2006年は、全世界待望のシリーズ第2弾『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマン・チェスト』が製作・公開。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)につづいて年間興行収入2位のヒットを記録し、ブームが最高潮に達していたことから、ジャック・スパロウ役のジョニー・デップが表紙を6回も飾っている。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の大ヒットでデップのギャラも高騰。前作『呪われた海賊たち』(2003)では1000万ドルだった出演料が、『デッドマン・チェスト』では2000万ドルに。しかも、興収に応じてロイヤリティを受け取ることができるバックエンド契約を結んでいたため、本作だけで6000万ドルを手にしたといわれている。その後の続編でも同様の条件を獲得していたため、『パイレーツ・オブ・カリビアン』全5作への出演で3億ドル近く稼いだようだ。

【休刊まであと3年】1年の半分の表紙を飾るというジョニー・デップ祭り! 一方、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーのベビー・カバーはお見せできない…その理由は!?
ジョニー→話題作→ジョニー→ジョニーとオーリー→オーリー→ジョニー、ジョニー、ジョニー! 日本で売りに出されたジョニー・デップの写真を「ロードショー」が買い占めたと言っていいこの年。ほぼアイドルと化して大金を手にした彼は、果たして幸せだったのか? 貴重写真落札の裏話もご披露。
ロードショーCOVER TALK #2006
ジョニーにお任せ時代到来

ついには“52人のジョニーに会える!!”というふれこみで顔面トランプが付録に…恐るべき人気
©ロードショー2006年11月号/集英社
デップは、2004年に製作会社インフィニティ・ナイヒルを立ちあげる。国際的スターとなった自らの知名度を生かし、自分好みの映画企画の実現に乗り出したわけだ。かくして、『ラム・ダイアリー』(2011)『ダーク・シャドウ』(2012)『ローン・レンジャー』(2013)『Minamata』(2020)などが生まれたが、いずれも批評・興行ともに成功したとは言いがたい。皮肉にも彼が出演していない『ヒューゴと不思議な発明』(2011)が同社が関わった作品では最大のヒットとなっている。自分の世界観を持った個性的なアーティストには、映画のプロデュースは荷が重かったようだ。
さらに、突然、途方もない大金が転がりこんで金銭感覚が狂っても不思議はない。デップは金目当ての連中に囲まれ、プライベートで誤った判断を下していくことになる。長年連れ添って2子をもうけたヴァネッサ・パラディを捨てて結婚したアンバー・ハードとは、離婚の末、泥沼の法廷闘争を繰り広げることになるが、トラブルはこのときに始まっていたのだろう。
女性誌風に舵を切った理由は…
2006年の「ロードショー」で、もっとも話題になった9月号の表紙はここにはない。アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットがふたりの実子として授かった赤ん坊のシャイロと一緒に映った貴重な家族写真で、「ロードショー」は日本での使用権争奪戦の末、落札に成功している。ただし、「二次使用一切不可」という条件がついており、それから十数年経過したいまでもこの条件は有効なのだ。
ジョリーとピットは、2008年に双子が産まれたときも家族写真をオークションで販売。米ピープル誌が1400万ドルという前代未聞の高額で落札している。なお、すべての収益は慈善事業に割り当てられている。自身の名声をチャリティに利用する彼ららしいやり方だ。
実は、この9月号から編集長が交代したのだという。高額写真落札の背景には、新編集長の並々ならぬ覚悟があったのだ。さらに、アン・ハサウェイを表紙に起用した12月号は、『プラダを着た悪魔』(2006)特集ということもあって、女性誌と見間違うようなおしゃれなデザインになっている。

芸能誌出身の「ロードショー」が女性誌風たたずまいに。だが付録はやはりジョニー
©ロードショー2006年12月号/集英社
テコ入れの背景には、出版不況の波がいよいよ迫ってきたという事情があったのだろうと想像できる。1990年末からかつての人気雑誌の廃刊や出版社の倒産のニュースが相次いでいた。インターネットの普及や若年層の書籍需要の減少、おまけにテレビ局主導の映画が人気を博し、「邦高洋低」の時代に突入していた。1972年創刊、いつの間にか“老舗”と呼ばれるようになった洋画誌「ロードショー」の進路に、巨大な氷山が現れていたのだ。
◆表紙リスト◆
1月号/エマ・ワトソン 2月号/ブラッド・ピット 3月号/ジョニー・デップ 4月号/ウィリアム・モーズリー、ジョージー・ヘンリー、アンナ・ポップルウェル、スキャンダー・ケインズ(『ナルニア国物語』)※全員初登場 5月号/ジョニー・デップ 6月号/ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ 7月号/オーランド・ブルーム 8月号/ジョニー・デップ 9月号/アンジェリーナ・ジョリー、ブラッド・ピット、シャイロ・ジョリー=ピット(本記事に掲載なし)※シャイロのみ初登場 10月号/ジョニー・デップ 11月号/ジョニー・デップ 12月号/ジョニー・デップ
表紙クレジット ©ロードショー2006年/集英社
ロードショー COVER TALK

編集長が暴露! ジョニー・デップの表紙が続いたのは部数低迷のせい? フィービー・ケイツ人気は日本だけ? 「ロードショー」でいちばん売れた号は?
ロードショー COVER TALK #最終回

【ついに休刊!】のべ142人が飾ってきた「ロードショー」の表紙。最終号は意外にも…? そして国内外の大スターたちから別れを惜しむ声が届く
ロードショーCOVER TALK #2009

【休刊まであと1号】生き残りをかけて、邦画とゴシップ中心に方向転換した「ロードショー」。しかし回復できないまま、2008年最後の号を迎える。その表紙を飾ったのは、意外にも…?
ロードショーCOVER TALK #2008

【休刊まであと2年】日本俳優初の単独表紙を飾ったのは、木村拓哉。邦画の隆盛とハリウッド映画の失速、新スターの不在など厳しい条件下で、「ロードショー」は“洋画雑誌”の看板を下ろす決意を!?
ロードショーCOVER TALK #2007

女性の表紙は1年間で1回のみ! 女優主導だった「ロードショー」の歴史が完全にひっくり返ったのは、ハリウッドの体質の変容を反映していたから!?
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世界のジョニー・デップはもともと、知る人ぞ知る個性派俳優だった!? 彼をスターダムに引き揚げた大物プロデューサーの秘策とは
ロードショーCOVER TALK #2004

『ハリポタ』人気にオーランド・ブルームの登場で盛り上がる洋画界。だが、日本映画の製作体制の劇的変化が、80年代から続いてきた“洋高邦低”を脅かし始める…
ロードショーCOVER TALK #2003
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