著者の言葉

戦争前夜のことは、はっきりと覚えている。
子どもたちが寝入ったので、夫とわたしはようやく2人でゆっくりと語り合っていた。夫はハンバーガーを作りお茶をいれてくれた。

遅い夕食をとりながら、わたしたちは未来について話した。新しく買ったマンションをどんなふうにリフォームしようかとか、楽しく習い事に通っている子どもたちのことなど、ささやかな日々のことを。

わたしたちにはたくさんの計画と夢があった。そうしてわたしたちは、おなかも心も満たされた状態で眠りについた。

そして明け方5時、わたしは爆音で目が覚めた。
最初は花火の音かと思ったのだが、実際は四方から爆撃を受けていた。何が起きているのかもはっきりとは分からないまま、わたしは無我夢中でパスポートと荷物をまとめた。

わたしがこの日記を書くのは「戦争反対!」と叫ぶためである。戦争に勝者はいない。
そこにあるのは血、破壊、そしてわたしたちひとりひとりの心の中に出来た大きな穴だけだ。
わたしは遠い道のりを歩き、その道中でどこまでも善良でわたしに手を差し伸べようとしてくれる人たちばかりに出会った。わたしは民族で人を分けない。
人を定義するのは、民族ではなく行動だからだ。
多くのロシア人が戦争に反対しているということも知っている。今は、はっきりと分かる。戦争と人間が別物であるということが。戦争は人間など気にしない。
戦争はわたしを思い切り揺さぶった。
今わたしは国籍や民族を問わず、わたしを助けてくれる人たちと共にいる。
彼らには「力」がある。
戦争は終わり、そういう力を持った人たちは生き残っていくだろう。

2022年4月
オリガ・グレベンニク