『愛と欲望の三国志』著者が厳選！ マンガ、ゲーム…三国志と再会できる令和のコンテンツ5選

集英社オンラインの読者の皆さま、はじめまして！　ニッポン放送の箱崎みどりと申します。
私は、ラジオ局のアナウンサーとして、プロ野球中継『ショウアップナイター』などの番組を担当しつつ、頭の隅っこでは、ずっと三国志について考えています。

三国志とは、元々は、古代中国において3つの国が並び立った三国時代を描く歴史書の名前です。現在では、歴史書をベースに生まれた歴史小説『三国志演義』、さらには、派生した関連コンテンツを広く指すようになっています。
三国志は、なぜか、日本でずっと愛されてきました。江戸時代から令和に至るまで、いつの時代を見ても、ちょこちょこと三国志コンテンツが顔を覗かせてきたんです。（詳しくは、拙著『愛と欲望の三国志』（講談社現代新書）で！）

そうは言っても、ほとんどの方は、ゲーム、漫画、児童書で三国志に熱中はするものの、幼少期から青年期にかけてのお付き合いで、いつしか自然に別れてしまった……といった形になっているのではないでしょうか。
でも、それではあまりにもったいない！　これからご紹介する、今年ならではの三国志コンテンツで、久し振りに、懐かしい旧友と再会してみませんか？ 

今ならではの三国志といえば、絶対に外せないのが、漫画『パリピ孔明』！　今年の4月からTVアニメも放送され、人気に拍車がかかっています。
この作品は、昨今エンタメ界を席巻しジャンルとして定着した感もある「異世界転生」に、「三国志」と「パリピ」を掛け合わせたもの。現代の渋谷に転生した諸葛孔明が、天才軍師だった孔明らしい知恵と謀略、そして真っ直ぐな信念で、駆け出し歌姫・EIKOの軍師となって、歌による天下泰平をめざす物語です（孔明なので大真面目！）。
三国志を知らなくても、解説役のキャラクターがいるので心配は要りません。そして、三国志を知っていると、散りばめられた小ネタや大きな仕掛けを何重にも楽しめます！
『パリピ孔明』と再会すれば、懐かしい記憶が刺激され、あなたの中に眠っていた三国志の扉も開いて、踊りだしたくなること請け合いです！ 

パリピ孔明【マンガ&TVアニメ公式】ツイッター
https://twitter.com/paripikoumei_pr

＜こんなアナタにおすすめ！＞
●アニメや漫画で孔明の活躍を楽しみたい！ 

渋谷つながりで、次に会っていただきたいのは、「川本喜八郎人形ギャラリー」の孔明です。

1980年代にNHKで放送された「人形劇 三国志」。川本喜八郎氏が作る、生きているかのような陰影のある表情を持つ人形たちと、豪華俳優陣が繰り広げた大河ドラマは、子どもたちの心を鷲掴みにしました。
当時の雑誌記事では、「“赤壁の戦い”をみて、ずいぶん大がかりなセットだとびっくりしました。すごい迫力で、もーのめりこんでみましたよ！」という投書も紹介されています^※1 。
かくいう私も、三国志との出会いは、「人形劇 三国志」です。

この「人形劇 三国志」で、実際に使われた人形たちは、現在、長野県飯田市にある「飯田市川本喜八郎人形美術館」で見ることができます。
渋谷の「川本喜八郎人形ギャラリー」で会えるのは、川本氏が出身地である渋谷区のために特別に作った、三国志の英雄たち。

渋谷駅直結「渋谷ヒカリエ」の8階に上がり、再開発が続く駅周辺の喧騒から暫し離れて、時を経ても変わらぬ清冽なたたずまいの人形たちと向き合う静かな時間。大人の再会にふさわしい空間が、渋谷の摩天楼の中で、あなたが来るのを待っています。

川本喜八郎人形ギャラリー | 渋谷区公式サイト
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/bunka/kihachiro_gallery/index.html

※1…「番組フラッシュ 新しい人形ドラマ『三国志』」（『放送教育』1983年9月号、36～39ページ）

＜こんなアナタにおすすめ！＞
●伝説の作品を間近で楽しみたい！

「三国志かぁ、昔好きだったよー！」と仰る方は、だいたい二通りで、横山光輝氏の漫画『三国志』に夢中になったか、シブサワ・コウ氏が産み出した光栄の歴史シミュレーションゲーム『三國志』シリーズに夢中になったかのどちらかです。
PCゲームとして始まった光栄『三國志』シリーズの思い出を語る男性の口からは「友達の家で夜通し遊んだ」「ゲームがある友人の家に入り浸った」との昔話が熱く語られます。ソロプレイはもちろん、みんなでワイワイ遊べるゲームでもあったんですね。
そんな、みんなで一緒に三国志の世界で遊ぶ楽しさを手軽に味わえるのが、『三國志 覇道』（コーエーテクモゲームス）です。35年以上も続いている『三國志』シリーズが、スマホで遊べる時代が来ました！

