけに、なるべくドローにはしたくないのだという

ぼる塾・はるかとの対決は、百戦錬磨の西田をして「どうすればいいのか」と悩んだという
負けたときに面白くなることを考える
勝ち続けるのは無理――そう考えるきっかけの回として、これまでの笑いのセオリーに縛られないぼる塾・はるかとの対戦を挙げる。千原ジュニアをして、「我々とものさしの単位が違う」と評するはるかと、西田は#155の決勝戦、お題「ギャグ」で対戦した。はるかの勢いを見て、西田は自身のフィールドに持っていくのではなく、敢えてはるかのテイストに寄せるという奇策に出て、勝利を得た。
「ぼる塾のはるちゃん(はるか)と決勝で当たって、しかもお題が“ギャグ”だったんですよ。向こうに流れが来てたし、“これはどうしようもないな”と最初は思いました(笑)。あのときははるちゃんのギャグに乗っかる形で勝ったんですけど……そういうときはもう、負けたときにより現場が面白くならへんかなと考えることもあります。負けても面白い人が『座王』では最強やと思うんで」
もはや300勝も迫ってきた西田は、まだまだプレイヤーとしても高いモチベーションを保っている。それは、芸人としての進化や成長をまだまだ求めているからだ。
「プレイヤーとしての立場だと、面白い人が集まってほしくない気持ちもあります(笑)。でも、面白い人と対戦した方が、負けるときもスコンと自分が納得して負けられる。だから『座王』には、これからもいろんなジャンルの芸人に参加してもらいたいですね。やっぱりそれが刺激になるので」

『座王』のMCであり企画発案者・千原ジュニアのインタビューはこちらから!
前編 「お笑い番組の減少には危機感しかない」-関西ローカル『座王』に託した千原ジュニアの思い はこちら
後編 「東の『笑点』、西の『座王』になれれば」-千原ジュニアが明かすバトルではなくお笑い番組としての『座王』の野望 はこちら
取材・文/森樹 撮影/松木宏祐
「千原ジュニアの座王」

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座王 全国ネットSP 放送決定!
10月18日(火)21時~22時48分放送
笑いの総合格闘技!千原ジュニアの座王 2時間SP


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