佐藤ママが灘中合格の息子たちに「るるぶ」を読ませていたのがきっかけ

きっかけは、息子3人が東大理3に合格した「佐藤ママ」の愛称で知られる佐藤亮子が『「灘→東大理III」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』(KADOKAWA、2014年)などで、中学受験の前に子どもたちには「るるぶ」を通じて各都道府県の行事や歴史、地理を学習させていた、とたびたび語っていたことが中学受験界隈で広く知られるようになったことにある。
これを受けてまずJTBパブリッシングが、「るるぶ」らしいポップなレイアウトやフォントを活かした小学生向けの地理学習本『るるぶ 地図でよくわかる都道府県大百科』を2018年に刊行する。
これが好評を博したので、同社はシリーズ化し、2019年に『るるぶ地図でよくわかる世界の国大百科』、2020年に『マンガとクイズで楽しく学ぶ!47都道府県』『マンガとクイズで楽しく学ぶ!世界の国』『地図でよくわかる47都道府県の歴史大百科』と続々刊行する。
こうした「るるぶ」の成功を受けて、他社もエンタメ地理本を追随してどんどん刊行していく。
たとえば2019年には永岡書店から『マンガでわかる!10才までに覚えたい47都道府県』が刊行された。もっとも、これは同社が2016年に刊行した『マンガでわかる! 10才までに覚えたい言葉1000』以来の人気シリーズのひとつとして出版されたものでもある。しかも、るるぶが2020年以降刊行している『マンガとクイズで楽しく学ぶ!』という分厚いマンガ地理本シリーズは、この『10才までに覚えたい』シリーズから逆に影響を受けていると思われるパッケージなのがややこしい(児童書・学習参考書では人気シリーズ同士が相互にトレンドを採り入れ合うのは珍しいことではないが)。

コロナ禍以降の旅行ガイド不振による各社の方向転換とも合致

2021年以降、こうしたエンタメ地理学習本はさらに増え、多様化していく。
たとえば「まっぷる」が『まっぷるキッズ 地図でバッチリわかる47都道府県おもしろ図鑑』『まっぷるキッズ 地図でバッチリわかる世界の国ぐにおもしろ図鑑』を刊行。これはコロナ禍になってからの出版物だ。

さらに「地球の歩き方」がコロナ禍に入って世界の様々な情報を国別ではなく切り口別にまとめた「旅の図鑑」シリーズを、『地球の歩き方 世界244の国と地域 2021~2022』を皮切りに刊行するようになったのは2020年9月からだったが、「まっぷる」のエンタメ地理学習本も、旅行ガイド各社がコロナ禍以降の旅行需要減を受けて従来型の旅行ガイドではない本を出すようになった潮流と重なっている。ちなみにエンタメ地理学習本の元祖「るるぶ」も、2021年には宇宙開発や宇宙旅行をテーマにした『るるぶ宇宙』、2022年には『るるぶKids こどもの知的好奇心がすくすく育つ学びスポット 東京周辺』などを刊行している。