問題発覚後も過大算定が「温存」の疑い

震災の教訓はどこへ……ずさんな避難計画で原発再稼働が推進されている実態_1
茨城県の東海村にある「東海第2原発」
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2020年12月17日、茨城県に新たな情報公開請求をした。2018年再調査で茨城県から避難元(30キロ圏内)の14市町村に送られた「変更済み」の面積データだ。

牛久市、坂東市、桜川市のケースのように、非居住スペース分を除外するため総面積の6~8割を便宜的に居住スペースとしてはじき出したのであれば、厳密ではないにせよ、非居住スペースを除いて収容人数を算定するという再調査の趣旨に沿う変更と言える。

ところが2021年1月31日に初報を掲載した後、避難所不足が判明している8市町以外から、「うちは今も過大算定のままです」と取材に答える市町村が相次いだ。2018年再調査で是正しきれておらず、過大算定が現在も「温存」されている疑いが浮上してきた。

「温存」には2つのパターンがあるようだった。

1つは、市町村が体育館の総面積を県に回答していたにもかかわらず、牛久市や坂東市のように居住スペースを便宜的に算定する変更がなされず、「生回答」がそのまま避難元の市町村に送られたパターンだ。

つくばみらい市や結城市、美浦村がこのパターンだった。3市村はいずれも、再調査後の茨城県のヒアリングに対して「非居住スペースを除外している」と回答していた。県原対課(茨城県原子力安全対策課)がこれをうのみにして、過大算定を見落とした可能性が高い。

もう1つは県原対課の「作為」が疑われるパターンだった。

つくば、古河の両市は2015年、福島県からの照会を受け、2013年調査時より計約2万4000人分少ない収容人数を、茨城県を通じて福島県に提出していた。ところが茨城県が2018年再調査の結果をまとめた一覧表では、計約2万4000人分が再び増えて、ほぼ2013年調査時の収容人数に戻っていた。いわゆる「先祖返り」を起こしていた。

情報公開請求によって福島県から入手した資料では、つくば市と古河市が2015年に提出した避難所の居住スペースは総面積の7割で算定されていた。繰り返しになるが、2018年の再調査は居住スペースに基づき収容人数を算定し直すのが目的のはずだ。それなのに茨城県原対課は2013年の過大算定のデータを引っ張り出し、それに書き換えた可能性がある。

つくば市議会の議事録に、茨城県の作為をうかがわせる答弁を見つけた。

2019年3月4日の市議会一般質問で、受け入れ可能な人数を試算しているのかを問われ、市長公室長は「原発避難の収容人数の計算方法は、県内の統一した基準のもとの算出となります。それによると、共有スペースなどは考慮せず、1人あたり2平方メートルとされていますので、つくば市は約3万人という数字になります」と答えている。

「共有スペース」とは、トイレや玄関、倉庫などの非居住スペースを指しているのだろう。それを「考慮しない」ということは、非居住スペースを含めて収容人数を算定している。つまり過大算定しているということになる。

原対課の担当者が過大算定と知りつつ、数字を書き換えたとすれば重大な問題だ。つまり避難計画が「絵に描いた餅」と分かっていながら、策定していることになる。この作為を裏付けるには、変更済みのデータを入手する必要があった。