動画配信サービスが変えた映像業界

映像業界は、今が過渡期。それは言うまでもなく、動画配信サービスの台頭によるものだ。コロナ禍で同市場が飛躍的な成長を遂げたことは周知の事実だが、パンデミックがあるかないかにかかわらず、今の状況は近い将来に予測されていた。そもそも予定されていた未来が、数年早まっただけ。長年アメリカの映像業界を追ってきた人なら、誰もがそう考えるのではないだろうか。

私は雑誌の編集業を経て1998年にフリーランスの映画ライターとして活動を始めた後、2000年からアメリカのTV業界も並行して追い始めた。学生時代は名画座通い(一番通ったのは今はなき三鷹オスカー)に明け暮れたが、昔から海外のTVシリーズも大好きだった。

しかし業界全体を俯瞰して追うようになったきっかけは、2000年に放送が始まった『CSI科学捜査班』でプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーが、映画業界に続きTV業界でも名実共に覇者になったこと。以後、映画業界の人材は加速度的にTV業界に流入し、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー傘下の米大手有料ケーブル局HBOが牽引した質の向上をもたらしつつ、テレビ業界全体として過去最高の作品数を更新し続ける黄金時代(ピークTV時代)へと突入した。

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2001年TVガイド賞を受賞した『CSI』ファーストシーズンの出演陣。懐かしい顔ぶれ。最新の『CSI:ベガス』がWOWOWで配信中
ZUMA Press/amanaimages

 『ザ・ソプラノズ』や『OZ/オズ』『SEX AND THE CITY』など、米ドラマ史に燦然と輝くHBOの秀作・ヒット作を挙げていけばキリがない。資金が潤沢な有料ケーブル局を旗振りとして、基本料金で視聴できるAMCの『マッドメン』や『ブレイキング・バッド』など、ベーシックケーブル局からも時代を象徴するヒット作が生まれた。そしてなんと言っても影響力が大きい地上波の『24-TWENTY FOUR-』や『LOST』といった国際的な人気作は数知れず。

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一世を風靡した『SEX AND THE CITY』。最新の『SATC新章AND JUST LIKE THAT』(U-NEXT配信中)からはサマンサ(キム・キャトラル/右)が抜けたが、キャリー(サラ・ジェシカ・パーカー/左からふたりめ)たちは変わらず元気
Capital Pictures/amanaimages

ちなみに“ハリウッド”とは映画のことだけを指すわけではもちろんない。これらの作品はすべてハリウッドの大手スタジオの系列会社が手がけるもので双方がぱっきり分離されているわけではないし、今では相当数の人材がかぶっているのはクリエイターも俳優も含めて説明の必要もないだろう。