ちょっと前に『ジンギス談!』(北海道放送)を見ていてハッとした。
地元北海道出身のタカアンドトシをホストに、毎回ゲストを呼びトークをするこの番組。その日のゲストは、なすなかにしだった。
その名の通り、なすなかにしは那須と中西の二人組なのだが、彼らは個人の名前をよく間違えられるという。
「僕が那須で、相方が中西なんですけど、那須が中西顔で、中西が那須顔なので逆に思われるみたいです」
そう言われて、ふと我に返った。その瞬間まで私も全く逆に覚えていたのだ。
いとこ同士で顔も声も比較的同系統のなすなかにし。ツッコミで目が大きく昭和の男前な感じが那須で、ボケでメガネをかけていて比較的ふくよかな方が中西である。
しかし中西は体型といい、ちょっとヘタっぽい髪型といい、なんとなく野菜のナスを思わせる風貌である。あれ、こちらがナスっぽいから那須だよねと思うと中西なのだ。ややこしい。
『ジンギス談!』の同回では、タカアンドトシも未だに間違えられると話していた。
別々にロケをしている際、トシが歩いていると「タカさん」と声をかけられることが多く、最初は「トシですー」と訂正していたものの途中から面倒になり「ええ、へへへ」と愛想笑いをするようになったとのこと。
タカアンドトシは1994年結成で芸歴は30年近い。これだけテレビに出ていてもなお、まだタカとトシを間違えられることがあるのだ。
今回は、こういう間違えやすい例について考えるとともに、これを機にしっかりどちらがどちらかを覚え直したい。そう思う次第である。

なすなかにし、タカアンドトシ…アナタも間違えている? コンビ芸人「どっちがどっち」問題
名前の覚え間違いは誰にでもあること。しかし知っているはずのコンビ芸人の顔と名前が一致しなかった場合は、皆さん「エッそうだっけ!」と驚かれるのではないだろうか。なすなかにし、タカアンドトシといった名前が並んでいるコンビだけでなく、それぞれの個性が際立っている鬼越トマホークに対しても、我々が陥ってしまう「どっちがどっち」問題。テレビ番組に関する記事を多数執筆する、ライターの前川ヤスタカが、さまざまなケースを検証する。
“名前の並びや立ち位置にミスリードされる問題”を検証
芸歴30年近くでも間違えられる現実
間違いを呼びこんでしまう構造的問題
タカトシやなすなかが間違えられるのは、彼ら個人のせいなのだろうか。いや違う。これはたぶん構造的問題である。
二組の共通点は、
(1)名前が並んでいるコンビ名である
(2)ソロ活動は少なく基本コンビで活動する
ということだ。この条件が揃うと二人セットで覚えてしまうため、どちらがどちらなのかをあまり気にすることがなくなってしまうのだ。
芸歴だとか、外見が似てる似てないはあまり関係ない。現に「今くるよ」でネット検索すると「今くるよ 死亡」とキーワードが提案される。
ちょっと待て、くるよ師匠は存命だ。2015年に亡くなられたのはいくよ師匠の方である。縁起でもない。
今いくよ・くるよのコンビでの活動期間は1970年から実に45年。痩せてまつ毛ばっちりメイクなのがいくよ師匠、ふくよかで(最近だいぶ痩せられましたが)「どやさー」と言っているのがくるよ師匠である。
たとえ師匠クラスであろうとも、名前が並び、コンビで活動する機会が多いとどちらがどちらか曖昧になってしまうのである(ちなみにコンビ名の「今いくよ・くるよ」で検索しようとすると「どっち」とキーワードが提案される。やはり皆分からなくなっている)。
「おぼん・こぼん、どっち?」を答えられる?
とくに昔の漫才師はこの原則に当てはまる人が多い。
いとし・こいし(夢路いとし・喜味こいし)、中田ダイマル・ラケットなんかもそうだし、横山たかし・ひろし、青空球児・好児、大木こだま・ひびきなど、挙げ出したらキリがない。
これらのコンビ名をネットで検索しようとするたびに「どっち」が予測変換キーワードとして提案される。
ちなみに、最近『水曜日のダウンタウン』(TBS)で再び脚光を浴びた、おぼん・こぼん。どちらがおぼんさんで、どちらがこぼんさんか皆さんは答えられるだろうか。
おぼん・こぼんについてはちゃんと公式な覚え方=命名由来があり、大きいボンボンがおぼん、小さいボンボンがこぼんなので、身長で分かるという算段である。これでもう皆さんは「どっち」と検索しなくてもいい。
姉妹の場合、先に来るのは姉?妹?
