日本のインフレ率はどこまで上がる?

――日本でも食料品などが一斉に値上がりし始め、インフレに対して警戒感が広がっていますが、この動きは続くのでしょうか?

6月の日本のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)は、前年同月より2.2%上昇しました。3カ月連続の2%超えです。

日本のインフレの趨勢がどうなるのかはまだ読めませんが、オーストラリアの例が気になります。日本同様、CPIが2.5%で推移していたオーストラリアは余裕しゃくしゃくの体だったのですが、最近、一気に5%台に上昇して慌てているようです。

日本の場合、企業のPMI(Purchasing Managers’ Index=購買担当者景気指数)は前年対比で10%増です。企業が原材料の値上がり分のコスト吸収するのは、もはや限界なのです。企業は永遠にコストの回収はできないでしょう。

しかもこんなに円安が続く状況では、輸入品に対してコストの上乗せを始めざるを得ません。したがって、日本のインフレも近いうちにオーストラリア同様5%に上がっても致し方ないと思います。

――日本の一部大企業では社員給与を3~5%上げる動きがあるようですが、実際はどうなのでしょうか?

ここで給与を上げるとさらに企業側は苦しくなります。企業側が給与を上げるならば、さらに製品・サービス価格を上昇させねばなりません。私が前から主張しているのは、国が公務員の給与を上げないと、企業側は追随しづらいということです。

国が公務員の給与を10%上げたら、それがベースになって民間企業側も合わせてきます。国が民間企業に賃上げを促しても、それは民間企業側の自由でしょう。日本は共産主義国家ではないのですから。

――ウクライナ戦争に関してお聞きします。『エブリシング・バブルの崩壊』のなかで、ロシアのウクライナへの野心や侵攻を予測されていました。戦争は長引いていますが、今後はどんな展開が待っているのでしょうか?

明らかなのは、ロシアが初期の作戦に失敗したということでしょう。キーウを取ってロシア寄りの政権に交代させて、実質上の属国にするという野望は、ご破算になりました。

いまは東部ドンバス地方からクリミアを陸でつなげて、できれば西部のオデッサまで取って、ウクライナを黒海から完全に遮断するという、当初よりかなり小さな目標に変わったと思います。

このところロシアの侵攻はほとんど止まっています。一方、ウクライナに関しても、反撃しているところもあるけれど、さほど大きな戦果は挙げていません。いったんロシア軍に取られて防衛ラインをつくられた場所を取り返すためには、戦略的な武器が必要です。ですから、ウクライナも難しい局面に入っています。

ひょっとするとロシアは長期戦に持ち込む考えに傾斜しているかもしれません。消耗戦に持ち込んで冬場まで長引かせた場合、天然ガスを含めてエネルギー調達に不安のある欧州がウクライナ支援を弱める可能性があるからです。