――これまで多くの子どもたちの読書感想文を指導されてきた篠原さんですが、彼らが読書感想文に苦しむ理由はどこにあると思われますか?
一人一人にそれぞれ理由はありますが、「本選び」と「親の存在」、この二つが大きいですね。
まず本選びの点からですが、読書が苦手な子は、「ラクをしよう」と思うあまり、自分の学年より下を対象にした本や、物語ではない図鑑などを選びがちです。異世界ファンタジーなどの壮大な物語やSF作品なども、選んでから苦労するパターンが多いです。
これらに共通するのは「本人との共通点を見出しにくい」ということ。本の登場人物と今の自分を比較したときに、何が共通していて何が異なるのか、そういった視点を持てる本を選ぶことをすすめています。
――自分と照らし合わせてどうかが大事なのですね。
それがないと、ただただあらすじを追うだけの文章になってしまうケースが多く、感想文にはならなくなってしまいます。逆に、異世界ファンタジーでも自分との共通点を挙げられればそれでもよいでしょう。
読書感想文を書く本は、好きか嫌いだけではなく、自分と比べてどうかという視点で読めるものを選ぶことが重要です。
「本選び」と「親の干渉」が落とし穴。読書感想文がみるみるうまくなる話題のメソッド
夏休みの宿題、最大の難関といえば読書感想文だろう。そんな読書感想文が3時間で書き切れると評判の教室がある。講師はなんと現役脚本家。今年も夏休みが始まったばかりにも関わらず、予約が取れないと話題だ。これまで1500人以上の子を見てきた篠原明夫氏に、読書感想文がスラスラ書けるようになるコツをお聞きした。
読書感想文はなぜ書けない?

親がやりがちなNG行動とは
――読書感想文が書けないもう一つの原因に「親の存在」を挙げていますね。
これもとても大きいですね。もっとも多くの家庭で行われているのが、親が真横について子どもが文章を書くのをずっと見ていること。親がまるで先生のようになってしまって、子どもが書いているものにいろんな注文をつけてしまうんですね。
自分で一生懸命書いても、てにをはが違うとか、「私は〜」から始めなさいとか、横からずっと文句をつけられるような環境で書いていると、だんだん自分で文章を書くのが嫌になってしまうというパターンが多いです。
――親からすると、「正しい文章を書かせなくては」という思いが先立ってしまいますよね。
そうですね。しかしその結果、その読書感想文は「親が書いた大人の文章」になってしまいます。文章としてはまとまっていてきれいかもしれませんが、子どもの成長を見取ることができません。
それに、学校の先生も大人が考えた文章はすぐに気づきます(笑)。先生は子どもがどんな本を読んでどう感じたのかが知りたいのに、それが全く見えない文章になっているのはもったいないですよね。
あと、母親と父親で干渉の仕方にそれぞれ異なる傾向があるんですよ。
――男親と女親とで違うのですか?
あくまで傾向ですが、母親はきれいにまとまった文章にさせたいあまり「感動する場面はここでしょう」「だからこんなふうに感じたんでしょう」と、“この本の感想のあるべき姿”みたいなものを作り上げて押し付けてしまう傾向があります。国語の文章問題みたいになってしまうんですね。
でも、読書感想文は本人が感動した部分を示すことができればいいのです。大事なのは「なぜ自分はそこに感動したのか」を表現すること。
一方、父親は自分の考えを押し付けてしまう傾向があります。
友情がテーマの本であれば「友情ってもんはな……」と、持論を展開してしまう傾向があります。私も自宅で自分の子どもに教えるとなぜかそうなってしまうのですが(笑)。
――母親は「感想文としての正解」を、父親は「テーマについての持論」を押し付けてしまう傾向があるのですね。
そうですね。私の読書感想文講座では、これらの環境をなくすために、感想文の作成中は一緒に来た親御さんには離れて待機していただくようお願いしています。そうすると、子どもたちはのびのびと書いていますよ。

親が取るべきGOOD対応5選(『脚本家が教える読書感想文教室』より)
3時間で読書感想文を書けるようになる方法
――篠原さんが実際に指導する際には、どんなことをしているのでしょうか。
私が指導しているのは、主に次の二つです。
・原稿用紙を文章の要素ごとにフレーム分けすること
・悩んでいる子どもにインタビューをすること
文章を書くのが苦手な子は、真っ白な原稿用紙を渡されても何をどのくらい書けばよいのかわからない。ですから、原稿用紙上に「ここにはこれを、これくらい書こう」とフレームを作っています。「このことについてこれだけ書けばいいんだ」というゴールが見えるだけでも、子どものモチベーションは上がります。

フレームワークをすることでスラスラ書けるように(『脚本家が教える読書感想文教室』より)
それでも内容によっては手が止まることもあります。そんな時は私から「これを読んでどう思ったの?」「それはどうして?」とインタビューをするんです。
聞き出してあげると子どもは自分から思いや感想を話します。たくさん話させてあげたところで「じゃあ、それを書いてみたら?」と言えば、子どもはどんどん書けるものです。
――「てにをは」など、文法の指導はされないのですか?
私はほぼしません。ご家庭で書いていて、子どもの文章でどうしても気になるところがある場合は、一度音読させてみてください。声に出して読めば、本人がおかしい箇所に気付きます。
逆に声に出して読んでも本人がおかしいと思わないところは、現時点ではそのままにしておいてあげましょう。今焦らずとも、これから国語の授業やたくさんの本に出会う中で自然と気づくはずです。
――講座を通して、篠原さんが子どもの文章に手を加えるということはないのですね。
私が何か書き加えたり修正したりすることはありません。それでも、上記のやり方でほとんどの子どもは3時間で書き終えますよ。
ほかにも細かい技法はありますが、詳細は講座にお越しいただくか、『脚本家が教える読書感想文教室』を手に取っていただければと思います。

篠原明夫さんの著書『脚本家が教える読書感想文教室』(主婦の友社)
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