「こんなに腰くねくねするんだ」…腹を括れず臨んだ撮影で泣いていたグラビアアイドル時代。プロレスラーの覚悟を見せられて人生が変わった白川未奈が語るプロレスの魅力とは
“闘魂Hカップグラドル”こと、白川未奈。会社員からグラビアアイドルを経てプロレスラーになった。多彩な経験をしてきた彼女だからこそ、闘いを通して伝えられるものがある。インタビュー最終章では、プロレスに限らず“売れっ子”に共通すること、幼少期から意識してきた“死”について語る――。(全3回の3回目)
腹を括れていなかったグラビアアイドル時代

――最近になって、心境の変化はありましたか?
とくに変わってないですね。自分がいくつか忘れてますね。数えてないです。それよりも大事なことがあるというか、そんなことを考えてるよりも必死だし、やりたいことがどんどん出てくるから、考えたことないかも。
何歳までにこれをやらなきゃとかとくになくて、いまやりたいことを叶えにいってるだけですね。
――グラドル時代、グラビア撮影で泣いたことがあるそうですが、なぜ?
DVDの撮影のときとかは、「こんなに腰くねくねするんだ……」みたいな(笑)。それまで普通に大学行って、会社員をやってとかだったから、人前で水着になるということが単純に恥ずかしかった。
腹を括れてなかったんでしょうね。それがわたしがグラビアアイドルで売れなかった理由だと思うんですけど。売れてる子は腹を括ってると思います、どのジャンルでも。
――どのジャンルでも、ですか。
はい、それがフワちゃんだなとすごく思ってて。彼女はいろいろバッシングを受けて、負けてしまったけど、あれだけいい試合をした。レスラー目線で見ると、受け身とか見ちゃうんですよ。あれはやっぱり練習しないと取れない受け身だし、打たれ強かったし、すごく長い練習期間とかじゃなかったのに。
それであれだけできるというのは、覚悟が人と違う。一流のタレントとしての覚悟。チャレンジした姿を見せなきゃいけない、この企画を成功させなきゃいけないという覚悟があるから、あの試合ができたんだなと思います。
――才能とかセンスよりも、覚悟でしょうか?
才能とかもあると思うんですけど、でも覚悟だと思います。だってあの受け身の取り方をしたら、もしかしたら首が折れるかもしれないくらい、結構ハードにやってたから。でもその受け身を取りにいったっていうのは、覚悟かなぁと思う。
「ずーっとギリギリの下を這いつくばって来た」

――グラドル時代、プロレスを見て悩んでる場合じゃないと思ったんですよね?
やっぱりそれも、プロレスラーの覚悟をリングで見たから、「わたしも腹を括らなきゃ」と後押しされた感じでした。それがプロレスラーの強さなんだなと思いましたね。
――覚悟がなきゃ、闘えないですよね。
どのジャンルもそうだと思いますね。会社を設立するにしても、それがコケたときに、どう立て直すかとか。それでも自分はこれに賭けるという覚悟がないと、会社は作れない。全部、覚悟と自信かなぁと思いますね。
――プロレスラーになって、一番つらかった時期はいつ頃ですか?
今日ちょうど『週プロ』の表紙になれたじゃないですか。スターダムに一番最初に登場したとき、なつぽいは見開きの2ページだったんですけど、わたしは10cm×10cmのコマ写真だったんですよ。しかも、なつぽいはXで、わたしはZ。そのとき、XとZの違いに気づかなかったんですけど、後々になって「注目されている人がXなんだよ」って言われて。
わたしは最初、全然期待されていなかったので、スターダムではずーっとギリギリの下を這いつくばって来た感はありますね。
――わたしは2021年3月3日からスターダムを観始めて、最初に取材させていただいたのが白川選手なのですが、白川選手はずっとトップの内の一人というイメージなんですよ。
えええ!? 全然ですよ。シングルのベルトだって、フューチャー(・オブ・スターダム王座)は巻いたけど、1週間くらいしか保持できてないし、他はシングルのベルトを取れてないわけだし、戦績もよくないし。
――人気がものすごいじゃないですか。海外からも。
えーーー、でもわたし……人気あるのかなぁ? たむぽい(中野たむ&なつぽい)の横にいて、二人はすごく人気があるから、その近くにいるから自分が人気があるとは思えないんですよね。プロレスの技とかスタミナに関しては、自信を持ってリングに上がれるくらい練習している自信はあるから、なにも不安はないんですよ。
だけど人気とかになると、やっぱりね……ちょっと胃が痛くなる。スターダム総選挙の順位もめちゃくちゃ気になってたし、やっぱり上には上がいるし。強さも大事だけど、やっぱりプロレスは人気が大事だから、そこはいつも悔しいと思いながら試行錯誤したりしますね。
プロレスには、自分の人生に重ねられる選手が絶対いる

