筆者はソシャゲ内ギルド(チームのようなもの)でリーダーを務め、そのゲームの世界においては荒くれ者どもを率いる一大ギルドの長である。メンバーからは「boss」や「cap」などと呼ばれていて、大変気持ちよい。そんな心地いいギルドの運営を維持するため、筆者は月間5000~6000円の課金をしている。
廃課金にソシャゲ不倫!? 1年間やりこんでわかったソシャゲの闇
コロナ禍で在宅時間が増え、ソーシャルゲーム(ソシャゲ)への重課金・廃課金が深刻になっている。この1年間で急激にハマった筆者が見聞きしたソシャゲの闇の実態を紹介する。
年間総額10万円くらい課金して気づいたこと

それを約1年間続けて、ストレスが溜まった月は1万円を課金することもある。なので、年間総額10万円くらいは納めている計算である。改めて数字にしてみると我ながらなかなかいっている。
同じギルドのメンバーが使った金額を詳細に把握できるわけではないが、メンバー同士で課金額の話題になると、「先月は5万円……」「用意しておいた10万円があっという間に……」などという声が漏れ聞こえてくる。
筆者がプレイしているゲームは『ロードモバイル』というタイトルで、とりわけ課金が盛んなタイトルといわれている。筆者のギルド内でも課金強者は私の数倍もの金額を使い込んでいる印象だが、これを遥かに凌駕する課金額とおぼしきギルドやプレイヤーは世の中にたくさん存在する。
筆者はメンバーが課金しているところを見ると無性に嬉しくなる。
ゲームへの課金は、そのゲーム外においては何の価値もないので、見栄や酔狂によって行われる。稀にいる「そのゲームこそ人生」というプレイヤーを除いて、多くのプレイヤーは実世界になんの実利ももたらさない“ゲーム課金”をムダと自覚しながらも、ただ「自分がそのゲームを楽しむため」に課金している。
ここに人が備える本性の、愛すべき一面を垣間見ることができる。
しかし、課金には罪悪感が伴う。課金額が大きいほど罪悪感は膨らむ。なぜなら人はそれぞれ現実世界での生活があり、自分が100%ゲーム世界の住人にはなれないことをもまた自覚しているからだ。
課金は現実世界の生活を大なり小なり蝕むものである。このことは万人に世間知として共有されているから、“課金”はいつもネガティブなイメージと結びつきやすいのである。
スマホを破壊され、離婚した夫婦も…
ということは、節度の範囲内での課金ならそんなに悪いということはないのではないか。考え方は様々だが、これはある意味で正である。課金に節度を持たせることができれば、自分に対しての罪悪感は軽減、もしくは完全に払拭される。
しかし、「自分が課金をしている」事実は、対外的にはやはりどうしても後ろめたい。特に、家計をともにし、自分の一番近くの存在である妻(または夫)に対して、「課金額を隠す」あるいは「課金していること自体を隠す」という既婚者プレイヤーは非常に多い。
ゲーム内で知り合った日本人プレイヤーと課金の話になると、「妻に知られたらまずい」「カードの明細は隠しています」といった定型句が交わされる。これらはもはや課金プレイヤー間における時候の挨拶のようなもので、共通の話題として浸透しているのである。筆者のギルドでは月間3万円以上を投じているプレイヤーなら大体、妻にその額を知られないようにしている。
自分(夫)がソシャゲに熱を上げているだけでも妻からすればよく思っていないのに、よもや課金していることなど知られたらスマホを破壊されるかもしれない……という恐怖が、彼らにはあるようである。プレイ時間が長かったことが妻の逆鱗に触れ、実際にアカウントを消されてしまった人や離婚に発展した人もいる。状況は夫婦によって千差万別である。
ケース①:「ゲームのプレイ」と「課金していること」の2点は妻の容認を得ているが、課金額は決して妻に公表できない夫
ケース②:重課金していて夫にカード明細を見せようとしない妻
ケース③:妻が元廃課金者で夫も課金を始めたが、地獄を知る妻から「あなたはヘビーな課金をしませんように」と釘を刺されつつもこっそりヘビーな課金をしている夫
もっとも課金することへの後ろめたさと課金額は連動しているので(額が大きいほど後ろめたい)、課金額が少ないゆえに妻にそれをつまびらかにし、許しが得られている場合もある。
ソシャゲの出会いはもはや珍しいことではない
オンラインゲームでは、他プレイヤーとのコミュニケーションもゲームの主要な醍醐味だが、ソシャゲに限らず有志によるサークルがSNSで作られることも多い。
筆者が所属していた『スプラトゥーン』のチームでは、筆者の妻のみがほぼ紅一点だった。そのチームは理系の研究者的男子の割合が多く、すこぶる健全でいい雰囲気だったが、他のチームを見てみれば女性メンバーは当たり前のようにたくさんいる。そして、やはりどのコミュニティにおいても男女がいれば色恋のドラマが生まれる。
ほぼ既婚者のみで構成されるチームであっても、人気の女性プレイヤーを巡って男性メンバー同士が牽制し合ったり、新しく入ってきた女性メンバーに警戒を強める古参女性メンバーの話は枚挙にいとまがない。「ある男性とある女性が実はオフ会で飲みに行っていて、後に発覚してチーム内がざわついた」といった例は何度も耳にしたことがある。ゲームの世界のつながりが現実世界へのつながりへと変わる垣根は、思いの外低いようである。
『PUBG MOBILE』という、一世を風靡した人気シューティングゲームは、ゲーム内でクラン(チームのようなもの)に所属することができる。ここでの出会いが不倫につながるケースが多かったらしく、「パブジー(PUBGの略称)不倫」という造語が誕生したくらいだ……とその界隈の事情通は教えてくれた。「PUBGを通じて知り合った相手と、『人生で初めての不倫をした』という人を3人知っている」などの生々しい情報もある。
ゲームの楽しみ方は人それぞれなので他人がとやかく口を出すのは野暮である。しかし、ゲームの運営者を喜ばせるだけで、家庭の運営に支障をきたす楽しみ方はぜひとも避けたいところである。
文/武藤弘樹
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