『恋愛小説家』(1997) As Good As It Gets 上映時間:2時間18分/アメリカ
監督:ジェームズ・L・ブルックス
出演:ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハントほか

『桜のような僕の恋人』の大人気恋愛小説家・宇山佳佑が選ぶ珠玉の恋愛映画10本
現在Netflixで好評配信中の映画『桜のような僕の恋人』の原作者である宇山佳佑さんは、泣ける恋愛小説の名手にして脚本家としての顔も…。学生時代にレンタルビデオ屋さんでアルバイトをしていた時期があるそうで、その頃に出会った映画は、作家人生に大きな影響を与えたとも。そんな大人気恋愛小説家が選ぶ珠玉の恋愛映画10本をご紹介!
ジャック・ニコルソンが演じる恋愛小説家は、潔癖症で毒舌家で嫌われ者の変人ですが、個人的にそういう作家に憧れがあるんです。偏屈な男が恋愛を通じていい人間になっていく、その変化の物語としてとても良くできているし、マンションの隣人である画家を含め、周りの配役も非常にハートウォーミングでいいですよね。印象的だったのは、「君に会ってから僕はもっといい人間になりたくなった」という台詞。その一言があることで、この物語がぐっと魅力的なものになっていると思います。

Album/アフロ
『きみに読む物語』(2004)The Notebook 上映時間:2時間3分/アメリカ
監督:ニック・カサベテス
出演:ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムスほか
恋愛映画の王道ですが、とにかくライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが素敵なんです。誰もいない夜の道路の真ん中で二人が寝転がって空を見上げるシーンは、大学時代に僕も真似したいと思ったくらい。ラストに待ち受けるサプライズも含めて、本当にいいストーリーだと思いました。こういった、人の生涯を描く物語、大好きです。
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)Forrest Gump 上映時間:2時間22分/アメリカ
監督:ロバート・ゼメキス
出演:トム・ハンクス、サリー・フィールド、ロビン・ライトほか
人生を描いた映画ではありますが、自分の中で恋愛映画にくくっているのがこの作品。中学の頃に初めて見て以来、折に触れて見返しています。特に好きなのが、トム・ハンクス演じるフォレストが、子供の頃から思いを寄せてきた最愛のジェニーに、ベトナムで見た星空や砂漠に沈む夕日など、これまでに見てきた風景について語るシーン。「一緒にそこにいたかったわ」というジェニーに対して、「君も一緒だったよ」とフォレストが言うセリフは、思い出すだけでも泣きそうになってしまいます。映画を見て「いい台詞だな」と思ったのは、これが初めてかもしれません。

AFLO
『ノッティングヒルの恋人』(1999)Notting Hill 上映時間:2時間3分/イギリス・アメリカ
監督:ロジャー・ミッシェル
出演:ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラントほか
書店を営むバツイチ男ウィリアムと、ハリウッドのスター女優アナの恋を描いた物語で、かなりハマりました。特に好きなのはラストシーン。イギリスでの映画撮影が終わったアナがホテルで記者会見をするのですが、記者として紛れ込んだウィリアムが大勢の前でプロポーズをし、そこからエルヴィス・コステロが歌う主題歌の「She」が流れる……。あの一連の流れは大好きです。『ローマの休日』にオマージュを捧げていますが、最後に二人が結ばれるところが現代的ですよね。
『或る夜の出来事』(1934)It Happened One Night 上映時間:1時間45分/アメリカ
監督:フランク・キャプラ
出演:クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベールほか
ニューヨーク行きのバスで偶然出会った大富豪の娘エリーと失業中の新聞記者ピーターのロマンスを描いたコメディの傑作で、その後の多くの映画に影響を与えたと言われています。大学時代に受けた映画の授業で、先生におすすめしていただきました。二人がひとつの部屋で寝るときに「ここから入らないように」とシーツで境界線を作ったり、女の子が足をちらっと見せたことでヒッチハイクがうまくいったりと、現代のラブコメなどでもよく見るシチュエーションの宝庫。二人の掛け合いが本当にチャーミングです。

