――岸田政権の支持率が低迷しています。おふたりは今後の岸田政権をどう見ていますか?
高橋 岸田さんは参院選後の「黄金の3年」を確実なものにしようと、まずは人事で頭がいっぱいだった。内閣改造人事を優先し、安倍国葬を後回しにし、その内閣改造で安倍外しを狙って統一教会問題を言い出したが、結局、人事優先の決断が全部、ブーメランになって返ってきたという感じだね。
その意味ではこの低支持率は身から出たサビ。経済対策を打ち出しても“検討する”ばかりでその中身は財務省のいいなり。支持率が上向く気配もない。このままの低空飛行で来年4月の統一地方選に突入して敗北するようなことになれば、仮にもったとしても、その後の5月に行われる広島サミットで勇退、退陣というシナリオもありえるのでは。
「岸田政権は広島サミットまでもたない」電力不足を名目にした「原発解散」も【高橋洋一×古賀茂明】
内閣支持率はついに30%台まで低下。自民党内からは「岸田ではもはや限界」との声も大きくなる中、近く岸田首相が状況を打開すべく勝負手に出るとも……。元財務官僚で第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍した嘉悦大学教授の高橋洋一氏と、元経産官僚で政治・経済アナリストの古賀茂明氏が今後を読む。
「岸田では来春の統一地方選は戦えない」

「岸田総理は内閣改造で安倍外しを狙って統一教会問題を言い出したが、ブーメランになって返ってきた」と高橋氏
古賀 高橋さんとは安倍政治への評価は真反対だけど、岸田政権に対する評価はほぼ同じみたい(笑)。僕も岸田政権は危険水域にとっくに突入していると見ている。
注目すべきは自民党内から「岸田さんじゃ、ダメ」という声が日に日に大きくなっているということ。野党に勢いがなく、政権交代の心配がないということもあって、「岸田が倒れるならそれでかまわない。次の自民党政権を作ればいいだけのこと」と考える議員が増えている。岸田さんの総理総裁としてのグリップ力は明らかに落ちている。
高橋さんは来年5月のサミット後の勇退もありうると言ったけど、ぼくはこのまま鳴かず飛ばずが続けば、サミット前の退陣もあると考えている。たとえば、来年の通常国会で予算が早めに成立すれば、日程的にはかなり厳しいけど、その直後に、岸田さんでは春の統一地方選を戦えないから、別の看板に掛け替えようという動きが起きないとは言えないと思う。
――ただ、退陣要求を岸田さんが黙って受け入れますか?
高橋 このまま何もしないと、河野太郎消費者担当相や茂木敏充自民幹事長といった有力な候補はもちろん、予想もしないような政治家の名前がポスト岸田として彗星のようにヒュッと浮上しかねない。なにしろ、政界の一寸先は闇だから。だから岸田さんが年内や来年の通常国会でサプライズ解散を仕掛ける可能性はゼロではない。
古賀 僕も同じ見立てをしている。その場合、カギになるのは岸田さんが解散の理由として、どんな大義名分を掲げるかということでしょう。
高橋 何も名分がなければ、メディアに「追い込まれ解散」と書かれるだけだから、それを避けるためにも何か適当な理由づけはするだろうね。
サプライズ解散の名目は「原発」
古賀 僕は岸田さんが「原発解散」を仕掛けてもおかしくないと考えています。というのも今年8月に岸田首相は原発の新増設の方針を打ち出したでしょ? この新増設は国民の反対が根強くて、あの安倍さんでも容易に口にできなかった政策なんですよ。それを岸田さんはぶち上げた。
ただ、新増設は再稼働と違ってハードルが高い。すぐに選挙のテーマにするのは危険です。
そこで、岸田政権は「この冬は電力不足になる」と盛んに危機感を煽る作戦に出ています。電力不足をアピールすることで、今ある原発は動かしてもいいでしょうと原発再稼働を正当化する計算です。
この電力不足アピールをさらにエスカレートさせ、「真冬に電力不足で停電になれば、凍死者が出てもおかしくない。そうならないよう、規制委が止めている原発を政治判断で再稼働できる法律を成立させたい。これは一刻を争う問題だ! それなのに野党が大反対しているから、その可否について国民に直接判断を仰ぎたい」と、解散総選挙を仕掛けるというシナリオはありうる。
具体的には東電柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、国民に信を問うというシナリオ。冬の電力不足を理由とするのが最も早いタイミングだけど、夏の電力不足を理由にして、サミット後に解散というタイミングもあり得る。

「安倍元首相でも容易にできなかった原発の新増設を打ち出した岸田首相なら、原発解散もありえる」と古賀氏
高橋 岸田首相のそばには元経産次官で東電の内情に詳しい嶋田隆筆頭秘書官がいるね。
古賀 そう。嶋田さんは3・11後に東電が一時国有化された時、経産省から執行役員として出向し、東電経営を3年間支えた。次官退任後は東電会長に就任すると目されるなど、東電の分身みたいな官僚だったんです。
その嶋田さんが岸田さんに請われて今、8人いる秘書官の筆頭格に収まっている。電力危機を訴え、東電・柏崎刈羽原発を政治判断で再稼働できる法律作りを進めるなんて、嶋田さんがいればそれほど難しいことじゃない。そのスキームを利用して、追い込まれた岸田首相が「原発解散」に打って出るというわけです。
――円安による物価高など、国民は日々の暮らしで大変なのに、そんな時に解散・総選挙ですか?
高橋 別に選挙をしたって、解散するのは議会だけで、政府はそのまま続いている。むしろ、政治家が選挙にかまけて干渉がない分、事務的に行政はスムーズに回るんだよ。そのことは岸田さんが一番よくわかっているはず。検討するばかりで決断しない“検討使”が、大勝負に出るのかどうか注目したい。
撮影/村上庄吾 AFLO
安倍さんと語った世界と日本
高橋洋一

2022/9/1
990円(税込)
新書 : 262ページ
978-4898318713
「ハッキリ言う、安倍さんが日本を救ったのだ! 」(髙橋洋一)
・今も続く的外れな「アベノミクス批判」
・アベガーよ、「安保法制反対! 」をウクライナで叫んでみろ!
・「悪い円安論」は無知の極み
・日本は今も全くインフレを心配する必要はない
・岸田総理よ、いま緊縮財政をしてはいけない!
・ウクライナで世界と日本の経済はこうなる
・ロシアの金融破綻の確率は・・・100%だ!
・実は日米同盟は世界基準だと「弱い同盟」である
・日本の戦争確率を確実に減らす方法を教えよう
・「平和ボケ」はお花畑からでて来なさい!
・財務省は防衛省の植民地化を狙っている
・NATO加盟を安倍さんは考えていたはずだ
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