究極の修行「千日回峰行」とは…

約1000日間山中を歩き、9日間飲まず、食わず、眠らない修行を成就した僧侶の言葉「できないことは、できないでよろしいのです」_1
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――千日回峰行とはどんな修行なのでしょうか? 

光永圓道大行満大阿闍梨(だいぎょうまんだいあじゃり)(以下、略):インターネットなどでは、7年間かけて地球1周に匹敵する約4万キロを歩く荒行と紹介されているそうですね。

――わずか15歳で仏門に入った圓道阿闍梨が、千日回峰行に挑んだのは20代の後半に差しかかってからでした。

28歳から34歳にかけて、行じさせていただきました。

――日本仏教に、こんな途方もない「苦行」があったとは存じ上げませんでした。1年目から3年目までは、約30キロに及ぶ比叡山の山上山下を100日間続けて歩く。4年目と5年目は、200日連続。その後、命をかけた堂入り(後述)を経て、京都市街の神社仏閣、延暦寺別院の赤山禅院まで足を延ばす行程になると、毎日約80キロを、それも草鞋で歩くとは……ちょっと想像を絶します。しかも、歩くのは夜。

真夜中ですね。私の場合、1年目から3年目までは夜中の2時、いわゆる丑三つ時にお寺を出発し、比叡山中に点在する250か所ほどの霊場を巡拝して、朝の8時前後に戻ってくる毎日でした。

――雨の日も、雪が降っても?

はい。

――そもそも、どうして夜に歩くのですか。

千日回峰行は「仕事」ではなく、自ら発心しておこなう行です。私には、お寺の住職として欠かせない日々のおつとめがありますから、仏さまにお経を上げることや境内の掃除をないがしろにして、回峰行だけを行ずるわけにはいきません。ですから回峰行を行ずるのは、日中のおつとめを終えた後です。そうなると、必然的に夜になってしまいます。