#2 すべての肩書がとれたピエール瀧が大切にする表現者としてのマナーはこちら

夜8時から翌日の昼まで歩くことも

――10年ぶりの第2弾ですが、前作に引き続き大ボリュームの1冊で。2年をかけて23区をまわった記録で、1本1本のテキストも充実していて、ある意味、タイパや効率重視の時代に逆行した作りになっていますよね。

失礼な(笑)。全部、クオリティ高いですよ。

ピエール瀧が東京23区の夜を「ムダ上等」で徘徊して見つけたもの「全部のものに平等に時間が流れていることは、残酷でもあるし、美しくもある」_1
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――(笑)。いえいえ、内容がすごく濃くて面白くて。瀧さんもあとがきでおっしゃっていますが、何もないところにどう価値を見出すのかとか、「ムダを楽しむ」ことの価値を大切にした書籍だと思います。夜の散歩を扱うことや、書籍というスタイルでこのコンテンツを届ける理由から教えていただけますか?

第1弾が出たのは10年前ですけど、編集の松本さんから「本を出しませんか」という話をいただいて、夜中の散歩ものをやりましょうということでスタートしたので、この企画自体、そもそも書籍がゴールだったんですよね。

今回はこの23区、2周目ですけど、夜の8時、9時ぐらいから、下手すると朝4時ぐらいまで歩く時や、昼ぐらいまでやっていることもあって(笑)。ほぼ無目的で歩き始めて、「あ、あの建物なんだろう」とか「公園があるから横切ってみよう」って歩いていくんですけど、けっこう、黙ってる時間や、何の展開もない時間ってあるんですよね。風景もほぼ「無」みたいな時もあったりして。

そういう無言やただ移動してるだけのムダな時間があるからこそ、「あれ何?」っていうものを見つけられたりするので。書籍はそういうところをうまく構成して見せられるし、状況がわかる写真も載せられるので、そういう点でも書籍という形態は合っているんですよね。