――『【推しの子】』はコメディとシリアスのバランスも魅力的ですが、それぞれ演出の工夫はされていますか?
赤坂 コメディのところはセリフを太字にして、笑っていいポイントをわかりやすく伝えるようにしています。笑いのサインを示したほうが読者もわかりやすいと思うので。
横槍 作画においてもコミカルな場面とシリアスな場面でメリハリがつくように意識してます。コミカルに描きたいときは『かぐや様は告らせたい』(以降:『かぐや様』)を研究しながら。

「アイたちの目にあしらわれた星はメンゴ先生の絵から連想しました」——<【推しの子】アニメ化決定記念 赤坂アカ×横槍メンゴ対談(後編)>
「週刊ヤングジャンプ」「少年ジャンプ+」にて同時連載中の『【推しの子】』(赤坂アカ×横槍メンゴ・著)。芸能界にスポットを当て、その舞台裏を描き、大きな反響を呼ぶ本作。アニメ化発表のタイミングで、主に原作を担当する赤坂アカ、主に作画を担当する横槍メンゴ両先生に集まっていただき、ざっくばらんな対談を敢行。その模様を「集英社オンライン」独占でお届けする。後編では「作画」を中心に、知られざる制作のポリシーからキャラクターの原点まで深堀りした。【前編はこちら】
作品を彩る宝石のようなキャラクターたち
コメディとシリアス――異なるテイストを描くポイント

コミカルなセリフは太字で強調されている

場面に沿った描き方で際立つシリアスな情景
赤坂 一時期シリアス寄りのシナリオを考えることに対して苦手意識が芽生えたこともあったんですよね。『ib-インスタントバレット-』っていうシリアスな作品と、コメディ要素が多い『かぐや様』を同時に連載していたとき読者からの反応が大きかったのが『かぐや様』だったので。ただ『かぐや様』でシリアスなエピソードを描いたとき、読者が楽しんでくれたから「シリアス系も受け入れてもらえるんだな」と自信がつきました。
横槍 アカ先生はシリアスな話を考えるほうが得意なのかと思ってた。
赤坂 根っこはそうだよ。人が曇っている話を描くのは大好きだし(笑)。でも自分に向いているのは、どちらかというとコメディなのかなって思ってる。
横槍 やりたいことと適性が一致しないこともあるよね。
赤坂 『かぐや様』と『【推しの子】』はコメディとシリアスのバランスの割合が逆だから、最初はちゃんと成立させられるか不安だった。
――赤坂先生は現在「週刊ヤングジャンプ」にて『かぐや様』と『【推しの子】』と同時連載中、横槍先生も以前2作品を同時に連載されていた時期がありますが、複数の作品を同時に連載する際はどのように気持ちを切り替えているのでしょうか?
横槍 結構毛色の違う作品を連載していたんですけど、私自身飽きっぽい部分があるので性に合っていましたね。だから意識して切り替えてはいないかも。
赤坂 僕は生活の中で常にどちらかの作品のことを考えているので、自然と切り替えられます。原稿が終わったらずっとゲームばっかりして遊んでるわけではないんですよ(笑)。普段から頭を使って考えて、手を動かす時間をなるべく短縮するように心がけています。
読者を魅了する作画の裏側
――作画の際に気をつけていることはありますか?
横槍 どんなに自分がしんどくても、時間がなくても、“キャラクターの顔は可愛く描く”それだけは厳守しています。
赤坂 メンゴ先生の絵は本当に可愛い! コアなところでいうと、アイの髪飾りのウサギの気の抜けた表情が好き(笑)。

アカ先生絶賛のゆるい表情が魅力的な髪飾り
――これまで一番気合を入れて描いたシーンはどこでしょうか?
横槍 「2.5次元舞台編」の作中劇のシーンです。キャラクターたちが舞台にかけている情熱を最大限表現できるよう意識しました。
赤坂 それぞれのキャラの見せ場が、まるでアクションのそれみたいだった!

