「このゴキブリ、パンチありすぎでしょww」
「ラスボス感、半端ない!」
とSNSなどで話題のこのゴキブリ像。どっしりとしたおむすび型の体から4本の腕が力強く伸び、また、太い脚は大地をしっかりと踏みしめている。これ、いったい誰が、なんのために作ったのか?
この像は、奈良県にある林泉寺というお寺に置かれているもので、寄進したのは大阪市でビルなどの管理、メンテナンスを行う「株式会社SONO」。そこで同社の創業者であり、現在は顧問をつとめる南園良三郎さんに話を聞いた。
「たしかにこの像はうちの会社が2001年に作ったものです。20年も前に作ったものが今になって再びSNS上で話題になっていると聞き、本当にありがたく思っています」
南園さんによれば、きっかけは約27年前のこと。当時、「餃子の王将」(王将フードサービス)が上場するにあたり、店舗にゴキブリなどの害虫が出ないよう、近畿大学と害虫駆除の共同研究をスタートさせた。その結果、優れた薬剤や駆除機具などが開発され、実際に効果も抜群だったという。
「この時、王将さんからビルなどの管理業務をしていた私の会社に、この薬剤や器具を使って新たに害虫駆除を業務としてやってくれないかという依頼があったんです。そこで社内に害虫駆除のセクションを新たに設けて始めてみたところ、すぐにお客さんから好評をいただいたんです」
SNSで「ラスボスすぎる」と話題のゴキブリ像。制作者が語るデザインの秘密
そのパンチのあるデザインから、奈良県のお寺にあるゴキブリ像がSNS上で話題だ。実はこれ、大阪の害虫駆除業者が制作を依頼したものなのだが、いきさつを聞いてみたところ、その内容は予想以上にハートフルなものだった!
その名も「護鬼佛理天」

新規事業が当たって普通ならば万々歳だろうが、南園さんは手放しで喜べなかったとか。
「優れた害虫駆除効果があるということは、裏を返すとそれだけたくさんのゴキブリを殺しているということ。これはゴキブリに申し訳ない、なんかせなあかんという気持が自然にわいてきたんです」
懺悔の念がよほど強かったのか、当時、南園さんの夢には度々、ゴキブリが登場するようになった。
「家中がゴキブリだらけになってる夢をよく見ました(苦笑)。その中心にひと際大きい、透き通ったオレンジ色のゴキブリがいましてね。蜂でいうと女王蜂みたいな感じで、不気味に発光しているんです。いや、今話すとアホみたいな話なんですが、その時は、けっこう恐ろしくて(苦笑)」

ゴキブリ像を制作した「株式会社SONO」の顧問、南園良三郎さん
殺されたゴキブリたちの怨念を感じたわけではないが、南園さんは会社の創立30周年記念事業として、ゴキブリ鎮魂のための供養の像を作ることを決意した。
人間の薄情さをうめあわせたい
制作は 知人を通じて知り合った彫刻家の天野裕夫氏に依頼。 そして1年以上の制作期間を経て、高さ1.6m、重さ約1トンのブロンズ製のゴキブリ像が2000年11月に完成した。
「これだけ大きなものを作るのは簡単でないらしく、富山県にあるお寺の鐘をつくる工場で鋳造したと聞いています。像の名前は作者の天野さんと、この像を設置する林泉寺の住職が話し合って『護鬼佛理天(ごきぶつりてん)』と名付けられました」

林泉寺に設置された際の1枚。やたらとめでたい感じ
南園さんは依頼時、像のデザインなどについては彫刻家の天野さんに一任し、一切、注文はつけなかったというが、なかなか破天荒な仕上がりだ。このデザインの意図について、同社の広報担当者が以下のように説明してくれた。
「ゴキブリは人類の誕生(約500万年前)よりもはるか昔、約3億円前から地球上で生活しており、その力強い生命力を、どっしりとした体、太い脚や腕のフォルムで現しています。また、ゴキブリのお腹の中には人間が生活する都市や建物が描かれています。
現在は後から地球にやってきた人類がわがもの顔でゴキブリを殺していますが、もともと先に住んでいたのはゴキブリで、それを忘れてはいけないということを逆説的に表現しているわけです」
奈良県の林泉寺にある「護鬼佛理天」像の前には、彫刻家・天野さんの制作意図が石碑になっているが、そこにも「ゴキブリの腹上に寄生する都市という逆転の構図を彫刻することで、我々の薄情さをうめあわせたいと思う」と記されている。

ゴキブリ像の前設置された石碑には、彫刻家・天野氏の言葉が記されている
再び南園さんが言う。
「わが社は、商売とはいえゴキブリを殺して収益を上げていますので、人間との共生が叶わぬゴキブリの鎮魂、供養になればなによりと思っています。ぜひ本物を見に、お寺にお参りにいってほしいですね」
林泉寺では毎年11月に『護鬼佛理天祭』なるゴキブリ祭りも行われているのだとか。ぜひ、現地でその雄姿を確かめてほしい。
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