「見始めたらやめられない」と話題に

ドラマ界の『エブエブ』誕生!? アジア系アメリカ人のリアルを描いたA24製作Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』が、3年前には実現不可能だった理由_1
ダニーを演じるスティーヴ・ユァン。ブラッド・ピットが製作総指揮を務めた『ミナリ』の父親役で知られる韓国系俳優
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Netflixでのストリーミングが始まる前に、すでにシーズン2の製作が発表され話題となったA24製作のドラマ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』。
BEEFといっても牛肉の話ではなく、「不満足」「文句たらたら」「小競り合い」のような感じで使われるスラングです。1話30分で全10話。ジャーナリスト仲間には一気に見た人が大勢いて、みんな「止められなかった」とため息混じりに白状していました。

物語の発端はロードレイジ(運転中にキレること)。スティーヴ・ユァン演じるダニーは、経営する建築会社がうまくいっておらず、ビットコインの投資も損してばかり。韓国に帰国している両親をアメリカに呼び戻し、楽な老後を迎えさせたいという義務感がプレッシャーになっている人物です。

ドラマ界の『エブエブ』誕生!? アジア系アメリカ人のリアルを描いたA24製作Netflixシリーズ『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』が、3年前には実現不可能だった理由_2
人気コメディエンヌのアリ・ウォン(左)が、エイミーを熱演

一方アリ・ウォン演じる中国系アメリカ人のエイミーは実業家。素敵な家に住み、優しくハンサムなアーティストの夫に愛され、かわいい娘もいる。はたから見たら夢のようなパーフェクトライフを送っている設定です。
とはいえ実情は、うまくいかないビジネス契約にイライラが溜まっていて、善人すぎる退屈な夫に少なからず倦怠感を抱いてます。

このふたりが、運転中のトラブルをきっかけにお互いへの嫌がらせをスタート。一旦怒りを爆発させてみたら、それぞれ蓄積していたフラストレーションが堰を切ったようにあふれ出てしまいます。車のナンバープレートから相手の住所を割り出し、お互いの生活にジワジワと入り込んでいき、リベンジによる負の連鎖にがんじがらめになってしまうのです。

まるでホラー映画の形相を見せますが、この作品はドラマとコメディをミックスした“ドラマディ”。ハラハラドキドキが続くサスペンスの骨格をしっかり保ちつつも、ホッと笑えるシーンも。
エイミーの夫である日本人のジョージ(ジョセフ・リー)と、肉体が素晴らしいダニーの弟のポール(ヤング・マジノ)は、バカがつくほどの善人で、滅多に腹を立てない穏やかなキャラクター。ホッとしながら笑えるチャンスを与えてくれます。お笑いコンビに例えれば、ボケ役という感じです。

そしてドラマは常に新しい驚きを目の前にチラつかせながら進み、隙間のないその脚本の引力に引きこまれてしまいます。