世界は「旧統一教会問題」をどう報じているのか

山上容疑者は“インセル”? 日本と海外の「旧統一教会問題」の報じられ方の根本的な違い_1
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安倍元首相の暗殺事件を端に、ふたたび旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と日本社会や保守政治とのただならぬ関係が浮き彫りになった。これを世界はどう見たのか。安倍後の日本政治や、東アジア関係への国際政治的な関心より、「日本政治と宗教」に多くの報道が集中したことは、今般の海外報道の特徴といえるだろう。
 
最初に彼我の差が顕著な点は、メディア報道自体だ。当初、日本の主要メディアは安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者の私怨の対象を「特定の団体」と報じた。強い怨恨をかかえる人物が、取り調べの際に「特定の団体」などという役人用語を口にすることは考えにくく、警察やメディアの「配慮」が当初から疑われた。

一方、海外のメディアにはそうした「配慮」はない。米国の有力紙ワシントン・ポストは暗殺事件3日後の7月12日付電子版で、「警察はまだその宗教組織の名前を明らかにしていない」としながらも、ヘッドラインで”How Abe and Japan became vital to Moon’s Unification Church”(いかにして安倍と日本が文鮮明の統一教会にとって必要不可欠となったのか)と、「統一教会」という固有名詞をはっきりと伝えている。

英国の高級紙フィナンシャル・タイムズにいたっては、「(オウム真理教事件)以来、公共の場で宗教という言葉を使うことさえタブーとなった」として、宗教上の固有名詞を隠蔽する日本の報道の異様さを伝えている。(8月3日付電子版)
 
ワシントン・ポストの記事を執筆したのはピューリッツァー賞2度受賞のマーク・フィッシャー氏で、日本の主要メディアが完全無視する情報もきちんと入れている。たとえば、奈良の旧統一教会施設の玄関に銃痕が認められたと、FNN(フジテレビ系)が伝えていることまでチェックしている。

日本メディアの多くが固有名詞の使用を避けるなか、当初はフジ系列が他社に先んじてこの問題を報じていたことが海外記事でわかるのは皮肉としか言いようがない。