このパターンでトリッキーなのは「やすとも 」こと海原やすよ ともこである。
姉妹コンビとして関西では抜群の知名度を誇るやすとも 。姉妹なのだから、当然姉の方が先に来ると思いきや、妹の方が先なのだ。
身長が高く前田耕陽と結婚しているのが姉の「ともこ」で、ツッコミで元オリックスの宮本投手と結婚しているのが「やすよ」である。
中田ボタンへの師事が早かったから「やすよ」が先になっているとWikipediaには書いてあるが、過去の雑誌のインタビューでは、当初あまり漫才に乗り気ではなかったやすよのために、やすよの方を先にしたというような話もあった。まあ諸説有りということで。
ちなみに上沼恵美子も昔、姉妹漫才「海原千里・万里」の千里だったが、彼女の方が妹である。そう考えると我々の「普通は姉の方が先でしょう」の方が誤解なのかもしれない。
先に名前が来ると立ち位置は向かって左?
漫才コンビの場合は「立ち位置も関係しそうな気がしてしまう」というのも、話をややこしくしている。
日本人の文章横書きの習性から、向かって左に立っている方が先で、右に立っている方が後のような気がする。もしこの法則が正しければ、漫才をしている写真を見るだけで正確に把握することができる。
そんなことを思い、ここまで出たコンビ名を検証してみたが、こんな感じである。
◯ タカ(左)トシ(右)
× なす(右)なかにし(左)
× いくよ(右)くるよ(左)
× おぼん(右)こぼん(左)
◯ やすよ(左)ともこ(右)
うむ、全然法則性がない。むしろ名前で先に来る方が右のパターンの方が多いくらいで攪乱要因だ。
しかし、名前が並ぶコンビ名だと必ず区別がつきにくいのかというとそんなことはない。コンビ活動よりソロ活動が多い場合や、コンビでも一人一人のキャラが立っている場合は、ちゃんと区別がつくようになっていく。
品川庄司、おぎやはぎ、ますだおかだ、クワバタオハラなどは、もうあまり「どっち」とは思われなくなっている代表例だろう。さらに言えば、ウッチャンナンチャンをどっちがウッチャン?という人ももはやいないし、横山やすし・きよしもオール阪神・巨人も然りである。
なすなかにしがよく間違えられるのは、那須顔だからとか中西顔だからではなく、いつも一緒にいてコンビ芸をしているからなのだ。多分。
見た目のインパクトに引っ張られる勘違い
ここまで、どちらがどちらか分からない例をたくさん見てきたが、それとは全く違う理由でよく間違われるコンビがある。鬼越トマホークである。
鬼越トマホークは「坂井良多」と「金ちゃん」のコンビ。スキンヘッドで髭の方が坂井で、パーマで黒スーツの方が金ちゃんである。しかし逆だと勘違いしている人がものすごく多い。本人たちもラジオなどで嘆いているのでよほど間違えられるのだろう。
これはおそらく「インパクトの強い外見をしている方が、インパクトの強い名前に違いない」という思い込みから来ている。
今年度キングオブコントの決勝にも進出したコットン(旧名ラフレクラン)は西村ときょんのコンビだが、どちらがきょん?と聞かれたら、コットンを知らない人でも正しく指さすことだろう。
トリオだが、ネルソンズの3人の写真を出して和田まんじゅうはどれ?と聞いても多分ほとんどの人が答えられる。
そういう法則から考えて、まさか金ちゃんがあちらとは思わないのだ。難しい。

「名前だけでも覚えて帰ってください」の先へ
漫才コンビがよく言う「名前だけでも覚えて帰ってください」。もちろんコンビ名を覚えてもらえれば、一旦のところそれで十分なのだろうが、せっかく芸の世界に入ったなら個人としても覚えてもらいたいもの。
しかし、これまで散々考えてきたように、ある一定のパターンに陥ると、個人として世間から正しく認識されにくくなる。
それが主因かはわからないが、「二人の名前を並べたコンビ名」は年々減っている気がする。
この文章でまだ触れていない有名どころは、テツandトモ、宮下草薙、オダウエダくらいだろうか。
テツandトモについてはそもそもジャージの色も違うし、役割も全然違う。飛び跳ねるやつと、ギターを持って歌うやつだ。しかし検索しようとすると「テツandトモ どっち」は今日も提案される。
赤い方がテツ、青い方がトモである。
今日はそれだけでも覚えて帰ってください。
文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太
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