プレイヤーは1人1人が乱世を生きる君主となり、他のプレイヤーと仲間になって軍団を結成、協力して他の軍団と戦い、主要都市の占拠を目指します。
何を隠そう、私がものすごくハマっているゲームです。

内政や、武将を組み合わせる編制の楽しみもありつつ、リアルタイムで他のプレイヤーと遊べるので、攻める／守る／躱す／陽動する、など、三国志らしい戦略を、対人で楽しむことができます。仲間と楽しめるのが、「三國志 覇道」の大きな魅力です！
ゲーム内でチャットをしていると、三国志を知らない方も結構いらっしゃる様子。ゲームがきっかけで、三国志に興味を持つ方が出てくるのは、今も昔も変わらないようです。

スマートフォン用MMOシミュレーションゲーム「三國志 覇道」
https://www.gamecity.ne.jp/sangokushi_hadou/

＜こんなアナタにおすすめ！＞
●三国志をゲームで手軽に楽しみたい！

2020年の年末に公開された映画『新解釈・三國志』。私はとても気に入りました！　福田雄一監督の作品が肌に合う方には、必ず観ていただきたい映画です。

豪華キャストが集うこの作品は、タイトルに偽りのない「新解釈」のオンパレード！　大泉洋さん演じる主人公劉備の造形は言わずもがな、黄巾の人、趙雲、貂蝉、孔明、そして赤壁の戦いの真実など、慣れ親しんだはずの三国志が、見たことのない新しい世界に！
かと言って、新解釈すべてがトンデモやギャグではなく、史実かとすら思わせる、奇妙な納得感があります。
主題歌は、福山雅治『革命』。格好良いこの曲が醸し出す説得力も作品の一部です。

映画全体としては、劉備を中心に、三国志の話の流れと前半の主要な見せ場を押さえながら、長い物語をコンパクトにまとめてあるので、三国志に初めて触れる方にもおすすめしたい作品です。

映画『新解釈・三國志』公式サイト
https://shinkaishaku-sangokushi.com

＜こんなアナタにおすすめ！＞
●映画で笑いながら三国志を楽しみたい！

『パリピ孔明』の異世界転生と同様、こちらも流行りの「長いタイトルで内容を表す系漫画」であり、父と娘の「コミックエッセイ」的な側面もある、中村ゆきひろ先生の三国志入門漫画。
タイトルに入っている「ミリしら」と言うのは、「1ミリも知らない」の略語です。知らないことを逆手に取って、画像などだけから想像する遊びもネット上で流行っている、こちらも今らしいワードですね。 

ほのぼのとした絵柄とムスメさんの可愛らしい語り口が、ご近所のお家のお茶の間を覗いているかのような、微笑ましい気持ちにさせてくれます。
私が三国志を家族や友人に勧めると、大体は、「三国志は難しい」「登場人物が多すぎ」「覚えられない」「名前が読めない」「区別がつかない」などの言葉が返ってくるのですが、ムスメさんは違います！　「ナントカさん」「いろいろあって」など、ややこしいところは飛ばす！　省く！　そう、それで良いんです！！　小さい頃は、私も袁紹すら分からないで読んでいました！　娯楽小説である『三国志演義』の根源に立ち返り、「面白いところだけ分かって楽しめればオーケー！！」と高らかに宣言する父娘。
三国志を敬遠してきた方、再会に不安がある方に、ぴったりの漫画です。

中村ゆきひろ『三国志ミリ知らの父にムスメがうろおぼえで教える三国志』 - ジャンプルーキー！
https://rookie.shonenjump.com/series/pGBIkZkOPFg

＜こんなアナタにおすすめ！＞
●ほのぼの三国志を学び直したい！


以上、5選。まさに今、再会しやすいものを選んだつもりです。
時を経て、多少姿を変えた旧友（三国志）に面喰らっても、少し話せば、昔の面影が重なって、一方で新しい姿も見慣れてきて、きっと、昔以上に仲良くなれることでしょう。

文／箱崎みどり