ダイナミックな作画で生まれる迫力
――作画は一話あたりどれぐらいの時間がかかるのでしょうか?
横槍 ストーリーの内容によりますね。通常の回だと、集中して三日四日で終わらせて、残りは外に出かけてと思いつつ、なんだかんだ一週間かけて描いてます(笑)。
赤坂 時間があると、作品のクオリティに反映されないところを頑張っちゃうことない?
横槍 ある!
赤坂 『かぐや様』ではラーメンの作画を無駄に頑張っちゃって。キャラクターをもっと可愛らしく描くことに労力を使った方がいいのに細かいところもこだわっちゃうんですよ。

具材のひとつひとつまで綿密に描写(この画像のみ、赤坂アカ『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦』より ©赤坂アカ/集英社 )
赤坂 メンゴ先生の作画で羨ましいのは、絵を見たときに「この絵のテイストはメンゴ先生だ!」って一目でわかるところ。僕にはないから(笑)。
横槍 アカ先生にもあるって!
赤坂 いや、テイストがコロコロ変わっちゃうのよ。
横槍 読者はみんな、アカ先生の絵の特徴を掴んでると思うよ。
赤坂 そうかな。前に小説の装画を描いたんだけど、赤坂アカが描いたってあまり気付かれなかった(笑)。
横槍 いつもの絵と違うことをするからじゃない?
赤坂 そうなんだよね。「チャレンジこそ価値がある」みたいな考えがあるから、今までやってこなかった表現をしたくなる。
横槍メンゴのカラーを見て閃いた、作品の原点

煌びやかなタッチでキャラクターを描き出す
――横槍先生が描くカラーを楽しみにしている読者も多いですが、こだわっている箇所はありますか?
横槍 一見、感受性豊かに楽しんで描いているようなカラーなんですけど、実は描くのがあまり得意ではなくて(笑)。小学生の頃、先生に「線画は上手なのに色で台無しだよ」って言われたくらい。
赤坂 でも、メンゴ先生のカラーって塗りのムラが上手だよね。
横槍 ムラは無意識に出ちゃう。
赤坂 アイたちの目にあしらわれてる星はメンゴ先生の絵から連想しました。メンゴ先生の絵は光があってキラキラしてるから「宝石みたいだな」と思っていて。そんなイメージを持ちながら主人公のキャラデザを構想していたら、目に星を入れるアイディアを思いついたのでネームに起こしていきました。
横槍 初めてネームを見たときに「また売れそうなことしてるな」と思った(笑)。
赤坂 キャラデザが出来上がった後に、“スター性”の表現としてアイたちの苗字を「星野」にして、さらに子供の名前は「ルビー」「アクアマリン」にして。キラキラした要素が詰まった主人公たちになりましたね。

それぞれの名前と瞳には「星」が刻まれている
――制作の裏話をたくさんありがとうございました。最後に、アニメを楽しみにしている読者の皆様へメッセージをお願いします。
赤坂 アニメの打ち合わせとかにも積極的に参加させてもらっていますが、皆さんにちょっと驚いてもらえることもできるかなって思ってます。楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
横槍 本当に原作を尊重してくれるアニメ制作現場なので、原作好きな方にも満足いただけるものになると思います。アイドル・芸能・歌・ダンスがそろっているので、映像にもご期待ください。
<了>
実力派揃いのアニメ「【推しの子】」制作陣
アニメーション制作は『干物妹!うまるちゃん』等を手掛けた動画工房が務める。監督は『私に天使が舞い降りた!』に代表される平牧大輔氏、助監督には猫富ちゃお氏が参画。さらにシリーズ構成は田中仁氏、キャラクターデザインは平山寛菜氏が手掛ける。

<アニメ【推しの子】概要>
監督:平牧大輔
助監督:猫富ちゃお
シリーズ構成:田中 仁
キャラクターデザイン:平山寛菜
アニメーション制作:動画工房
アニメ公式サイト:
https://ichigoproduction.com/
公式ツイッター:
https://twitter.com/anime_oshinoko
コミックス1~7巻発売中。8巻は6月17日(金)発売。1~8巻:定価693円(税込)
【推しの子】 8
赤坂 アカ 横槍 メンゴ

2022年6月17日発売
693円(税込)
B6判/194ページ
978-4-08-892363-5
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
編集協力/ウェッジホールディングス
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