「ゆとり教育」がダメだった?

2000年以降、PISAでフィンランドが世界一になるたび、各国の教育関係者がその秘密を探ろうとフィンランドに押し寄せてきた。日本からの注目度も高かった。頻繁にテレビや雑誌で特集が組まれたが、日本とは真逆の教育環境に、多くの人が「なぜそれで世界一になれるのか?」と疑問に感じたことだろう。

少人数での授業、教師の質の高さ、経済的・社会的な格差が少ない社会、現場に裁量権があることなど、様々な理由を説明しても、日本からは「ゆとり教育」に見えてしまうフィンランドの教育は理解されないことも多かった。

フィンランドが「学力世界一」から陥落しても詰め込み教育をしない理由_01
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そうして、日本での十分な理解がされないまま、2012年のPISAでは、 日本が「読解力」と「科学的リテラシー」でOECD加盟国中1位に輝き、逆にフィンランドはそれぞれ3位と2位という結果になった。また、「数学的リテラシー」は日本が2位だったのに対し、フィンランドは6位と激しい落ち込みを見せ、海外では衝撃をもって受け止められた。

それではこの結果はフィンランド国内でどう見られていたのか。当時の教育科学大臣クリスタ・キウルは記者発表の中で「フィンランドの義務教育が大きな対策を必要としていることを示唆しています」とコメントを発表し、こう続けた。

「これまでの研究から今回の結果は予想されていました。というのも子どもたち、そして社会の学校に対する意識が、以前より肯定的ではなくなってきたためです。平等を強化することはもちろん、学習への意欲を向上、維持させ、学校の環境をより居心地の良いものにしなければなりません」

実はこの調査では、学力の測定だけでなく、学校への帰属意識や満足度も調べられている。

学校生活が幸せだと回答した生徒の割合はOECD平均79.8%、日本85.4%であるのに対し、フィンランドは66.9%と7割に達していない。調査国の中で5番目に低い数字となっていた。