――前編では、川北さんから「ぷよぷよ」と「漫才」の意外な共通点を聞きました。では、ぷよぷよのプレイヤーとしての経歴や戦績は?
川北 大会とかにはあまり出てないです、レベルが違い過ぎます。見に行ってるだけですね。一応、大分5位になったことはありますが。
ガク 住んでるわけでもないのに大分在住の設定でやってただけだろ。
川北 ぷよぷよはいつの間にかやり始めてました。気づいたら家にあって、近所にぷよぷよやってる友達がいたのでよく一緒にやっていました。姉がやっていたわけでもないし、誰が買ったんだろう?
ガク まずぷよぷよがあったんだ。
川北 「俺がぷよぷよのために買われた」までありますね。ぷよぷよを楽しませるために親が俺を買ってきた可能性が高いです。でも本格的にやり始めたのは大学のサークルでですね。部室にぷよぷよが入ってきて。
ガク ぷよぷよが入ってきて? 買ってきたんじゃなくて?
川北 サークルだから(加入してきた)。それでみんなでやってたら、強いねって言われるんで、それならもう少しやってみようと。

“トガり芸人”真空ジェシカのトガってない趣味の話。「乃木坂46の握手会で『できない!』」「好きな合唱曲1位は『心の瞳』」(後編)
M-1グランプリ2021で決勝に進出し、一気に地上波の舞台に駆け上がったお笑いコンビの真空ジェシカ。朝のテレビ番組でボケ倒すストロングスタイルも話題になったが、ライブシーンではそのトガりとセンスが以前から注目されていた旬なコンビだ。ところ変わってもスタイルを貫く川北茂澄とガクの二人が今、考えることは――。後編では、それぞれのパーソナルな部分を聞いていく。
真空ジェシカ インタビュー【後編】

真空ジェシカのガク(左)と川北茂澄
川北が舞台でひたすら剣道の素振り⁉︎


――ぷよぷよとはサークルの同期だと。何のサークルに入られていたんですか?
川北 大学でやっていたのは、お笑いサークルと剣道サークルです。最初は体育会の剣道部に入ろうと思ったんですが、これはいけないと思って。
ガク ガチすぎて。
川北 部活に合わせて時間割を組まないといけなかったんで、それは嫌だなと。剣道自体は小3からやってます。
――結構長いんですね。
川北 いまはちょいちょい、連動できそうなイベントがあれば……。
ガク それは本当にやめてほしいです。本当に剣道をやるだけでお笑いに絡めようとしないんで。
川北 この前もレイザーラモンのRGさんが60分間、「あるある」を歌い続ける横で60分間剣道を。
ガク あるあるを考えてくれと言われてたのに、竹刀で素振りをし続けてました。
川北 あるあるはガクが考えてくれたんで。


「合唱って究極の内輪ネタなんですよ」
――好きなことを舞台に持っていけるのはすごい。合唱曲もネタでよく使っておいでですが?
ガク 無理やり持ってきているだけでうまいこと融合させられてはないですが……。
川北 合唱は中学校のときにずっと指揮者をやっていました。合唱曲がすごくいいなと思っていて、音楽室に行って音楽の先生に合唱曲のCDアルバムを全部貸してくれって頼んでMDとかに入れて聞いてて。
――結構いろんな曲をチェックされているんですね。
川北 一回ちゃんと整理したんですよ、1位、2位、3位を考えて。1位はやっぱり『心の瞳』です。
ガク よく話題に出てくる『COSMOS』じゃないんだ。
川北 『COSMOS』は2位。合唱曲というのは、自分が歌ったという「思い出補正」込みで評価していいものだと思っていて。そうすると卒業式で歌った『心の瞳』がやっぱり1位ですね。未来の自分に対して歌うような曲が多いですよね。
――どういう経緯で指揮者をされてたんですか?
川北 全部に手を挙げる“病気”だったんですよ。誰かが手を挙げるのを待つ時間がすごく嫌で、全部手を上げてたから全部やってました。応援団長も学級委員もずっとやってて。一回、「川北以外で」って言われたこともあります。
ガク どうせ川北が立候補するからってみんながラクしてしまう。

――そこまでいろいろやった中で、好きなものとして合唱が残った理由は?
川北 自分が面白いと思うものは何かっていうと、内輪ネタみたいなのがすごく好きなんです。合唱って究極の内輪ネタなんですよ。学校を卒業していろんな人と出会ってみると、同じ歌を歌ったことがあるだけでクラス内の内輪ネタと同じノリができるなと気づいて。深い知識を問うようなものでもないし、いろんな人に通じるのに内輪ネタそのものなんです。そういうのも込みで合唱が好きかもしれない。
ガク みんなが参加できる内輪ネタ。
川北 本当のガチの不良とかはやってなかったかもしれないですけど、ちょっとヤンチャしてるやつでも歌詞を覚えて歌ってるし。僕の地元は不良はいなかったですけど。
ガク 僕も中学から青学なのでヤンキーには出会ってないですね。おぼっちゃんばっかりで。
川北 中学受験は慶應コースに通ってたんだもんな。
ガク いいだろ、第一志望が慶應だったことは言わなくても。
――内輪ネタという意味では、かつてのMicrosoft Officeのヘルプ機能で出てくるイルカを小道具として取り入れるなど、インターネットっぽいモチーフを多用されていますね。
川北 自分が楽しくてやってるだけですね。中学も高校も一緒だった「おさるさん」ってあだ名のインターネットに詳しい友達がいて、高校では部活も一緒にやっていて。おさるさんの影響が強いです。

