初めて「ロードショー」編集部に打ち合わせにうかがったとき、私は道に迷い、約束の時間に遅れてしまいました。方向音痴の私は、現在は必ず事前にストリートビューで道を確認してから出向きますが、当時は地図アプリといったものはありませんでした。
そんな私に電話で道を教え、温かく迎えてくださった編集者とご一緒する取材で、私は海外ドラマ・スターのインタビューに初挑戦しました。今では海外ドラマライター歴20年以上になる私の、初めての海ドラ俳優の来日インタビューは「ロードショー」だったのです。
『ロズウェル/星の恋人たち』というTVシリーズのヒロイン、シリ・アップルビーと対面した私は、かなり緊張しながら用意した質問を投げかけ、インタビューを進めていきました。シリはとてもキュートで、気さくに質問に答えてくれたのを覚えています。
『愛の不時着』のヒョンビンの寝たベッドに思わずダイブ!
ハリウッド映画はじめ大作ばかりを扱ってきたイメージがある映画誌「ロードショー」だが、実は古くから海外ドラマや各国の作品も紹介してきた。2000年代の第1次韓流ブームのころにも、しっかり人気スターを取材。ドラマと韓流をメインに執筆してきた清水久美子さんが、あの大スターと遭遇した当時を振り返る
レーベル復活記念寄稿 「ロードショーがあったころ」#7
遅刻のうえに、インタビュー切り上げ!?

掲載されたシリ・アップルビーの取材ページ
©ロードショー2004年10月号/集英社
回答はシンプルで短めなものが多く、インタビューはサクサクと進み、リストの一番下の質問まで聞き終わった私は、「ハッ、もう質問がない…」と気づいて頭が真っ白になりました。その時点でインタビュー時間はまだ15分も残っていたというのに。「…インタビューはこれで終了です(大汗)」と私が言うと、シリが「えっ、本当に? もういいの!?」と苦笑い。宣伝担当者は失笑。私は穴があったら入りたいという思いでいっぱいでした。
帰り道、編集者からは当然ダメ出しをいただき、猛省した私は、それ以降、できるだけ多くの質問を用意するようになったのはもちろんのこと、その場で臨機応変に対応できる度胸も身につけていきました。今でも緊張することはありますが、それを表には出さず…というか、時間がいくらあっても足りないくらいインタビューを楽しめるようになったのは、あのときの「ロードショー」での初体験の失敗があったからこそ。シリがいい人でホントに良かった!
ヒョンビンの魅力にふらふらになったあげく…
2000年初頭、それまで洋画と英米ドラマを中心に掲載してきた「ロードショー」が、『冬のソナタ』(2002)をきっかけに大ブームとなった韓国ドラマに着目。韓流ムックに寄稿していた私に白羽の矢が立ちました。
編集部も読者も初心者だということで、まずは読者に向けて「韓流とは何ぞや?」という記事を執筆するようにというご用命が。私は役に立てることが嬉しくて、韓国映画・ドラマ・俳優などについてボリュームたっぷりの記事をノリノリで書いたのを覚えています。そして、韓流に関するコラムも連載し、しばらく経った頃、今も忘れられない取材が舞い込みました。
韓国で社会現象を巻き起こした大ヒットドラマ『私の名前はキム・サムスン』(2005)で一気にブレイクした、ヒョンビンのインタビューを担当することになったのです! ヒョンビンといえば、そのドラマで演じたキャラクターが“元祖ツンデレ男子”として日本でも人気を博し、のちには『愛の不時着』(2019)に主演して世界的に注目されたスター。私も『キム・サムスン』に夢中になっており、取材できるなんて!と、舞い上がっていました。

『不時着』直前の2018年、映画『ザ・ネゴシエーション』の記者会見に現れたヒョンビン(右)とソン・イェジン。この頃はもう大スターの貫禄
Sipa Press/amanaimages
彼は主演映画『百万長者の初恋』(2006)のPRで初来日し、取材依頼も殺到していました。ツンデレのイメージが強かったため、素顔はどんな感じなのかなとワクワクしながらインタビューに向かったのですが、実物はあまりにも素敵で、正直インタビューの内容をあまり覚えていないのです。覚えているのは、とにかく真面目で誠実で感じが良く、裏表がない印象。そして、何よりもビジュアルが最高に美しく、キラキラしたイメージが脳裏に焼き付いています。
とにかくポーッとなりながらインタビューをしていたら、「そろそろ終了です」と声がかかり、私がショックの声を上げたんだと思うのですが、ヒョンビンも非常に申し訳なさそうな顔をしてくれたのは忘れられません。インタビュー後に写真撮影があり、ホテルの客室での取材だったので、カメラマンがベッドに寝そべるポーズをヒョンビンに依頼し、セクシーでカッコいいショットが撮れました。
撮影が完了し、ヒョンビンが退出して、撤収という時に、私は何を血迷ったのか、さっきまで彼が寝そべっていたベッドにダイブしてしまったのです(完全に無意識だったと思います)。同行した編集者が驚いて、「清水さんのそんな面を初めて見ました! すごく冷静にインタビューしているように見えたし、そんなかわいいところがあったなんて」と笑いながら言うのを聞いて、我に返って大赤面しました。それをきっかけに、私よりもだいぶ若いその女性編集者と仲良くイケメン談義をできるようになったのは、素敵な思い出です。

これがそのときのインタビュー掲載ページ。ヒョンビン、若い! ベッド写真は採用されず
©ロードショー2007年2月号/集英社
このたび、「ロードショー」がオンラインでレーベルとして復活するにあたり、思い出を書かせていただく上で、対照的なふたつのインタビューを振り返ってみました。どちらも、とても大切な思い出であり、貴重な経験です。そんな体験をさせてくだったことに感謝の気持ちを込めつつ、今後も「ロードショー」が発展していきますよう、大いに期待しております!
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ロードショーCOVER TALK #2006

