この夏にピッタリの映画ジャンルといえば! サメ! 青春ドラマ! そして……ホラー! キンキンに肝を冷やすホラー映画こそ、暑さ対策にはもってこいだろう。というわけで今回は、話題作からマイナータイトルまで、ホラー映画を5本紹介させていただきたい。なお今回各作品を紹介するにあたって、ランキング形式を取っているが、これはあくまで「個人的にオススメしたい順」であり、決して作品間の優劣を意味するものではない点にご注意願いたい。
猛暑も凍てつく! サブスク配信中の「最恐ホラー映画」ベスト5
暑い夏、肝を冷やすホラー映画を! 現在、サブスクの配信で観られるホラー映画の中から最恐5作を知的風ハット氏が紹介する。
ニコラス・ケイジの圧倒的暴力性
第5位:『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021年)

一本目は、このところSNS上で話題沸騰中のホラー映画、『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021年)。「今や廃墟と化した、いわくつきの娯楽施設“ウィリーズ・ワンダーランド”の清掃作業を命じられた主人公が、謎の殺人ロボットひしめく園内で、怪異と衝突する」という一本だ。
大人気ホラーゲーム『Five Nights at Freddy's』、名作ホラー映画『チャイルド・プレイ』(1988年)に酷似したシチュエーションが目を引くが、本作とそれら先駆者らとの間にはひとつ、決定的に異なる点が存在する。主人公の強さだ。
かのニコラス・ケイジが演じる本作の主人公は、劇中でほぼ一切の台詞を発さず、ただ黙々と清掃作業をこなし、定期的に小休止を挟んでは再び業務を続ける、およそ殺人ロボット以上に機械的な男。
そして、めちゃくちゃ強い。それはもう強い。殺人ロボットよりも圧倒的に強い。
登場する殺人ロボットの大半は、“ただの無口な清掃作業員”ニコラス・ケイジの腕力で、一方的に破壊されていく(たまに善戦するロボもいる)。本作はそんなニコラス・ケイジの圧倒的暴力性が見所の、痛快エンタメ・ホラーなのだ。
まあニコラス・ケイジが出てこないパートは逆にいまひとつ薄味だったりもするのだが、ロクな台詞もないのにキャラ立ちしまくっている彼の腕っぷしはやはり魅力的。個人的には気に入っている。
第4位:『テリファー』(2016年)

ここらでちょっぴりマイナー寄りかつクセが強いものを。デイミアン・レオーネという監督の猟奇的スプラッター映画、『テリファー』(2016年)だ。
実はこの監督の前作である『THE MUMMY VS FRANKENSTEIN マミーVSフランケンシュタイン』(2015年)が、(大変失礼ながら)決して褒められたものではない出来栄えだったため、続く本作はリリース当時、必然的に警戒しなければならなかった。
が、蓋を開けてみればその内容は、「万人ウケは絶対にしないものの、意外とアリ!!」。
ストーリーは至ってシンプルであり、「いきなり町に現れた謎のピエロが、目についた通行人たちを、とにかく見境なくあの手この手でただ惨殺しまくる」という悪趣味さ全開の筋書き。ドラマ性とは無縁の、スナッフビデオめいた代物であり、映像は極めてグロテスク。
血まみれドッバドバの殺戮シーンという山場を除き、脚本的にはヤマもタニもほとんどあったものではない。が、その残酷表現に特化したシンプルさゆえに本作、スプラッター・ホラーとしてはまともに観られるものとなっている。やっていることの凄惨さに反して、妙にユーモラスで感情表現豊かな殺人ピエロのキャラクターもグッド。
ただし、繰り返しになるが、絶対に観る人を選ぶので、スプラッター映画好きにのみオススメしておこう。
第3位:『アオラレ』(2020年)