mptvimages/アフロ
『街の灯』(1931)City Lights 上映時間:1時間27分/アメリカ
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、バージニア・チェリルほか
チャップリン演じる主人公のホームレスが、目の見えない女の子に恋をするサイレント映画です。女の子を救うためにボクシングの試合に出場するなどしてお金を手に入れ、無事に女の子は手術により視力を回復。ラストシーンでボロボロの服を着たみすぼらしい姿のチャップリンを見て、「あなたなの?」と女の子がハッと気づくところで終わります。その表情がなんとも言えなくて、バイト先の先輩と、二人は幸せになるのか、それとも女の子はがっかりしたのか論争になったんです。僕はハッピーエンド厨なので、幸せになったと信じています。最後まで明確な答えを提示しないのは、サイレント映画ならでは。

©Capital Pictures/amanaimages
『耳をすませば』(1995) 上映時間:1時間51分/日本
監督:近藤喜文
声の出演:本名陽子、高橋一生ほか
中学生の頃に友達と映画館に見に行ったのですが、甘酸っぱい青春や初恋の初々しさが印象的で、今でも1年に1回は見たくなる作品です。ヒロインの月島雫は小説家になるのが夢ですが、自分が書いた物語が果たして面白いのかどうかわからないし、母親からは普通の高校に行きなさいなどと言われている。僕自身も学生時代、親に脚本家になりたいと伝えたら「そんなバカなこと言ってんじゃない」と言われたりもしていたので、ヒロインの気持ちがすごくわかるんです。そういう意味では、自分自身の過去を思い出す物語でもあります。
『ひまわり』(1970)Igirasoli 上映時間:1時間47分/伊・仏・米・ソビエト連邦
監督:ビットリオ・デ・シーカ
出演:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニほか
戦争によって引き裂かれた男女の愛を描いた、悲恋中の悲恋。抗えない大きな力や理不尽なものに翻弄される物語は本当に切ないですし、個人的にすごく惹かれるテーマです。ヒロインを演じたソフィア・ローレンも大好きですし、ヘンリー・マンシーニの音楽も最高。流れるだけで切ない気持ちになる劇伴は、人生のベスト5に入るくらいお気に入りです。

Everett Collection/アフロ
『いま、会いにゆきます』(2004)上映時間:1時間59分/日本
監督:土井裕泰
出演:竹内結子、中村獅童ほか
日本の恋愛映画の中で一番好きな作品。死んだはずの妻が夫と息子の前に現れるファンタジーです。脚本家を目指していた頃、2時間のお話を書くコンクールに挑戦していたのですが、この映画の展開や台詞を書き出して自分なりに脚本を研究していたくらい。過去と現在が交錯するバランスも絶妙だし、物語として驚きも感動もある。脚本家の勉強をする上で、教科書にさせていただきました。
『ビューティー・インサイド』(2015)뷰티 인사이드 上映時間:2時間7分/韓国
監督:ペク・ジョンヨル
出演:ハン・ヒョジュ、キム・デミョン、パク・ソジュンほか
目が覚めるたびに人種も性別も年齢も違うさまざまな容姿になってしまう男性が主人公の物語。一目惚れしたヒロインをイケメンの状態でデートに誘って成功する主人公ですが、同じ姿でいるために3日間徹夜をしたため、うっかり電車で寝てしまい、起きるとおじさんの姿になってしまうんです。この映画は脚本家になってから、たまたま新宿の映画館で見たのですが、アイディアが秀逸で作家として「やられた」と悔しさを感じました。自分もこんな設定で物語を書きたかったと思うくらい本当に素晴らしい作品。もしも日本でリメイクするなら、僕が脚本を担当したいです。

©Everett Collection/amanaimages
撮影/石田壮一 取材・文/松山梢
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