こんにちは。集英社オンライン統括編集長の志沢です。
昨年6月に準備室が発足し、怒涛の10カ月ののち、本日めでたく創刊を迎えました。
ウェブメディアですが、あえてローンチではなく「創刊」という表現を使っています。
書籍、雑誌、漫画……出版社が送り出す総合メディアですもの、ここはやはり「創刊」なのです。
自分が働く会社の製品をすべて知り尽くしていますか? お試ししていますか?
集英社オンライン統括編集長の、お仕事メイン、ときどき日常な、ブログともいえない雑文集。
せっかち編集長のEMANON DAYS #1
例えば食品メーカーに勤めていたら全製品を食べているの?
さて、私がこの創刊にあたって、準備期間にもっとも力を注いだことはいったい何だったでしょう?
デジタルの勉強? 作家さんや書き手探し? SNSの研究?
いや、そういうことにも老体にムチ打ってもちろん頑張りましたが、何よりも気合を入れて臨んだのは、「集英社の作品」を、知ること、読むこと、見ること、でした。
「なんだよ、お前、集英社の社員だったら当たり前だろ」なんて言わないでください。
弊社からは毎月100あまりの本や雑誌、コミックスが発売され、多くのウェブメディアやアプリが日々更新され、いろんな作品がドラマになったりアニメになったり映画になったり……365日24時間使っても追いきれない……と言ったら、ヘタレですか?
超大手食品メーカーにお勤めの友人に聞いてみました。
「ねえ、自社の製品って全部食べてる? 試食してる?」
「当たり前じゃないですかー。嫌いなものでも食べてますよ」
大手不動産にお勤めの友人に聞いてみました。
「あなたのところで扱ってる物件、全部下見とかしてるの?」
「基本しますね。遠いところのでも大規模物件とかは出張して内覧しますね。そうじゃないとお客様に説得力のある説明、できないし」
外資系金融にお勤めの友人に聞いてみました。
「あのー、自社で扱ってるファンドとかって全部買ってるの?」
「んなわけないでしょ!(笑)」
ですよねー。
けれど、この集英社オンラインの合言葉は「オール集英社エンタメ」。
彼を知り己を知れば百戦殆からず、と彼の国の偉人は言ったものですが、新メディアの創刊を前に、「己(の会社)を知ることはものすごく大事なのでは!」と思ったしだいです。

雑誌だけでも毎月これだけの数が
自宅タイムと週末をすべて集英社作品に捧げた日々
……で、白状します。ワタクシ、『鬼滅の刃』未読でした。アニメも映画も未視聴でした。
あれだけの社会現象となり、知り合った人に集英社に勤めているといえば「ああ、鬼滅の!」と言われ、「ねえ、集英社に勤めてるんだったら、鬼滅の新刊、早く手に入れられないの?」――できません。
「ねえ、鬼滅であなたの推しって誰? 私はもちろん天元さまよ♪」ーーもはや読んでいることが大前提のこの質問。
結構な漫画好きで、少年青年漫画も愛する自分は『ONE PIECE』やら『呪術廻戦』やら『エロスの種子』やら普通に追っかけていたのに、どうしてか手を付けそびれていた『鬼滅』……もはや、社員失格か。
で、読みました、観ました。
『鬼滅の刃』だけじゃありません。およそ集英社の話題になっている作品やメディア化されたものはもちろん、過去の名作やら子ども向け作品やら、年が明けてからの3か月、帰宅してから寝るまで、週末の空き時間、読みまくって観まくって、私の脳内は集英社コンテンツでパンパンに満たされていったのです。
『鬼滅の刃』『ハニーレモンソーダ』『アシガール』『約束のネバーランド』『怪獣8号』『チェンソーマン』『ダンダダン』『初めて恋をした日に読む話』『うちの弟どもがすみません』……漫画だけじゃなくってよ。
『桜のような僕の恋人』『塞王の楯』『後宮史華伝』『キミと、いつか。』……直木賞作品からオレンジ文庫もみらい文庫もなんて傑作ぞろいなんだ!

こちらは新書と文庫の新刊たち。逸品ぞろいでございます
閉所恐怖症でなかなか映画館にいけないのですが、空いたころを見計らって『劇場版 呪術廻戦 0』の上映にも足を運びました。
すごい、本当にすごい、今のアニメーション。これがウワサのMAPPAのすごさなのね…自分が見ていた過去のアニメは紙芝居だったのではないか、というほどのすさまじいクォリティ。戦闘シーンでは真剣にめまいがしたものです。
雑誌も改めてめくりまくりました。
本音をいえば実は若いころから雑誌を読むのはあまり好きじゃない。女性誌編集部に20年以上も在籍していながら、なんてこったい、な案件なんですが、トホホな事実です。だから、マキアの編集長だったときにいちばんつらかった仕事は、ライバル誌の「美的」「VoCE」を毎月読むことでした。ナイショですが。
でも久しぶりに見る男性誌・女性誌はやっぱりとても手のかかった質の高いメディアで、改めてすごいなー、大変だろうなー、とページをめくりめくり、手が止まりません。
そうだ、うちにはグッズもあったな、とジャンプキャラクターズショップを覗き(買い物し)、ECサイトもあるんだよな、とミラベラとハピプラストアを覗き(買い物し)、ちょっと大人のコンテンツも見なくちゃね、とグラジャパを覗き(買い物はしなかった)、うらやましいものをお持ちだわ、とひっそりとサイトを閉じました。
改めて編集者でいる幸せを噛み締める今
こうして、自社製品(作品)にまみれまくったこの数カ月……本当に心の底からハッピーでした。
こんなにも読む人見る人に幸せを与えるものたちと関わえる仕事をしているなんて、己はなんて幸せ者なんだ!
もちろん、まだまだ集英社が抱える作品群のほんの一部にしか触れられていないことでしょう。
でも、だが、しかし、「オール集英社エンタメ」を掲げるサイトを運営していくにあたって、この幸せな時間は間違いなくパワーになりました。
集英社オンラインでは、オリジナル記事だけでなく、こうしたお宝たちも手を変え品を変え、いろんな形でお届けしていきます。改めてどうぞご贔屓に!
そしてブログタイトルの「EMANON DAYS」についてはまた日を改めて。
これからどうぞよろしくお願いいたします。

2022・3・31
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