ガクが語る妖怪の面白さ
――川北さんの趣味はステージにも持ち込まれていますが、ガクさんの「妖怪好き」はまだあまり触れられていない気がします。
川北 確かに。
ガク 特に好きなのは、「泣きババア」という妖怪です。お葬式のときに故人とはまったく関係のないおばあさんが誰よりもワンワン泣いてるっていう。
川北 今、「ババア」って言葉は大丈夫ですか? 「泣きおばあさん」にしたほうが……。
ガク 妖怪の名称だから(笑)。多分、最初は本当に存在したおばあさんだと思うんです。お葬式で故人の親族とかが「見たことない婆さんが誰よりも泣いてるな、あれ妖怪だろ」って思っただけで。それが現代まで伝わってしまってるのが面白いなと。
川北 かわいそうにな。きっと一番仲が良かった人が死んじゃってるから一番泣いてるんだよな。
ガク 葬式に知り合いがいなかっただけで、勝手に妖怪だと思われて、それが語り継がれてしまっているという……。もちろん想像ではありますけど、そういうところが妖怪の面白さですね。日常のなんでもないことが妖怪になってたり。「すねこすり」っていう小さな猫のような妖怪がいるんですが、何でもないところでつまづいてしまうのは、そのすねこすりが原因なんだとか。有名な「ぬらりひょん」も勝手に家に入って来てくつろぐ妖怪で、「リモコンどこ置いたっけ?」みたいなのはぬらりひょんの仕業だとか。ちょっとしたことでもすぐ妖怪のせいにする。
川北 ポケットに入れてたイヤフォンのコードが絡まるのも。
ガク 現代に妖怪がいたらそうだろうね。川北って歯磨きしながら夜道を歩いているらしいんですけど、これも夜中にシャカシャカ音が聞こえてくるっていう妖怪になりますよね。「小豆洗い」のような。
川北 歯を磨いてるときに止まってられないんですよ。

――家の中で歩くのではダメなんですか?
川北 いいんですけど、外のほうがたくさん歩けるので。
ガク そんなの妖怪だろ。
乃木坂46の握手券があっても握手できない
――最近注目のコンテンツは?
川北 剣道の試合動画とかは今も見ちゃいますね。
ガク 僕はやっぱり周りの芸人のYoutubeチャンネルが中心ですね。
川北 最近は、TikTokは見てないの?
ガク 流行り始めのTikTokで若い子がはしゃいでるのを見るのが楽しかったんですけど、最近のTikTokはスクロールするとすぐ知り合いの芸人が出てきてしまって全然楽しめないんです、プロしかいない。女の子もプロしかいない。
川北 オワコンになって来てるんだ。
ガク あと僕は乃木坂46が好きです。久保史緒里さんが好きで。
川北 (プロ野球の)楽天ファンか! 最悪ですね。楽天が西武のいい選手全部持ってくんよ。
ガク 久保さんは宮城出身だからね。僕、多分アイドル好きだろうな、オタク気質あるだろうな、って思ってはいたんですけど、AKB48にはハマれずにいたんです。たまたま乃木坂46(当時)の深川麻衣さんの映像を見かけて、そこからハマりました。まだ歴史も浅くて追いやすかったし、清楚で遠い存在という非現実感がよかった。AKBみたいな身近さは求めてなかったんだなと。
川北 ガクは握手券があっても握手しに行かないんですよ。
ガク 会場まで行って握手せずに帰ってきたことはありますね。「できない!」と。


「現状をあんまわけわかってない」
――今後の展望は?
川北 こういうことやりたいというのは特にないんですけど、楽しい仕事を増やしたいですね。いろいろやらせてもらう中で、楽しい仕事と楽しくない仕事がはっきり分かれていて。楽しいほうがいいじゃないですか(笑)。
ガク 自由にボケられるとかね。『マヂカルクリエイターズ』(テレビ東京)とか。
川北 あー、あれは最高! あんなの全然ノーギャラでもいい。でも楽しかったのはそれぐらいかな……。
ガク だからマヂラブさんに頑張っていただいて、僕らが出られる番組を増やしてもらいたいという。
川北 まあ彼らなら頑張れるよ。
ガク 偉そうだな。
川北 まあそんな風に自分が楽しいことをやっているだけなので、お客さんが来てくれたらラッキーではあるんですけど、こうしていきたいというのはないです。お客さんがゼロになったら焦るのかもしれない(笑)。
ガク 僕は漠然と人気者になりたいという希望があります。人生で人気があったことがないんで、そういう気持ちを味わってみたい。全てをやりたいです。
川北 NGないもんな。でも、そもそも現状をあんまわけわかってないですね。なんでバイトしなくていいんだろう?みたいな。
ガク ラッキー!って思ってます。同じことをやり続けてお金がもらえるようになってラッキー。
川北 面白くなったわけでもないし。それでいて周りの面白い人がまだバイトしてたりして。
ガク きっかけがあっただけだよね。
川北 人間的にも何も変わってない。俺は売れたら変わると思うんで、まだ売れてないんだなと思ってるんですけど。めちゃくちゃ人を下に見るようになるはず。
ガク ひねくれていくの嫌だな。売れたら丸くなるのが普通だろ。
(終わり) インタビュー前編から読む>>
取材・文/宿無の翁
撮影/柳岡創平
編集/一ノ瀬 伸







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