「どんな場所でも、本当のことを表現したい」――『グッバイ・クルエル・ワールド』で西島秀俊が演じた「人間の業」_1

破滅へと向かう人間の業を表現したい

――今回『グッバイ・クルエル・ワールド』のオファーを受けた理由は?

大森監督の作品はずっと観ていて、俳優さんたちがほかの作品とは何か違う生々しい演技をされているので、ぜひ自分も参加したいと思っていました。プロデューサーの甲斐(真樹)さんや、脚本の高田(亮)さんとご一緒したかったのも大きな理由のひとつです。

「どんな場所でも、本当のことを表現したい」――『グッバイ・クルエル・ワールド』で西島秀俊が演じた「人間の業」_2

――西島さんは、今回の安西という人物をどう解釈して役作りをしたのでしょうか。

安西は、真っ当であろうとするけども、自分の中にある業のためにどうしてもそうはいかなくて。過去を断ち切って真っ当に生きようと思っても、自分の過去に追いつかれてしまう。大森監督からは、自分のことだけを考えているわけではなく、いろんなものを背負っている人物ということは言われましたね。

――安西は、妻子との生活を立て直そうとする人のよさもあり、でも破滅に向かってしまうんだろうという不穏さを感じました。彼の秘めた破滅性はどう表現されたのでしょうか?

たとえば街の人たちに疎外されるときも、周りが悪いように見えても、結局は本人の中にある性質によって破滅に向かってしまう。そういう彼の中にある業をしっかり表現したいと思いました。

ただ、昔はそれでも生きていけてたような人たちが、現代では居場所がなく生きられなくなっていることもこの作品の側面のひとつだと思っていて、そこも大事にしました。この映画は群像劇で全員が主役ですけど、世代の違う登場人物たちが、それぞれ世の中での居場所をなくしてああいう行動に出る、そういうお話だと思います。