引き続きご紹介したいホラー映画は、ラッセル・クロウ主演の『アオラレ』(2020年)。
「不運続きでイライラしていたシングルマザーの美容師が、通勤ラッシュ中たまたま出くわした車相手につい口論を行ってしまったことから、そのサイコ運転手につけ狙われてしまう」というロードレイジ・ホラー。
趣向としてはスティーブン・スピルバーグ監督作『激突!』(1971年)に近いところがあるものの、こちらは若干社会派かつ、主人公側の非もそれなりに大きめ。その他、最初から最後まで相手の顔が見えない『激突!』とは異なる。
こちらは「サイコ運転手が最初からはっきり顔出ししている」「なまじ直接顔を合わせ、お互いイライラ状態で対話してしまったからこそ、ちょっとした口論がヒートアップし大事件にまで発展することとなる」点で差別化に成功している。
大勢の無関係な人々を巻き込み、ときには殺しに手を染めながら主人公を追うサイコ運転手の異常性は言うまでもないが、一方で主人公も大概好戦的な気質。そもそも、もめごとの発端は主人公が過剰にクラクションを鳴らし、相手車両と不必要に敵対してしまったせい。そしてそんな主人公およびサイコ運転手の余裕のなさの原因は、渋滞のほか離婚調停やら仕事やらといった諸事情で追い詰められていたため。
雑に結論を出すならば「このストレス社会が悪い」ということになるのだろうが、意外にも本作の問題は根深い。
第2位:『呪詛』(2022年)

近頃インターネットで大評判のNetflixホラーといえば、やはり『呪詛』(2022年)は外せない。「6年前、とあるカルト信仰の村でタブーを破り、その身に呪いを受けてしまった女性が、その後、最愛の我が子を呪いから守るために再びその元凶と対峙する」というのがおおまかなストーリー。
実際には、6年前と現在の話の時系列が頻繁に前後したり、主人公が私たち“視聴者”に語りかけるような作りだったり、その他劇中にある仕掛けが用意されているなど、けっこう込み入った内容ではある。
「ちょっとしたミステリー要素を含む」その本編はかなり面白く、ホラー映画慣れしている人にとっては、怖さよりも脚本の純粋な魅力にひかれてグイグイ見入ってしまうことだろう。中盤以降からはジャンプ・スケア(びっくり演出)が目立ち始めるが、宗教施設のセットや小道具などの美術の良さもあってか、決して安っぽい印象はない。
雰囲気的には『リング』(1986年)に『ノロイ』(2005年)と『ミッドサマー』(2019年)を足したかのような、いろんなホラー映画のいいとこ取りセットのような作風。
「『シライサン』(2019年)に似ている」「いや『コンジアム』(2018年)に似ている」といった意見もSNS上には多く出回っており、とにもかくにも様々なホラーの長所を上手にミックスしつつ独自のモノに落とし込んでいる、アジア・ホラーの秀作だ。
第1位:『ウィッチサマー』(2020年)

最後のイチオシは『ウィッチサマー』(2020年)。
「離婚中の父の家に住むこととなった、主人公の少年。彼は隣人一家の奇行を訝しみ、その様子を観察する。実はその隣人、森の魔女のまじないで正気を失い、幼い我が子を食い殺されてしまっていたのだ。次第に魔女の狙いは、主人公へと向けられ……」という、ホーム・インベージョン系の物語。
“魔女”とはいったが、決してとんがり帽子に黒いローブなどといった格好はしておらず、むしろゾンビ+ゴブリンみたいなクリーチャー風のスタイルをしている。
そんな魔女が「ちっちゃなお子さまから赤ちゃんまで、善良な人々をかなり容赦なく食い殺していく」点、そして「ごく平凡な主人公の青春を、血生臭い非日常がジワジワ侵食し取り込まんとする薄気味悪さ」が恐怖ポイントだ。
多少強引な展開もあるとはいえ、基本的にはじっくり堅実に話を進めつつ、最後にはあっと驚くどんでん返しもいくつか控えているなど、非常に優等生的な作りが特徴。大作・話題作とは言い難いマイナー寄りの作品でありながらその出来がよく、なかなかにとっつきやすい、正統派のホラー映画である。
以上が、今回のオススメだ。2022年7月現在、どの作品も何かしらの動画配信サービスで鑑賞可能なため、お時間に余裕のある方はぜひともお探し&お試しいただきたい。
文/知的風ハット