――唐突なんですが、白川選手の座右の銘を聞いてみたくて。
「いまを生きる」です。いまを無駄にしない、1秒たりとも。「明日やればいいや」はあり得ない。体を休めなきゃいけない日もあるけど、繰り越してよかったことって人生でなかったから。ずっとそれで生きてこられたわけじゃなくて、後悔したりとかたくさんありました。
でも、そこそこ長いこと生きているから、やっぱりいまこの1秒を全力必死に生きることが大事なんじゃないかなぁと思う。
――そこに気づけるって、すごいと思います。
人に対してもそうです。愛情を伝えるとかもそうだし、「じゃあね」って言って、次また会える保証ないじゃないですか。わたしは結構、そういうことを考えちゃう。死ぬことをめちゃくちゃ考える。全部、それに繋がってるかも。死を意識して生きてますね。
――死を意識し始めたのは、いつ頃?
小さいときからです。死んだらどうなるんだろうとか、どうせ死んじゃうからやりたいことやりたいとか、小さいときからすごく思ってたんですよ。ポジティブに死を意識しますね。
――この記事はプロレスを観たことがない方にも広まってほしいなと思うのですが、そういう方にプロレスの面白さを伝えるとするなら?
それが一番難しいですよね。音とかじゃないですもんね。
――ああ! でもわたしは何周もして、「音」って言ってます(笑)。
結局、音で「うわあ!」となったりしますもんね。プロレスは選手の成長がすごくわかりやすい。たぶんみんな常に未完成で、引退するまでどんどん成長していく。そこが他のプロスポーツとは違うのかもしれない。同じ技を使っていると、どんどんフォームもよくなるし、その技の派生形を作り出したりするし。後退することがないイメージはあるかな。
――女子プロレスの魅力として、「感情が見えやすい」と言われますよね。
それは男子もかなぁ? プロレスはやっぱり、感情。いろんなタイプのレスラーがいるから、トップを走り続ける人の苦悩も見えるし、月山みたいに勝てない人の苦悩も見えるし、わたしみたいに途中で怪我をして落ちる人もいるし。自分の人生に重ねられるキャラクターが絶対いる気がしますね。それがわかりやすい。
プロレスの一番素敵な楽しみ方

――トップの人の苦悩もありますよね!
絶対あると思います。デビューしてからずっと目立って、プッシュされ続けた人にはその人なりの苦悩がある。いまだったら、天咲(光由)とか。
自分の人生を重ねられるレスラーが必ずいると思う。そのレスラーと出会って、そのレスラーを応援して、そのレスラーが夢を掴んだときに一緒に喜ぶのが、一番素敵なプロレスの楽しみ方なのかな。
――それでは、Twitterで募集した質問の中から。「声出しが解禁になったら、なんて呼ばれたいですか?」
前は「白川」だったんですけど、いまは「ちゃんみな」か「みな」なんですよね。でも、「ちゃんみな」って言いづらいですよね? ちゃーんみな、ちゃーんみな(笑)。「みな」が一番言いやすいのかな。
――「目指すプロレスラー像、女性像を教えてください」
「この人みたいになりたい」はないんだよな。白いベルトはほしいけど、それを巻いて「たむのようなチャンピオンになりたい」とかはなくて。絶対違う感じになると思うから。常にお客さんをワクワクさせられる、サプライズができるレスラーになりたいです。
あとは女性に憧れられる女性になりたいなあ。髪を切ったのも、「より強く見られたい」というのはあるかもしれない。強い女性に憧れるようになりました。
――「リングコールを始めたのはなぜですか?」
女子ではやってる人がいないから。あとはClub Venusって、他のトライアングルダービーのチームと雰囲気がたぶん見ているだけで違うと思うんですよね。だからその世界観をリングに上がった瞬間から作りたくて、じゃあもうリングコールからやっちゃおうみたいな。
――上手ですよね! 練習はしてるんですか?
あんまりしてないですけど、昔からPRIDEとかK-1とか観ていたので。イメージはPRIDEですかね。ドスが効いた感じ(笑)。
やってないことをやっていきたいんです。自分でリングコールするって、あんまりないじゃないですか。「え?それやるの?」っていうことを、これからもどんどんやっていこうかなって思ってます。
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取材・文/尾崎ムギ子 撮影/井上たろう