71年続いた味に終止符

東京・笹塚の老舗ラーメン店「福寿」が閉店したらしいという噂を耳にしたのは2022年の5月のことだった。昔から笹塚に住んでいる友人が教えてくれたが、はっきりした事実はわからなかった。

「外食は福寿しかなかった」電気グルーヴ・石野卓球が惜しむ老舗ラーメン店の閉店_a
建物は古いが店内は店主の小林さんがいつも綺麗に掃除していた

「福寿」は1951年創業。2代目店主である小林克也さんが一人で切り盛りし、蕎麦のつゆを思わせる甘みのあるスープに黄色くて細いちぢれ麺。味の染みたチャーシュー。中身に餡を入れない軽い食感のワンタン、スープを飲み干した後にどんぶりの底に現れる「日本一」の文字など、ここにしかない唯一無二のあれこれで多くの人に愛されてきた。

小林さんは「歳? 28歳だよ」と言い張るが、一方で「いつ死ぬかわからない。今日でおしまいかもね。まあ暖簾が出てれば生きてるからまた来てよ」なんて言ってもいたから、言われてみればいつお店を閉めたっておかしくない気がした。

「外食は福寿しかなかった」電気グルーヴ・石野卓球が惜しむ老舗ラーメン店の閉店_b
「福寿」2代目店主の小林克也さん

私は以前「福寿」を取材させていただいたことがあり、その縁で店主の小林克也さんとLINEアカウントを交換していて、ごくたまにやり取りをしていた。閉店の噂に動揺し、LINEで直接たずねてみたところ、どうやら噂は本当だったらしいことがわかった。

その後、電気グルーヴの石野卓球さんが「福寿」の閉店を惜しむツイートをしているのを見た。

笹塚 福寿が閉店。
あそこのラーメンを初めて食べたのは18才の頃
最後に食べたのは閉店のうわさをききつけて瀧といっしょに行った今年の2月。そのときもいつもの小林節で店をたたむ話は雲に巻かれたな
生涯で一番食べたラーメンだった。
小林さん、長年にわたりごちそうさまでした&
お疲れ様でした。

そんな卓球さんに「福寿」についてもう少しくわしくお話を伺うことができた。