1972年に産声をあげた「ロードショー」の滑り出しが好調だったことは、翌年1月号の表紙からも明らかだ。神々しいほほえみをたたえたオードリー・ヘプバーンの表紙には、「定価据え置き大増ページ! 躍進デラックス新年号」と書かれている。キャッチコピーも、創刊年の「感じる洋画雑誌」から「洋画雑誌のNo.1」に変更。洋画雑誌という比較的新しい雑誌カテゴリーにおいて、すでにトップに立っているのだ。
さて、この年の人気スターは誰か?
表紙は、ヘプバーンのあとに、キャサリン・ロス(2月号)、ナタリー・ドロン(3月号)、ジョアンナ・シムカス(4月号)、カトリーヌ・ドヌーヴ(5月号)、ジャクリーン・ビセット(6月号)、オリヴィア・ハッセー(7月号)、アラン・ドロン(8月号)、ドヌーヴ(9月号)、キャサリン・ロス(10月号)、ドミニク・サンダ(11月号)、オードリー(12月号)と続いている。
ヘプバーンが1972年の年始と年末を飾り、創刊号の顔だったドヌーヴも創刊1周年記念特大号と、9月号と2度表紙を飾っている。表紙に選ばれたスターを見る限り、ふたりの大女優がロードショーを牽引しているように映る。
だが、内容を確認すると、特定の俳優の特集が頻繁に組まれていることに気づく。それは、8月号で男性として初めて表紙を飾ったアラン・ドロンだ。

創刊初期の「ロードショー」を支えた“世紀の二枚目”アラン・ドロン
「ロードショー」の表紙から見えてくる世相や流行を解説する本シリーズ。創刊2年目の1973年も、ドヌーヴとヘプバーンはじめ美女たちがカバーを飾っている。しかしその中に男性がひとり…この美男子こそ、最盛期の活躍を誇り、毎号必ず特集が組まれていたフランスの名優アラン・ドロンだった!
ロードショー COVER TALK #1973
ドヌーヴVSオードリーの陰に…

©ロードショー1973年/集英社
日本にアラン・ドロン情報を届け続ける
「カラー特報/アラン・ドロン衝撃のベッドシーン!」(1月号)にはじまり、「特別レポート/ドロン&ドヌーブの知られざる素顔」(2月号)、「特別付録 男優ベスト1カラーポスター/アラン・ドロン」(3月号)、「1周年記念企画 アラン・ドロンのカラーレコード」(5月号、6月号)、「ワイド特集 アラン・ドロンの新作5篇を全紹介!」(7月号)、「大特集/アラン・ドロンのジュネーブ〜パリ最新取材特報!」(8月号)、「グラフ特集/アラン・ドロンの5つの顔」(9月号)、「ワイド特集/アラン・ドロンの近況と魅力」「アラン・ドロンのサイン入りオリジナルパネル」(10月号)、「新連載『アラン・ドロン その知られざる38年』」(11月号)「版権独占! 『人間アラン・ドロン』 ジャン・マルシリー取材」(12月号)と、ほぼ毎号において何らかの特集が組まれているのだ。
1935年生まれのアラン・ドロンは、『女が事件にからむ時』(1957)でデビューを果たし、『太陽がいっぱい』(1960)で世界的なスターとなった。その後、『若者のすべて』(1960)、『太陽はひとりぼっち』(1962)、『山猫』(1963)、『テキサス』(1966)、『冒険者たち』(1967)、『サムライ』(1967)、『さらば友よ』(1968)、『ボルサリーノ』(1970)、『レッド・サン』(1971)といった作品が公開されており、「絶世の美男子」「世紀の二枚目」として知られていた。
ちょうど「ロードショー」が創刊された1972年は『暗殺者のメロディ』『リスボン特急』『ショック療法』『高校教師』、翌73年には『スコルピオ』『暗黒街のふたり』『燃えつきた納屋』『ビッグ・ガン』に出演するなど、俳優として精力的に活動していたこともあって、双方にとってウィンウィンの関係だったと言えよう。
その後、人気はますます高まり、80年代にはドロンと会食するパリ観光ツアーが組まれたほどだ。アラン・ドロンのグラビアと肉声をコンスタントに届けていた「ロードショー」が果たした役割は計り知れない。

©ロードショー1973年/集英社
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