現在は崩壊の初動段階

――『エブリシング・バブルの崩壊』が出版されて3か月以上経ちますが、6月までの米国株の株価下落は、予測されていたとおり米国の利上げに沿うものでした。今後はどんな展開になるでしょうか? もし徐々にバブル経済の崩壊が続くとしたら、現在はどの段階でしょうか?

正直なところ、現在の状況は、まだ崩壊の初動段階にすぎません。結論から申し上げれば、米国としてはインフレを抑制するためには、景気を〝クラッシュ〟させるしかないのです。

なぜなら、金融政策や財政政策では、サプライ(需要)そのものをコントロールすることはできないからです。たとえば原油供給量。中国のゼロコロナ政策、ウクライナ戦争の最中、バイデン政権がいくら頑張っても原油供給量は増やせません。

こうした状況下、インフレ対策として米国にできることは、需要を“殺す(引き締める)”しかないわけです。結局、需要と供給のバランスが悪化しているからインフレが起きているのです。たくさんのマネーが少ないモノを追いかけるから当然でしょう。

よって、インフレを抑えるには供給を増やすか、金利を上げて需要を減らすしかない。しかし供給を増やすことは難しいのです。徐々に回復しているとはいえ、コロナ禍によって世界的に分断された供給網の回復は、簡単にはできません。ウクライナ戦争によって、原油や小麦などのコモディティ(原油や小麦などの商品)価格も上昇しました。

私は、米国が取ることのできる方法は、需要を減らすしかないと考えています。英語で言うならば「Demand Destruction(需要の崩壊)」です。

ご存じのとおり、米国のインフレの勢いはすさまじく、2022年6月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比の伸び率9.1%でした。この上昇率は第2次石油ショック後の1981年12月以来、40年6ヵ月ぶりの高水準となりました。

米国の場合、CPIが9.1%で天井を打った可能性があるのですが、ピークアウトしてもそれがすぐに2%台、3%台に下がるということではありません。

厄介なのは、たとえば5%、6%ものインフレが長期にわたって続くということです。これほどの物価上昇が続けば、多くの人の生活に多大な影響がでます。従ってFRB(連邦準備制度理事会)は完全にインフレ抑制にフォーカスを定めています。