戦争で、すべてを失った

――今回は大変な状況下、インタビューをお受けいただきありがとうございます。まず、自己紹介をお願いします。

マリーナさん(以下、マリーナ)こんにちは。マリーナ・ヤクボフスカです。私は2人の息子と一緒に、ウクライナ、キーウ地方のイルピンからイギリスにやって来ました。私の主人と両親、祖母は、いまもウクライナにいます。

すべてのウクライナ人にとって、戦争が始まった2月24日は、受け入れ難い日でした。

前日までは、私は仕事をし、子どもたちは学校へ行き、普通の生活を送っていたのです。しかしあの日、私たちは生活も、住む場所も、すべてを失ったのです。家屋や学校などイルピンの70%が破壊されてしまいました。たくさんの人が殺害され……これについて話すのはとても辛いです。

「職もお金も支援策もない」急増するウクライナ難民たちの今_a
14歳のナザール、10歳のダミアン、ふたりの息子とウクライナから避難してきたマリーナさん

――今の心境は?

マリーナ 以前の生活のことや、ウクライナやポーランド、ドイツなどにいる友人のことを考えています。彼らにまた会えるかも分かりません。ウクライナに残る主人とは毎日、話をしますし、友人や母からも連絡があり、少しは元気になります。しかし、これは私の人生ではないし、ここは私の祖国でもありません。

――ご主人とはどんなやりとりを?

マリーナ 近況報告をしています。主人はウクライナ西部に避難したけれど、またイルピンの近くに戻ってきました。イルピンと周辺の町、村はまだ危険だと判断されています。多くの爆弾や焼夷弾(しょういだん)が、通りや家の中に残っています。

ロシア軍は嬉しくないサプライズを残していきました。家に戻れない人もいます。まず最初に従軍技術者が家の安全をチェックしなければならないのです。

一方で、キーウからの給水設備が整えられたりと、少しずつ復旧もしてきています。従軍技術者が町の地雷を除去し、ロシア兵の占領後、人々が公園や通りの清掃を手伝っています。

町と家族、友人が恋しいです。でも、イギリスの新しい友人と家族、そして子どもたちが安心して過ごせる新しい家があることに感謝しています。

――お子さんたちは、この戦争についてどのように感じているのでしょうか。

マリーナ ロシア軍は、大人だけではなく子どもも殺害しています。それを子どもたちは知っているけれど、実際に目にすることなく、逃げてくることができました。しかし子どもたちは家を失い、家族は離れ離れになりました。友達とは連絡は取れるけれど、会えません。