「吸うやつ」とは、一般的にクリトリスの吸引機能がついたアダルトグッズのこと。主に外イキ(陰核が刺激されて起きるオーガズムのこと)の開発や、外イキ主体のセルフプレジャーに利用されることが多いのが特徴だ。現在、アダルトショップや通販サイトでは、さまざまな機能、価格帯の商品が販売されている。
そのなかでも特に人気で「吸うやつ」の代名詞的な存在なのが、ToyCodという中国のブランドが販売する「Tara 吸引バイブ」だ。これは膣の内外を同時に刺激できるタイプで、裏垢男子のいく夫さんがTwitterやブログで紹介したことで人気が爆発。Amazon のアダルト用バイブの売れ筋ランキングでベストセラー1位を保持し続けている大ヒット商品だ。
「2020年夏頃、仲のいい裏垢女子から『これが気持ちいい』『すぐイける』という噂を聞き、どうやら評判がよさそうだということでブログに紹介記事を書いたり、裏垢女子の使用レポをツイートしたりし始めました。ブランドの“中の人”でも広告案件でもないのに『これすごくいいよ』と勝手に宣伝していました」
裏垢女子も大絶賛の「吸うやつ」がAmazonアダルトグッズ部門1位になった背景は? ブームの火付け役となったインフルエンサー裏垢男子に聞いてみた
近年、女性向けのセルフプレジャーグッズ、いわゆる”大人のおもちゃ“が人気上昇中だ。なかでも「吸うやつ」と呼ばれる陰核を吸引するタイプの器具が注目されている。「吸うやつ」という名称を生み出した裏垢男子のインフルエンサーいく夫さんが、人気の背景について説明する。もはや、女性のマスターベーションもおおらかに語る時代が来ている。
今や一般名詞になった「吸うやつ」の誕生秘話

「裏垢の象徴」インフルエンサーのいく夫(@ikuogakuruo)さん
いく夫さんはTwitterで裏垢インフルエンサーとして情報発信をする傍ら、「例のバイブ」という人気バイブの名付け親になったり、「例のディルド」というオリジナルディルドを開発したりと、さまざまなグッズの企画や宣伝を行っている。この吸引バイブも活動の一環として取り上げた大人のおもちゃのひとつだった。
「過去には、裏垢女子に人気だったバイブに『例のバイブ』という親しみやすそうな名前をつけたことがありました。同じ流れで、自分が宣伝した吸引バイブにもわかりやすい名前をつけてはどうかと思い、勝手に『吸うやつ』と呼んでいました。あまり深く考えずに、聞いてすぐにわかるものにしたかったという感じでしたね」

「吸うやつ」と呼ばれた「Tara 吸引バイブ」
いく夫さんが宣伝したことで、数万のフォロワーを抱える裏垢女子たちが使用レビューとともに商品情報を拡散するようになり、知名度と人気が急上昇。一般の女性たちにも次第にその存在が知れ渡り、同時に「吸うやつ」という呼び名も定着していった。
ウーマナイザーとの違いは?
いく夫さんが吸引バイブの人気に火をつけたことで、他の同じような機能の商品も売れ始め、それらがまとめて「吸うやつ」と呼称されるように。当初はいち商品の通称として使われていたが、いつの間にか吸引機能のついているグッズ全般を指す総称として使用されるに至った。
「これまでにもウーマナイザーなどのブランドから吸引式のバイブは販売されていましたが、販売価格2〜3万円と高価だったためにあまり浸透していませんでした。その後、『Tara吸引バイブ』が人気になったことで吸う機能のおもちゃの知名度が上がりました。ですが、あまりにもシンプルな名前にしてしまったために、すべての吸引バイブの呼称となり、類似品も“吸うやつ”として販売されたりもしていました」

上部の穴の部分がクリトリスを吸うために「吸うやつ」と呼ばれた
シンプルな名前ゆえに他の商品がこぞって「吸うやつ」を名乗るという事態が発生。そして、商品とは全く関係のない会社が商標登録をしてしまい、先行して販売されていた「Tara 吸引バイブ」が正式な商品名として「吸うやつ」を名乗れなくなってしまったという。
「2022年夏頃、商標を見てみると申請中だったので、代理人を通して異議申し立てしました。グッズがAmazonで売れ始めた時期と、僕がブログを書いて紹介し始めた時期が近かったため、それを証明する書類を作って提出したのです。商標は基本的に早い者勝ちのルールなので結果的にはダメだったのですが、そんなに有名なのかと思い知らされました」
波瀾万丈な経歴を歩んでいるこの名前について、いく夫さんはどう感じてるだろうか。
「もし自分が会社をやっていて、これを生業にしているなら非常に困りますが、僕自身はメーカーの人間でもないですし、これで食べていこうとしているわけではありません。なので、直接的な被害があったわけではないです。あくまで遊びでやっているので、おもちゃや名称がいろんなところで使われたり拡散されたりして、最終的にアダルトグッズの裾野が広がれば、それでいいのではないかと思います」
「吸うやつ」人気はSNSマーケティングの
成功例となり得る
「吸うやつ」の元祖とも言える「Tara 吸引バイブ」は、Amazon売れ筋ランキング1位というだけでなく、4000以上ものレビューがつき、カスタマーレビュー4.4という高評価を叩き出している。そして、ほとんどのレビューが使用者の「生の声」なのが、類似品と一線を画している大きな特徴だ。
近年、フェムテックの流行などにより女性向けのアダルトグッズは年々知名度を上げているが、グッズの話をしたり実際に使用したりするのには、まだまだ抵抗を覚える人も少なくないのが現状だ。またグッズについて知る機会も乏しく、興味を持ったとしても数少ない情報や商品の中から、取捨選択を迫られてしまう。
そのようななか、いく夫さんが匿名性が担保されたたまま、生の声を聞ける“裏垢女子”という存在に目を付けて、ユーザーたちの声を拾い集め、ブログやTwitterで発信し続けた。そこからSNSで拡散したり、Amazonレビューで好評したりする人が増えるという好循環が起こったことが、この商品の成功の要因となった。

いく夫さんが使用者の感想をまとめたレビュー
「これまでのSNSマーケティングでは、インフルエンサーやサクラにお金を払って感想を書いてもらうという手法がメジャーだったと思います。ですが、そのようなレビューを読んでも『気持ちいいかどうか』『実際にイけるか』といった正確な情報を得ることは難しいのではないかと感じていました。だからこそ、私自身で使用者の声を集めて発信することで“本当にいいもの”を届けられるのでは?と思ったのが根っこにありました」
これまではあまり触れられることのなかった女性向けのアダルトグッズ。そのなかのひとつにシンプルでわかりやすい名前がついたことで、今まで以上にカジュアルな雰囲気で大人のおもちゃの話題に触れられるようになったのが、「吸うやつ」の一番の功績ではないだろうか。今後はどのようなグッズが世に広められるていくのだろうか。
取材・文/福井求
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